ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

ぶつぞうな日々Part II (バックナンバー)はこちらです!

仏像のブログを書き始めたのは、2005年の年末でした。最初の投稿はこんな感じ。

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10年以上が過ぎてもこの気持ちに変わりありません。ますます仏像に魅了されています。

上記のブログは「ココログ」で書いていたのですが、投稿に無駄な手間暇がかかるのが悩みでした。

これからこちらの「はてなブログ」でお世話になろうと思います。

過去の記録は以下からご覧ください。

hiyodori-art2.cocolog-nifty.com




ブログを書いている「はらぺこヒヨドリ」さんのプロフィールは

はらぺこヒヨドリ をご覧ください。


素人の雑文ですが、これからも仏像への愛を叫んでいければと思っています。平凡な中にも山あり谷ありの人生ですが、仏像が好きなおかげでとても救われています。

仏像好きなみなさん、一緒に「仏像大好き~♪」と叫びましょう。仏像とそれを守られてきた皆様に感謝を伝えたいのです。

どうぞよろしくお願いいたします。

【山梨県】仁勝寺(甲府市)~こどもらしさを感じる聖徳太子孝養像~

仁勝寺(山梨県甲府市
2022/11/25-26 特別公開

木造聖徳太子立像
鎌倉時代後期 桧寄木造 像高114.5cm 重文

仁勝寺の聖徳太子像(写真はNHK山梨ニュースより)


 甲斐源氏の祖・新羅三郎義光が京都からもたらしたと伝わる聖徳太子像。武田家が代々守り伝え、躑躅ヶ崎館にまつられていた。天正10年(1582)、織田・徳川軍の侵攻により戦線維持が不可能となった武田勝頼が、岩殿城に退避しようとした際、家臣中沢氏に託し、仁勝寺本尊として大切にまつられてきた。
 父親の闘病平癒を願う聖徳太子16歳のお姿で、孝養像と呼ばれるもの。太子像は厳しい眼差しで理知的な印象のもが多いが、この像は眼差しが穏やか。美豆良が初々しく、ふっくらした頬などから子どもらしささえ感じてしまう。病の父親を案じるお心が伝わってくるようだ。衣には随所に切金で鳳凰が描かれ、高貴なお姿を引き立てている。
 市職員さんのお話によると、京都仏光寺聖徳太子像に似ているだそう。気になって調べてみると、確かに似ていた。円光院など、京風の仏像が残るのも甲府の仏像の魅力のひとつだと思う。
 聖徳太子は甲斐の黒駒に乗って富士山に降り立ったと伝わり、甲斐の国の人にとって大切な存在なのだろう。2年ほど前から聖徳太子御遠忌1400年の展覧会やご開帳に接してきたが、古来より日本各地で太子様が信仰されてきたことを改めて実感した次第である。

【東京】勝國寺(世田谷区)秘仏薬師如来立像と日光菩薩立像~室町時代、吉良氏ゆかりの尊像~

青龍山勝國寺(東京都世田谷区/真言宗豊山派
薬師如来及び両脇侍立像


勝國寺薬師三尊

勝國寺薬師堂にまつられる秘仏薬師三尊を拝観。

勝國寺は室町から桃山時代に世田谷を治めた吉良氏による創建とみられ、中尊薬師如来立像と脇侍日光菩薩立像の制作時期は、1530年に世田谷城が落城した後、吉良頼康による勝國寺中興時(天文末から弘治)を想定する説がある。区の文化財サイトには、頼康に小田原北条氏から嫁いだ室の念持仏だったとある。

薬師如来像(像高53.2cm)頭部が大きく、なで肩で、ずんぐりした体躯が印象的。写真で拝見する以上に優れた造形だと感じた。まるっぽいフォルムでありながら、ご尊顔の表情は複雑。瞳が輝いていて、薬師様の意思のようなものが感じられた。構造的には、体部前面や頭部を正中矧ぎ。体部前面材の下部に、階段状の内刳りがあるが、独特の手法なのだとか。

薬師如来立像は2000年に世田谷区文化財に指定。2005年の解体修理時に、日光菩薩立像(像高28.4cm)も薬師と同時期・同一仏師の作と判断され、2006年に区指定文化財に追加。天正20 年(1592)に修理されたことを示す納入文書あり。現存する月光菩薩は現代の補作で、文化財指定から外れている。

ご開帳は1月の初薬師!

毎年1月12日の初薬師の法要の後、短時間だけご開帳となる。12日が日曜でない場合には、それ以降の最も早い日曜日に行う。法要は13時に始まり、法要の途中で厨子の扉が開かれる。扉がゆっくりと開いて、三尊のシルエットが見えた。開扉の瞬間は感動する。1時間ほどの法要の後、各自順番に堂内にあげていただき、間近で拝観できる。開扉は終日ではない。今後お参りされるなら、時間を確認することをお勧めする。

【参考文献】

・鈴木泉「世田谷・勝國寺木造薬師三尊像再考」(東京家政大学博物館紀要第20集、p137-147、2015)
https://tokyo-kasei.repo.nii.ac.jp/record/10373/files/2015_h_0010.pdf(←PDFです)
・世田谷区の文化財サイト「勝國寺の木造薬師如来及び脇侍日光菩薩立像」
勝國寺の木造薬師如来及び脇侍日光菩薩立像(しょうこくじのもくぞうやくしにょらいおよびわきじにっこうぼさつりゅうぞう) | 世田谷区ホームページ

【写真】

薬師三尊の写真は上記鈴木泉氏の論文より転載。

【拝観案内】

青龍山勝國寺 https://seiryuzan.jp/
住所 世田谷区世田谷4丁目27-4
最寄り駅は東急世田谷線世田谷駅または松陰神社前駅など
本堂本尊は不動明王立像。近くの廃寺におられたという不動明王像を合わせ、合計3躯の不動明王像が並ぶ。

