「ハッケン!上田の仏像」展
上田市立美術館(長野県上田市)
2025/1/11-3/9


長野県上田市で仏像の特別展が始まった。実にマニアック。平成28年から実施された上田市による仏像悉皆調査の成果を盛り込んだ、仏像愛好家垂涎の展覧会である!
飛鳥時代後期の菩薩立像/長福寺(上田市)
会場入ってすぐの小さなスペースに、飛鳥時代後期の菩薩立像(長福寺)がおられる。長野県屈指の古像へのリスペクトを感じる。飛鳥周辺で制作され、天武・持統天皇の時代の仏教拡大の政策のもと、7世紀後半に北信濃にもたらされたのではないか、と展示解説にあった。ある本によると、この金銅仏とよく似たお像が愛知県西尾市の修法寺におられるそうだ。このような仏像が日本各地に運ばれ、仏のみ教えを広める役割を担われたのだろうか。
聖観音菩薩立像/清水寺(長野市松代)

そして、次の一室には、平安時代の仏像が並ぶ。なんとその真ん中に、清水寺(長野市松代)の観音菩薩立像が! 平安前期のお像は強力な印象のものも少なくないが、このお像は特にパンチがある。それなのに、お寺でお会いしたときよりも、ものすごく繊細で、艶っぽくも感じられたから、不思議だ。展覧会場の照明がお寺のそれよりも繊細なためだろう。お寺では見ることができない、お背中も間近で拝見。ぞくぞくした。これは必見!
普賢菩薩立像/大法寺(青木村)
大法寺(長野県青木村)の普賢菩薩立像。眼をはっきりと彫り出さないところが私はとても気になる。閉じたような、不思議な両目。照明の違いのためか、お寺より細かい点もよく見える。それなのに、いや、そのせいか、私はまたしても、この不思議な両目に惹きつけられたのだった。
私の大法寺拝観記録(2018年)はこちら(↓)。同じ仏師による思われる十一面観音立像は本展にはお出ましではない
【信濃仏】大法寺(青木村)~瞳を閉じた十一面観音さまは何を感じ取ろうとされているのだろう~ - ぶつぞうな日々 part III
十一面観音菩薩立像/実相院(上田市真田町)

そして、前からお会いしたかった、実相院(上田市真田町)の十一面観音菩薩立像!! 四阿山が白山信仰の霊山とされ、この十一面観音さまは山家神社とその別当である白山寺に本地仏としてまつられていた。明治初めの神仏分離の際に、白山寺が廃寺となり、実相院に遷座されたという。お身体全体や衣文は平安後期の穏やかさがあるが、お顔の表情は厳しい。本地仏の観音さまは厳しめのことが多いように思うのだが、なぜだろう。そして、その言葉にできない何かに惹きつけられるのはなぜだろう。白山の本地仏は十一面観音坐像が多いように思うが、立像である点も気になる。こんなに魅力的でありがたい観音さまに、ありえないくらいの近さでお会いできる。ずっと見つめていたい観音さまだった。
大日如来坐像/前山寺(上田市前山)

実相院の十一面観音さまのあと、呼吸を整え直す暇もなく、鎌倉時代の仏像の展示が始まる。
鎌倉仏の最初に現れるのが、前山寺(上田市前山)の金剛界の大日如来坐像。これがもうびっくり。一眼で鎌倉仏とわかるのだが、それにしては、頬が丸く張り出して、童顔のようで、かわいらしい! 一瞬にして魅了される! こんなことがあってよいのか!? よくない!
さらに、驚くのが、松山寺本堂のご本尊でありながら、昨年11月、上田市の文化財に指定されたばかりだという。なんてことだ! 長年にわたる信仰の対象について、令和になってやっと、その文化的歴史的価値が認められたことになる。展覧会のタイトル「ハッケン!」にはこのお像のことが含まれるのだろう。こんなことがあってよいのか!? よくない!! 非常によろしくなくて、素晴らしすぎる!! 仏像調査に敬意を評したいし、私もその内容を学びたくなるではないか!! (展覧会図録がまだできていないそうで、予約したので、早く読みたい!)
前山寺の今年はじめのインスタグラムには、「間もなく開基700年を迎える前山寺のほんの一時をお預かりする山主も苦渋の決断、厳重な移動を迎えるその瞬間も不安と心配でいっぱい」と吐露されていた。ご出展を決断されたお寺様に心からの感謝を申し上げたい。本当にありがとうございます! たくさん「!」を連発してしまった私をお許しください。
他にも、わぁわぁと心の中で叫びながら拝観したお像がおられた。京都広隆寺の秘仏薬師如来さまを想起させる神畑薬師堂の薬師如来立像や、そばで拝見するとぬめっとしていかにも生身信仰の芳泉寺の阿弥陀如来立像など。できれば会期中に再訪したい…
展覧会公式サイト
www.santomyuze.com