ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【山梨】甲州放光寺に法隆寺金堂壁画の最古の模写(染色作家古屋絵菜の展示も素敵)

 山梨県甲州市塩山の放光寺は、言わずと知れた仏像の宝庫である。平安時代大日如来、天弓愛染明王不動明王、そして、仁王像。しかし、放光寺にはまだ私の知らない寺宝があった。法隆寺金堂壁画を模写した阿弥陀浄土図である。この仏画が2020年8月22日から30日の一週間、放光寺で特別公開されると聞きつけ、お参りしてきた。

1) 放光寺「阿弥陀浄土図」

法隆寺金堂壁画模写。祐参(ゆうさん)筆。嘉永5年(1852)。甲州市指定有形文化財(歴史資料)
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 浄土宗初代管長・知恩院75世、養鸕徹定(うがいてつじょう)が、嘉永5年(1852)に法隆寺を訪れ、法隆寺妙音院の僧千純の協力を得て、侍者の祐参に模写させたもの。礼拝用として三幅に仕上げた。飛鳥時代の色彩を考慮しつつ、補作した部分もある。
 塩山出身の幕臣・真下晩菘(ましもばんすう)が放光寺羅漢堂の再建を発願した際、養鸕徹定が感動のあまり、羅漢堂本尊として晩菘に寄贈したのだという。浄土図の裏にその旨の墨書が残る。
 明治17年(1884)頃に桜井香雲が法隆寺壁画を模写した際にはほぼ見えなくなっていた化生菩薩ら(阿弥陀如来の下の部分)が、放光寺所有の模写でははっきりと描かれる。
 養鸕徹定の関わった模写の存在自体は前から知られていたが、それが実際にどこにあるのかは長年不明だった。法隆寺が行方を探しているという話が放光寺の前住職の耳に届き、改めて寺宝の阿弥陀浄土図を確かめてみると、徹定ゆかりの模写であることが確認できたのだそうだ。判明したのは昭和の終わり頃だという。
 この阿弥陀浄土図は、現存する最古の模写として、今年の春、「法隆寺金堂壁画と百済観音」展(東京国立博物館)に出展されるはずだった。しかし、コロナのため展覧会は開催されないまま中止となってしまった。放光寺で今年8月に、染色作家・古屋絵菜の個展を行うに際し、放光寺での公開に踏み切ったのだそうだ。
 私は公開最終日に訪れた。次々と訪れる参拝者を前に、住職が直接、上記の内容の解説をしてくださった。法隆寺壁画の最古の模写が甲州に残ることを甲州の誇りとして、地域の皆様に知っていただきたいとのことだった。

2) 染色作家・古屋絵菜の個展「古今蓮葉

 放光寺の仏像群と今回公開の阿弥陀三尊をお目当てに出かけたのだが、古谷絵菜さんの展示がとてもよかった。
 ろうけつ染めの蓮の花がお寺の空間にとても合う。特別公開された阿弥陀浄土図とも、とても相性がよい! 古刹と現代作家の作品との対峙と融合。その美しさに心が癒され、身体の細胞が喜ぶような感じがした。
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3) 放光寺は仏像の宝庫

 冒頭でも述べたが、放光寺は仏像の宝庫だ。
 まず山門の仁王さんが愛嬌抜群で、風を浴びて力む姿がたまらない。なんと、奈良仏師の成朝の作とされ、国の重要文化財に指定されている。
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 さらに、収蔵庫に入ってびっくり。ご本尊大日如来坐像、天弓愛染明王、そして、不動明王立像。すべて平安後期の作で、重要文化財。弓と矢を構えた天弓愛染明王は、高野山金剛峰寺と京都木津川の神童寺の3駆のみが重文。
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 そして、安田義定をモデルにしたとされる毘沙門天立像(甲州市指定文化財)。今年、奈良国立博物館の「毘沙門天」展に出展されて話題になった。後補の彩色があるものの、こちらも成朝が手掛けた可能性があるのだとか。
 私は特に、大日如来のかわいらしく優しいお姿が好き!! 茶目っ気ある仁王さんも大好き!! 吽形像のはなぺちゃのお顔が癖になりそう!!! 大変重要な点なので、最後に付け加えておく。

拝観案内

高橋山放光寺
〒404-0054 山梨県甲州市塩山藤木2438
TEL 0553-32-3340
拝観料300円/抹茶かコーヒー付き拝観は900円
拝観時間 9-17時
上記3)の仏像が予約なしで拝観可能。阿弥陀浄土図は次の公開の機会を待ちたい。

参考資料

a) 『法隆寺金堂壁画と百済観音』展図録(東京国立博物館、2020年)
b) 放光寺ホームページ 真言宗智山派高橋山放光寺。初詣、縁結びは山梨県甲州市塩山の放光寺まで。
c) 山梨県文化財ホームページ 山梨県/山梨の文化財ガイド(データベース)彫刻02
※掲載写真のうち、大日如来様の写真のみお寺のパンフより。それ以外はすべて筆者撮影。
※放光寺を初めてお参りしたときの興奮はこちらより。
山梨県甲州市、放光寺を参拝&仏像搬出作業に萌え!: ぶつぞうな日々 PARTII