2023年感謝状と仏像拝観リスト

はらぺこヒヨドリ感謝状2023
~感動をありがとう~

今年ももうすぐ終わる。たくさん仏像にお会いし、たくさんときめいて、たくさん感動した一年だった。
尊敬するみうらじゅんさんのみうらじゅん賞にならって、一年を振り返ろうと思う。
ただ、どの出会いも素晴らしく、賞というのは私にはおこがましいので、以下、感動への感謝を書き残しておきたい。

【感謝状~信仰はこうして続く~】

龍福寺(滋賀県甲賀市)十一面観音菩薩立像

元龍寺から龍福寺に移られた十一面観音さま

今年の感動は去年に遡る。去年8月10日、甲賀市の元龍寺をお参りしたところ、在所7軒で十一面観音菩薩様を御守してきたが、高齢化のため、近くの龍福寺にお遷しすることになったと伺った。本当に遷座されたのかなぁ...、どんな感じになってるのかなぁ...と思っているうちに早一年が過ぎ、今年の8/10も甲賀へ行くことにした。
おりからの雨と強風のなか、龍福寺のお堂に上げていただくと、なんと、元龍寺の十一面観音様が内陣の右側に立っておられるのが見えた。ご本尊のすぐ隣に、きれいな照明を浴びて、静かに立っておられらた。とても美しかった。お寺のかたに伺うと、たまたま空いていたその場所に観音様がぴったりとはまったので、特に大きな工事などはしていないのだという。
去年ご開帳の時にお会いした元龍寺の在所の皆様も来られており、観音様を見上げておられた。
さすが観音様! さすが在所の皆様である! もうこの時の感動が忘れられない。観音様の信仰が末永く続きますように。
感動をありがとうございました。
(旧元龍寺の十一面観音様は8/10ご開帳だったが、来年以降は別日になる可能性が高いとのこと。来年以降の日程は要確認である)

【感謝状~新発見も続く~】

2023年に新発見された仏像を二つ拝見した。一つが埼玉県白岡市、青雲寺の阿弥陀如来坐像。もう一つが静岡県三島市、成覚寺の薬師三尊である。どちらもお寺で長くおまつりされてきた仏像なのではあるが、前者は市の悉皆調査、後者は上原美術館の調査で見いだされたのだという。令和の世になっても、こういうことがあるから、仏像が楽しくてしかたない。三島の薬師三尊は箱根神社から明治2年に移されたものだという。箱根神社の仏像の一部は箱根の興福院におられるのだが、まさか三島にも残っておられたとは。
ちなみに、東京都日野市の百草八幡神社では、今年初めの掃除の際、中世の下向き剣頭文の瓦が出てきたのだそうだ。中世の大寺院、真慈悲寺の解明につながるかもしれず、期待が高まる。
感動をありがとうございました。
butsuzodiary.hateblo.jp

成覚寺(静岡県三島市)薬師三尊が上原美術館で寺初公開


他にもたくさん感動があったのだが、全部書いているともうすぐ年が明けてしまう。拝観リストを以下に書き記し、後日記憶を引き出すよすがとしたい。

【2023年仏像拝観リスト(一部かき氷など)】

1月
1/22 高幡不動尊
1/28 桑原詠子展@町屋カフェ金多屋


2月
2/4
〇新指定国宝重要文化財展1回目@東京国立博物館
・丹生上川神社の神像
・乙訓寺の十一面観音菩薩立像一日造立仏
・上徳寺阿弥陀如来立像(前期)
・観音寺の不動明王立像(前期)
・長く滝山寺十二神将少しだけ(前期)
〇大安寺展 東京国立博物館1回目@東京国立博物館

2/19
〇新指定国宝重要文化財展2回目@東京国立博物館
・聞名寺阿弥陀如来立像及び両脇侍立像(後期)
〇大安寺展2回目 @東京国立博物館
エゴン・シーレ展@東京都美術館
佐伯祐三展1回目(前期)@東京ステーションギャラリー
〇東京長浜観音堂 冷水寺(高月町宇根)十一面観音菩薩坐像(客仏)

2/26
横浜市令和4年度指定登録文化財展@横浜市歴史博物館
〇活字 近代日本を支えた小さな巨人たち 展@横浜市歴史博物館
薬王寺 地蔵菩薩像 法衣垂下
・證菩提寺 薬師如来立像 地元仏師

3月
3/4 
群馬県
正法寺太田市)仁王像 1685年、康祐の作 吉備研による修復が終わった翌日。ご本尊聖観音菩薩立像(鎌倉、県指定)ご開帳に行きたい
〇東光寺(太田市) 前を通過
大光院太田市) 子育て呑竜様をお参り
〇長楽寺(太田市世良田) 三仏堂の三尊仏 釈迦如来阿弥陀如来弥勒菩薩 県指定

3/5
群馬県高崎市
〇大信寺の前を通過  駿河大納言(徳川忠長/秀忠次男)の墓(高崎市
〇善念寺(高崎市阿弥陀如来立像 鎌倉 県指定
〇光徳寺(高崎市) 旧威徳寺内陣

3/10
〇館蔵 中国の陶芸展@五島美術館  愛染明王坐像 重文

3/11
東福寺展@東京国立博物館
〇大安寺展@東京国立博物館 3回目
佐伯祐三展2回目(後期)@東京ステーションギャラリー

3/18
仏像リンクさんのオフ会
〇朝日山慈眼院千手寺須賀神社かすみがうら市千手観音菩薩立像
〇宝蔵院(かすみがうら市阿弥陀如来立像 平安後期風だけど鎌倉初期と書いてある
〇法蔵寺(かすみがうら市)十一面観音菩薩坐像 四臂! 鎌倉 県指定
〇西蓮寺(行方市薬師如来坐像 県指定
〇福泉寺(鉾田市清凉寺式釈迦如来立像 重文
〇華徳院(鉾田市)汲上如意輪観音菩薩坐像、秋葉権現馬頭観音立像、聖観音立像など個性的

