突然だが、『横浜の仏像』展の図録を愛読されている方は多いと思う。私は特に、山本勉先生のコラム「證菩提寺の仏像物語」(p66-68)が好きで、時々読み返す。この3ページの中で特に好きなのが、證菩提寺の収蔵庫の阿弥陀三尊に関する部分。
あの平安末期の美しい阿弥陀様は、もともと岡崎義実が源頼朝の父、義朝の菩提を弔うため、鎌倉亀谷の義朝の旧宅に御堂を建てて祀ったものではないか、というくだりである。安元元年(1175)頃の作とされ、優美な中にも新時代の息吹が伺える見事な尊像だという。
そんなおり、2/27放送の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を観ていたら、岡崎義実がその御堂の話をするシーンが出てきたので、一気に胸が高鳴った。正確には、こんなセリフだった。「わしは義朝様のお館があった亀谷に御堂を建てて、ずっと義朝様の御霊を祀ってきた」
これを聞いた瞬間、證菩提寺の阿弥陀三尊が思い出されて、頭から離れなくなってしまった。大河ドラマでは毎回最後に、ドラマにゆかりの場所が紹介されるコーナーがある。ひょっとしたら證菩提寺の阿弥陀様が紹介されるかも…と、期待して待っていたのだが、結果は…。亀谷の地に現在建つ寿福寺が紹介されただけで終わってしまった…。證菩提寺の「しょ」の字も、阿弥陀様の「あ」の字も、(ましてやキリークさえも)出てこなかった!
證菩提寺阿弥陀三尊はまだ一般的ではないということなのだろうか。みんなで『横浜の仏像』展図録を愛読しよう!
(2022年3月4日)
※阿弥陀如来坐像の写真は『横浜の仏像』展図録より