3/19
〇八王子 大光寺、龍泉寺(ぽっくり観音様ご開帳)、宝樹寺、極楽寺日枝神社地蔵堂
ますむらひろし銀河鉄道の夜展@八王子夢美術館 

3/21
〇心行寺(横浜市)十一面観音菩薩立像ご開帳

4月
4/8
京都市の北のほう
〇桜本寺 聖観音菩薩立像 平安 市指定
〇龍澤寺 観音菩薩坐像 室町
安楽寺 薬師如来坐像如来形立像、僧形坐像、天部形立像、いずれも平安仏
〇福徳寺
薬師如来坐像103.6cm定朝様 もかけ座 重文
持国天増長天 重文
・小さい如来坐像のほうが平安でももう少し古い感じがした。市指定。
〇宝泉寺 
阿弥陀如来坐像 平安 
・二天像 平安 
不動明王坐像
〇慈眼寺 くろみつ大雄尊(明智光秀坐像)、
〇常照皇寺 阿弥陀三尊、他
遣迎院 快慶阿弥陀如来、釈迦如来の二尊 4/8ご開帳
〇神光院 
薬師如来立像 平安前期 
地蔵菩薩立像 鎌倉 
・十一面観音菩薩立像 
大日如来金剛界
不動明王坐像、他
4/9
〇奈良・不退寺本尊聖観音菩薩立像@なら仏像館
□春氷@ほうせき箱
東大寺徳川家康展@東大寺ミュージアム
戒壇院四天王像@東大寺ミュージアム
戒壇院千手堂と大仏殿@東大寺
親鸞展@京都国立博物館 
阿弥陀如来立像快慶(奈良光林寺
聖徳太子孝養像(京都仏陀寺)
□奈良のイチゴ ゆめのか なのか

4/11
〇快慶ひかりを刻む 佐々木香輔写真展@キヤノン銀座ギャラリー

4/15
〇日本仏像史講義(山本勉)@清泉ラファエラ

4/19
春の優位展 古今和歌集を愛でる@五島美術館 

4/22
〇勝林寺(豊島区)はるすなお展3
〇大悲願寺(あきるの市)阿弥陀三尊ご開帳

4/29
〇宝生寺(八王子市)毘沙門天立像ご開帳 鎌倉 都指定

武相観音霊場(卯年卯月開扉)を満願。12年ぶり4/1-30にご開帳
1 観音寺 十一面観音立像 地蔵菩薩坐像他 4/15
2 長津田随流院 4/15
3 松岳院 4/23
4 観性寺 4/23
5 養運寺 4/23
6 千手院 4/23
7 観音寺 4/29
8 真照寺 4/22 本堂にご本尊大日如来
9 松連寺百草観音堂 4/22
10 清鏡寺 4/23?
11 大泉寺 4/1
12 保井寺 4/30
13 玉泉寺 4/29
14 永泉寺 4/16
15 福伝寺 4/16
16 金剛院 4/16
17 泉龍寺415
18 高乗寺 4/16
19 福昌寺 4/23
20 喜福寺 4/29
21 長安寺 4/16
22 真覚寺 4/16
23 興福寺 4/16
24 祐照庵大戸観音堂 正観音菩薩地蔵菩薩聖徳太子 4/1
25 普門寺 聖観音菩薩立像 平安後期 4/1
26 長徳寺 4/1
27 清水寺 4/1と4/30
28 福生寺 4/1と4/2
29 福生寺 4/1と4/2
30 上溝 高厳寺 4/2
31 当麻 観心寺 4/2
32 清水寺 4/2
33 覚円坊 4/2
34 泉蔵寺 4/30
35 上柚木観音堂 4/16
36 養樹院 4/1
37 祥雲寺 4/23
38 大悲山慈眼寺 4/1
39 宗保院 4/15
40 永昌院 4/16
41 永林寺 4/29 三重塔の聖観音菩薩 脇侍が毘沙門天と不動
42 白華山慈眼寺 4/1
43 信松院 4/16
44 宗印寺 4/27
45 観泉寺 4/23
46 吉祥院 4/29
47 定方寺 4/15
48 龍像寺 4/2

5月
5/3
長谷寺塔頭普門寺(桜井市) 不動明王坐像 平安 重文
長谷寺桜井市) 特別拝観 久しぶりに宝物館が開いていた!
當麻寺(葛城市) 奥院 金堂 講堂 曼荼羅堂 仁王さんは阿形さんが修復からお戻りで、吽形さんはご不在
久米寺橿原市) 二十五菩薩練供養大会式
□かき氷 いちご(堀内果実園奈良)

5/4
〇安養寺(福井市)説法印の阿弥陀如来 阿弥陀三尊二十五菩薩来迎図(写真のみ)平安、重文
〇東雲寺(福井市)丈六阿弥陀如来坐像、聖観音菩薩坐像 平安?
二上観音堂福井市二上観音立像 平安前期 重文 ご開帳 二天立像
五智如来堂(福井市滝波町)五智如来坐像 平安 県指定、二天像
〇朝日観音福通寺(福井県越前町千手観音菩薩立像 鎌倉 県指定、他

5/5
弘法寺岡山県瀬戸内市牛窓)お練供養
〇遍明院 五智如来、丈六阿弥陀如来坐像

5/6
〇大福寺(兵庫県養父市) 但馬西国霊場ご開帳
〇満福寺(兵庫県養父市) 但馬西国霊場ご開帳 千手観音菩薩立像(室町?)、中井権治
〇瑠璃光殿(養父市上野区)日光月光菩薩立像が平安っぽい、市指定
延命寺兵庫県朝来市) 聖観音菩薩坐像 室町? 四角ぽいフォルムが院派っぽいが、木目を生かした感じは宿院っぽくも?
〇国清寺(兵庫県朝来市阿弥陀如来立像
〇大智寺(京都府福知山市)破損仏、阿弥陀如来坐像、天部形立像、やばい!
〇永明寺(京都府福知山市)十一面観音立像が本地仏っぽくてやばいと思ったら丸山仏。地蔵菩薩立像は平安後期で市指定

5/6
□ベリーベリーヨーグルト(ほうせき箱)
興福寺北円堂(奈良市) 雨で人がいなくて、ゆっくり拝観
平等寺京都市) 因幡薬師ご開帳
壬生寺京都市) 本堂地蔵菩薩立像 平安 重文ほか 思いのほか平安仏がおられてびっくり。でも、雨で大変
真宗聖徳太子@龍谷ミュージアム 聖徳太子童形立像(1341、東京西光寺)

5/20
仏像リンクさんオフ会
〇泉福寺(埼玉県滑川町阿弥陀三尊 重文
華厳寺(埼玉県深谷市)新田義兼開基。渋沢栄一ゆかりのお寺 胎蔵界大日如来坐像93.8cm 12世紀後半 県指定。円空阿弥陀如来立像 41.5cn 市指定
〇光恩寺(群馬県千代田町阿弥陀三尊 鎌倉 県指定
〇光了寺(茨城県古河市聖徳太子立像(松葉太子像)14世紀前半(鎌倉末期から南北朝前半) 県指定
〇西蓮寺(茨城県坂東市) 阿弥陀如来坐像 平安末期 定朝様 県指定

6月
6/3 
日本仏像史講義(山本勉先生)@清泉ラファエラ

6/4 
〇保昌寺(宮城県蔵王町)丈六阿弥陀如来坐像 お顔と胸板が平安、それ以外は江戸時代 県指定
〇清立寺(宮城県蔵王町) 安養寺金堂(丈六阿弥陀堂)の棟上にあった宝珠
〇悠久の絆 奈良・東北のみほとけ展@東北歴史博物館宮城県多賀城市
・菩薩立像(十八夜観音堂)、勝常寺薬師三尊、唐招提寺トルソー他
□牛タン 伊勢屋。宮城県産銀鮭のはらこめし(お弁当)
ままどおる

6/8
〇某寺(東近江市)十一面観音菩薩立像、他
〇福寿寺(東近江市) 十一面観音菩薩立像、他
興福寺東近江市五智町五智如来聖観音菩薩立像
〇石馬寺(東近江市秘仏本尊観音菩薩立像ご開帳、毘沙門天立像、地蔵菩薩立像。収蔵庫の仏像群
〇広照寺(滋賀県愛荘町聖観音菩薩立像 90.2cm 像内に阿弥陀如来立像 町指定
〇吉祥寺(滋賀県竜王町阿弥陀如来坐像83.0cm 平安後期 重文
〇薬師堂(滋賀県竜王町)前を通っただけ 阿弥陀如来立像94.2cm 平安末期の作風を留める鎌倉初期の作か。町指定。
〇東光寺(守山市) 幸津川地蔵菩薩坐像 108.3cm 平安末期 市指定 (11/4-5に十一面観音菩薩ご開帳の案内が出ていた)

6/9
〇矢田寺(奈良県大和郡山市)十一面観音菩薩立像ご開帳
〇東明寺(大和郡山市薬師如来坐像ご開帳 平安
奈良国立博物館なら仏像館 一部の像について写真撮影が可能に
□赤くま君(堀内果実園奈良三条通り店)
□さくらバーガー

6/15
〇仁王写真家 渡仁写真展 残像2020-2023@ギャラリー世田谷233

6/20
〇行元寺の全て@いすみ市郷土資料館 
〇行元寺本尊阿弥陀如来立像 平安 県指定 両脇侍毘沙門天不動明王、他
〇閻魔堂(いすみ市) 石造地蔵菩薩椅像 像高1m 台座二段46cm 貞享5年(1688) 市指定
坂東の車地蔵 市指定
大聖寺不動堂 重文

6/29
〇館蔵 古鏡展 めでたい鏡の世界@五島美術館

7月
7/8
□八王子みるく氷@金多屋

7/30
〇唐沢阿弥陀寺(長野県諏訪市) 絶壁に大きな徳本上人の名号

8月
8/5
〇慈悲のほとけー観音と古寺の名宝ー@岡山県立博物館
聖観音菩薩立像(法界院
観音菩薩立像(余慶寺)他
□シャインマスカットミルミルクス@おまち堂FRUTAS北長瀬店

8/6
〇東鳴川観音堂奈良市不空羂索観音坐像
〇福智院(奈良市
〇聖地南山城展1回目(前期)@奈良国立博物館
〇なら仏像館
東大寺南大門 夜間(なら燈花会
カシューベリー@ほうせき箱

8/7
東大寺 大仏様のおみぬぐい 大仏殿の放水
東大寺ミュージアム 
〇法華堂→念仏堂→指図堂(指図堂修理落慶参拝のご朱印を受け取りにいく)→千手堂
〇五劫院 五劫思惟阿弥陀如来ご開帳
〇伝香寺(奈良市地蔵菩薩立像 南無仏太子像
極楽寺(安堵町)
・本尊阿弥陀如来立像138.4cm 平安 重文 
聖観音菩薩立像 85.6cm 平安前期 町指定(阿弥陀様の両脇侍に向かって左)
・二天像(増長天毘沙門天
・広島大仏 阿弥陀如来坐像
□丸ごとすいか@堀内果実園奈良三条通り店
□さくらバーガー

8/8
〇宗泉寺(滋賀県野洲市) 薬師堂のご開帳
薬師如来坐像 平安 重文 
毘沙門天立像 平安 重文 
不動明王立像及び両脇侍立像 平安 重文
十二神将
・本堂のご本尊阿弥陀如来坐像は鎌倉?
書写山円教寺兵庫県姫路市
・摩尼殿奥秘伝如意輪観音菩薩坐像 ご開帳 新長史(住職)晋山記念
・大講堂 釈迦三尊像 四天王像
常行堂 丈六阿弥陀如来坐像 安珍の作
・食堂 2階の諸仏 1階でTeam Labの展示
姫路おでんテイクアウト

8/9
〇聖地南山城展2回目(後期)@奈良国立博物館
〇薬仙寺(兵庫県神戸市)
・十一面観音菩薩立像ご開帳
・本尊薬師如来坐像
〇元祖教会(神戸市)法然上人名号碑
〇特別展「神戸の文化財Ⅲ ~今伝えたい、私たちの宝・街・心・技~」@神戸市立博物館
石峯寺薬師如来坐像 
如意寺 十一面観音菩薩坐像
太山寺(神戸市西区)四天王立像 13c
太山寺 伝三所権現坐像 平安12c後半 白山権現(女神)、熊野権現(男童子)、吉野明神(女神)
・転法輪寺 四天王立像 11c
・善福寺 聖徳太子二歳像 湛幸・湛賀 13-14世紀 重文
〇快慶ひかりを刻む 佐々木香輔写真展@キヤノン大阪ギャラリー
〇如願寺(大阪 喜連瓜破)千日会ご開帳
・十一面観音菩薩立像
地蔵菩薩立像

8/10
〇正福寺(滋賀県甲賀市)千日会ご開帳
〇龍福寺(甲賀市) 
・元龍寺におられた観音菩薩立像が龍福寺に移られて初めての千日会ご開帳
・龍福寺本尊薬師如来坐像、他

8/16
九品仏浄真寺 
・虫干し
・双盤念仏

8/26
御射山社(長野県富士見町) 諏訪大社上社の御射山社祭り はら山様(原山)が始まる

8/27
八ツ手虚空蔵堂(長野県原村) 御射山社祭りで諏訪大社から神様が移動される途中、この八ツ手の虚空蔵堂に立ち寄り、虚空蔵菩薩本地仏)に祈りをささげる。早朝の行事を見学させていただいた。

8/28
〇乙事区役所(長野県富士見町)
隣の法隆寺の尊像が乙事区役所の2階に安置されている。平日であれば電話予約で拝観可能。
・釈迦如来坐像(文明17年=1485年)
金剛界大日如来坐像
不動明王坐像(江戸後期)
・制吒迦童子立像(江戸末期)
不動明王立像(江戸後期)
毘沙門天立像(江戸後期)
・興教大師坐像(江戸後期~明治)
法隆寺本尊 十一面観音菩薩立像(江戸後期)
法隆寺十一面観音堂本尊 十一面観音菩薩立像(江戸後期)
普賢菩薩坐像(天明6年=1786年/木喰行道)
法隆寺十一面観音堂(長野県富士見町)
上記のとおり、ほとんどの尊像が乙事区役所に遷座されているが、それでもまだ、法隆寺十一面観音堂内に仏像があった。
観音菩薩立像
薬師如来坐像
・僧形像?神像?
三十三観音


9月
9/12
〇白・黒・モノクローム@五島美術館

9/16
〇京都南山城展@東京国立博物館 1回目
〇あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい― 静嘉堂美術館
舟越桂 私は街を飛ぶ 2022年 近くの路上

9/17
〇清野利明講演~幻の真慈悲寺に瓦が葺かれていた頃~@百草園
〇百草八幡神社阿弥陀如来坐像ご開帳
〇百草観音堂
高幡不動尊(講演に出てきた鰐口を熟視) 骨董市


9/23
〇めぐりあう大津絵展@八王子夢美術館
〇金剛院骨董市
極楽寺阿弥陀如来立像 市指定
龍泉寺ぽっくり観音ご開帳

9/24
〇勝林寺阿弥陀如来様開眼法要
〇常盤山文庫の名宝@東京国立博物館
〇京都南山城の仏像展@東京国立博物館 2回目
本歌取り 杉本博司展 松濤美術館

10月
10/3
大善寺山梨県甲州市勝沼)ご開帳
〇放光寺(山梨県甲州市塩山)
ほうとう@皆吉

10/7
〇足柄の仏像 神奈川県立歴史博物館

10/8
〇いちはらのお薬師様 市原歴史博物館
〇運慶と快慶 六田知弘佐々木香輔写真展 相田みつおミュージアム
浄瑠璃寺十二神将 佐々木香輔写真 奈良まほろば館

10/14
〇千年の秘仏と近江の情景 滋賀県立美術館
・正福寺(湖南市秘仏本尊大日如来坐像 
・同、観音菩薩立像 
善水寺不動明王坐像
東大寺(奈良)
・良弁僧正1250年御遠忌法要@大仏殿
東大寺ミュージアム
・法華堂執金剛神ご開帳
戒壇堂四天王立像 戒壇堂修復後初めて
興福寺国宝館
唐招提寺 御御影堂特別拝観で鑑真和上像 宝物館 金堂諸仏 講堂は改修工事中
□ほうせき箱 シャインキュウイヨーグルト
□さくらバーガー

10/15
〇瓦屋禅寺(東近江市
秘仏本尊千手観音菩薩立像ご開帳
・四天王立像
地蔵菩薩坐像
・その他 山岳修験系の諸仏
〇善明寺(東近江市
・丈六阿弥陀如来坐像 重文
阿弥陀如来坐像 1133年河内講師快俊の作 重文
〇昌善寺(東近江市
・丈六阿弥陀如来坐像 平安 市指定
地蔵菩薩立像 平安 市指定
〇山村神社観音堂滋賀県甲賀市) 
・十一面観音菩薩立像 毘沙門天立像 不動明王立像
正法寺滋賀県蒲生郡日野町) 
・十一面観音菩薩立像 毘沙門天立像 不動明王立像

10/28
長安寺(神奈川県横須賀市
不動明王坐像 市指定(10/28ご開帳)
・本堂 阿弥陀三尊 地蔵菩薩立像(三浦地蔵第6番) 六字詰双盤念仏之碑
〇金剛三昧院展@鎌倉歴史文化交流館 
地蔵菩薩立像 
・弁財天坐像
〇特集展示 洪鐘祭こうしょうさい/おおがねまつり@鎌倉歴史文化交流館
〇宝金剛寺密教美術の宝庫ー 鎌倉国宝館
地蔵菩薩立像
大日如来坐像、他
〇宝戒寺(鎌倉市

10/30
龍見寺(東京都八王子市) 大日如来坐像

11月
11/3
〇拝島山大日堂 
大日如来 平安、釈迦如来 平安、阿弥陀如来 江戸、仁王 鎌倉
日吉神社

11/4
〇館蔵品でみる宗教美術の造形@世田谷区立郷土資料館 1回目
〇栖岸院阿弥陀三尊
〇日本遺産フェスティバルin桑都八王子

11/7
〇古伊賀 破格の焼き物 展@五島美術館

11/10
〇やまと絵ー受け継がれる王朝の美ー@東京国立博物館
〇京都南山城展@東京国立博物館 3回目
川端龍子旧蔵の毘沙門天立像(南山城、旧中川寺)@東京国立博物館

11/12
〇みほとけのキセキII@浜松市立美術館
〇初山宝林寺(静岡県浜松市
・釈迦如来坐像及び両脇侍像県指定 
達磨大師坐像
・伝武帝椅像県指定 
・二十四善神立像 県指定 
阿弥陀三石仏 
・石仏五智如来坐像 
西方浄土曼荼羅図(當麻曼荼羅の写し) 
・独湛性榮禅師像 県指定
龍潭寺静岡県浜松市
・丈六釈迦如来坐像 
・琵琶湖から引き上げられたと伝わる十一面観音菩薩立像
□八百徳お櫃うなぎ茶漬け

11/14
九品仏浄真寺 十夜法要 林田康順法話

11/18
〇弓削阿弥陀寺滋賀県竜王町
・釈迦如来坐像
〇須恵八幡神社
〇須恵観音堂竜王町) 
十一面千手観音菩薩立像
〇駕與町地蔵堂竜王町) 
地蔵菩薩立像 
阿弥陀如来坐像 
不動明王立像 
・弁財天坐像 
・廃福田寺七重塔
〇吉祥寺(竜王町
阿弥陀如来坐像 重文 
千手観音菩薩立像(岡谷の氏仏)
竜王観音寺(竜王町
秘仏千手観音菩薩立像 
・異形の聖徳太子坐像
〇正明寺(滋賀県日野町)
秘仏千手観音菩薩立像、不動明王立像、・毘沙門天立像ご開帳 
聖徳太子立像 
大日如来坐像
達磨大師坐像
地蔵菩薩立像
・徳本上人名号塔
□さくらバーガー(奈良市
興福寺奈良市)中金堂夜間拝観
笑い飯哲夫のおもしろ社寺めぐり 漢國神社(奈良テレビ

11/19
東大寺
東大寺ミュージアム 良弁僧正と東大寺
・大仏殿
・念仏堂 地蔵菩薩坐像 1237年
・法華堂 良弁僧正像法華堂移座特別公開
・二月堂御正体
奈良国立博物館 長谷寺塔頭普門院不動明王坐像♡特別展示
□ほうせき箱 栗氷 
〇乙訓寺(京都府長岡京市
・十一面観音菩薩立像(一日造立仏)と毘沙門天立像公開
光明寺京都府長岡京市
観音堂千手観音菩薩立像、地蔵菩薩立像、不動明王立像
阿弥陀堂阿弥陀三尊立像、他

11/23
〇青雲寺(埼玉県白岡市
阿弥陀如来坐像特別公開
地蔵菩薩坐像 不動明王立像 他
・薬師堂 薬師三尊 十二神将
〇興善寺(埼玉県白岡市
達磨大師像 鎌倉 市指定
・子生神社(東京都あきる野市
〇五日市資料館(東京都あきる野市)月待供養塔、板碑、獅子頭
〇上町地蔵堂(東京都あきる野市
〇下町地蔵堂(東京都あきる野市)子育地蔵1669年 恵比寿

11/25
〇祐天寺 本堂 阿弥陀堂 地蔵堂

11/26
〇東京長浜観音堂 薬師如来立像両脇侍像

12月
12/9
〇日中平和友好条約45周年世界遺産シルクロード展 東京富士美術館
〇聴講→東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター2023年公開講座文化財調査・研究をめぐる諸相や課題」第3回「居場所を失う神仏 廃村や廃堂に伴う文化財保存の問題」宮本晶朗准教授

12月某日
〇中世瓦が語る寺と神社ー日野の真慈悲寺と百草八幡神社ー@日野市郷土資料館

12/16
〇伊豆仏と出逢う@上原美術館静岡県下田市
〇福泉寺(静岡県熱海市) 首大

12/17
谷保天満宮(東京都国立市
・血文の阿弥陀如来市指定 
・兜薬師 十一面観音菩薩立像 
狛犬(鎌倉、重文)
〇滝乃院 
・血文阿弥陀如来の石碑

12/24
〇みちのくのいとしい仏たち 東京ステーションギャラリー

12/28
〇館蔵品でめぐる宗教美術の造形@世田谷区郷土資料館 2回目

以上

【埼玉】青雲寺(白岡市)説法印の阿弥陀如来が新発見!!!

青雲寺(埼玉県白岡市
説法印を結ぶ平安後期の阿弥陀如来坐像が新発見!
2023年11月23日、初の一般公開に伺った!!

日本の仏像の世界は奥深くて、令和の世になってなお、平安時代のお像の「新発見!」という事態が発生する。平安仏さまは長い年月をただ過ごしてこられただけなのに、「新発見!」とは物騒な物言いではある。

つまりは、こういうことである。現在、埼玉県白岡市と呼ばれるところに、いつの頃からか阿弥陀如来様の坐像がおまつりされていた。人々の記憶によると、かつては篠津須賀神社付近にあった西光庵に安置されていたが、いつの頃か青雲寺近くの阿弥陀堂に移される。やがてそこが廃寺となってしまい、以来、この阿弥陀如来坐像は青雲寺にひそかにまつられてきた。矢のように時は過ぎ、白岡市では2022年から仏像調査が始まる。同年6月、青雲寺を訪れた調査団は、本堂の正面左側の間に坐しておられる阿弥陀如来を目にする。暗がりの中、目を凝らしたその瞬間、平安末期の特徴を示す阿弥陀如来様のお姿が浮かび上がった。おお、びっくり仰天、驚いた…。お寺や地元の檀信徒さまもびっくり。えー、昔から手を合わせてきた阿弥陀さまにそんな文化的な価値が…? まぁどうしましょう…? と、まあ、こういうことを仏像調査の世界では「新発見!」と呼ぶようだ。繰り返すが、阿弥陀如来様は造立以来、人々の祈りをうけとめ、無限の光を照らしてくださってきたわけなので、阿弥陀様目線でいえば「新発見!」とは、こそばゆいに違いない。 阿弥陀様におかれては、いやいや、ずっとここ、あなたのそばにおりましたよ、というお気持ちに違いないのだ。

そういうわけで、「新発見!」とは物騒な物言いではあるもの、「新発見!」の阿弥陀如来坐像が初公開されると聞けば、伺わざるをえない。それが仏像大好きおばちゃんの習性である。しかも、説法印の阿弥陀様であれば、万難を排して出かけなれば。仏友さんから情報を得たおばちゃんは早速白岡市に電話をし、拝観の許可を取り付けたのであった。

白岡駅から2kmあまり。静かな街道沿いに青雲寺はあった。11月23日、阿弥陀如来様の初の一般公開は、市の文化財課の主催により、10時、11時、13時半、14時半の4回にわけて予定された。各回45分間で、住職や文化財担当者による解説のあと、各参加者が阿弥陀如来様のお近くにいって拝観するという流れだった。私は10時の回に参加した。

青雲寺 阿弥陀如来坐像
胸の前で説法印を結ぶ
美しい衣文


近くで見上げると、やはり、写真よりずっと見事なお像だった。像高108.5センチメートル。幅87.2センチメートル。前後割矧ぎ。胎内銘なし。螺髪や肉髻の形、丸いお顔、結跏趺坐した膝の厚みが薄いところは平安後期、定朝様の特徴を示すが、胴が長めで、表情が少し固めなことから、定朝様の全盛期から少し時代がくだった院政期の作ではないかとのこと。構造についても解説があったが、内繰りの丸鑿のあとの様子や、前後割矧ぎした右側に三角形の材を入れる点なども当時の特徴だという。

解説は、近くの宮代町の西光院の阿弥陀如来坐像にも及んだ。宮代町西光院の阿弥陀三尊も平安後期の作。安元2年(1176)の銘があり、国の重要文化財に指定されている。東京国立博物館に寄託されおり、時々常設展にお出ましである。調査された先生によると、宮代町の阿弥陀如来坐像は地方色が出ているのに対し、青雲寺の阿弥陀如来像はもっと都ぶりがするという。 青雲寺像は、都の仏師か、中央の仏像を学んだ地方仏師によるのではないかとのこと。

それにしても、仏像大好きおばちゃんが気になるのは、説法印である。おばちゃんがある本で読んだところでは、説法印の阿弥陀如来は當麻曼荼羅にみられ、奈良時代に例が多いらしい(奈良・興福院など)。鎌倉時代に入り、奈良の古仏に学んだ慶派の制作による例もあるという(京都・西念寺など)。という説明を読むと、平安時代には、説法印の阿弥陀如来は少ないのだろうと推測できるのだが、本当のところはいったいどうなのだろう。奈良の法隆寺で、説法印の阿弥陀如来坐像を拝見したことがある。大神神社伝来の地蔵菩薩立像が聖林寺十一面観音菩薩立像と一緒に東京国立博物館にお出ましだったとき、法隆寺では、この地蔵菩薩立像がおられた場所に、説法印の阿弥陀如来坐像がお出ましだったのだ。この阿弥陀如来像は平安時代のものだったと思う。で、ここにきて、青雲寺の説法印の阿弥陀如来像が「新発見!」である。平安時代にも説法印の阿弥陀如来像は少なからず造立されていたと考えてよいのだろうか。いずれにしても、来迎印や弥陀定印の像が多いことには変わりなく、説法印の阿弥陀如来は稀少だと思われる。

感動と興奮のあまりいろいろ書いてしまったが、最後に、拝観時に印象的だった出来事をひとつ。訪れたおじいさんが「久しぶりにご本尊様にお会いできた…。うちのお寺、西光庵だったから…」と呟いておられたのである。おじいさんの純粋な思いが伝わってきた。 おじいさんの前では、自分などただのよそ者にすぎない。そんな自分が拝観させていただいているという自覚を忘れずにいたい。「新発見!」の物騒な響きの中、このおじいさんのピュアな言葉(ことのは)がひらひらと上空に舞い上がっていくのを感じた。

彫刻史の観点からの解説もしっかり聞けたし、おじいさんの感動も聞けた。本当にありがたく、関係の皆様にお礼申し上げたい。
青雲寺の阿弥陀如来さまよ、永遠に!

【参考資料】
白岡市による青雲寺阿弥陀如来の解説=木造阿弥陀如来坐像/白岡市
白岡市のサイト=青雲寺の木造阿弥陀如来坐像が市指定文化財に指定されました!/白岡市
宮代町のサイトより西光院(埼玉県宮代町)阿弥陀三尊の解説=テキスト / 西光院阿弥陀三尊像
阿弥陀三尊の画像=西光院木造阿弥陀如来及び両脇侍像


【拝観案内】
青雲寺(しょううんじ)
埼玉県南埼玉郡白岡町大字篠津672
阿弥陀如来さまの予約拝観が可能かは不明。今回の初公開は、今年7月に発足したばかりの白岡遺産保存活用市民会議が市教委、青雲寺とともに初めての事業として企画したものなのだそう。今後の公開にも期待がもてる。
青雲寺ご本尊は不動明王坐像。今回は公開されなかったが、境内に薬師堂もあり、薬師三尊と十二神将がまつられていた。薬師堂については、堂外からガラス越しに拝観した。

【滋賀】昌善寺(東近江市)暗がりに浮かび上がる丈六の阿弥陀如来さまにお念仏

昌善寺(浄土宗/東近江市菩提寺町)

 何度か書いたかもしれないが、滋賀県の丈六阿弥陀仏にお会いしにいくという活動を細々と続けている。今回は東近江市の昌善寺をお参りした。昨年投稿した東近江市横溝町の善明寺のすぐ近くである。その距離はわずか500mほど。ご近所と呼べる場所に、平安時代の丈六阿弥陀如来様がお二人もいらっしゃる。おそるべし、東近江市。善明寺が10月第三日曜にご開帳なのに対し、昌善寺は事前連絡でご都合があえば拝観させていただけるとのこと。せっかくなので、お友達を誘って、善明寺と合わせてお参りしてきた。事前に写真で拝見した以上に立派な阿弥陀如来さまだった。
 拝観の最後に、住職様がお堂のカーテンを閉めて暗くし、静かな照明のもとで、お十念を申し上げる機会をくださった。丈六の大きな阿弥陀如来様が薄暗がりに浮かび上がる。お寺様に私がお願いしたのは仏像拝観。それなのに、それ以上の体験をさせていただいた。あの時のあの感覚忘れずにいたい。

阿弥陀如来坐像

平安後期 像高223cm 市指定
昌善寺ご本尊。丈六仏に合わせて明治15年に建てられた本堂にどっしりと坐しておられる。
事前に上半身のみのお写真をどこかで拝見していて、その限りではわかりにくかったが、実際に間近で拝見すると、見事な定朝様の丈六仏であった。丸いご尊顔。肩の力を抜いて、ゆったりと坐す。側面観は細み。安定感があり、とても上品なお姿。
気になるのは500mほどの至近距離にも平安後期の丈六阿弥陀仏が残るという点である。

地蔵菩薩立像

平安後期 市指定
お身体が薄く、衣文を彫り出さない。像高は50-60cmぐらいだろうか。頭部の色が体部と違っているのが気になる。平安後期のお像として、東近江市文化財に指定される。このように衣文を彫り出さないお像は時々お見かけするが、江戸時代だったりして、時代の見極めが私には難しい。
法然上人、善導上人とご一緒におられるところが、両上人のファンとしてはうれしかったりする。地獄の苦しみの中に現れて救ってくれるに違いない。

聖光上人像と良忠上人像

浄土宗第二祖聖光上人と第三祖良忠上人が同じお厨子にお並びであられた。珍しい、すごい、と喜んでいたら、このお像について質問される方も珍しいです、と言われる。浄土宗の法脈を辿る法要の際にお出しするお像なのだと伺った。

ご本尊阿弥陀如来さま
お身体が薄く、衣文を彫り出さない。平安後期。市指定
聖光上人像と良忠上人像であられると伺った

【拝観案内】

菩提樹山解脱院昌善寺
〒527-0136 滋賀県東近江市南菩提寺町680番地
電話 0749-45-2247
拝観は要予約。お寺様のご都合がよければ拝観可能。

【静岡】みほとけのキセキIIー遠州・三河のしられざる祈りー

みほとけのキセキII
遠州三河のしられざる祈りー
浜松市美術館 12/3まで

 浜松市美の仏像展は一昨年に続き2回目。二番煎じかなぁなんてちょっと思ってた自分を叱りつける。遠州東三河の仏像はとんでもなく奥深いと知る。露出展示も多く、木彫仏の呼吸に耳を傾けた。

 府八幡宮磐田市)から11世紀の僧形八幡神坐像と女神坐像がお出まし。女神像は胸の辺りに木の節があらわになっており、霊木を使った可能性が指摘される。木の節は女神が胸に抱くハート♡のようにも見える。かわいらしくて、キュンとする。しかし、あえて霊木を使ったのであれば、その節はまさに霊性の要なのだろう。心臓のようなものである。それがハートマークに見えるのは偶然なのか、必然なのか…。

 冨賀寺(新城市)の如来坐像の残欠は12世紀の優美なお姿を想像させる。さぞかし美しかったことだろう。なんとか組み立て直せないのかと思うのだが、お顔の正面が欠けているので、難しいのかな。このお像だけ撮影不可だったのでSNSに上がりにくいだろうが、ありし日のお姿を想像してうっとりする変人がいることをここに記しておきたい。平安後期の薬師如来坐像がおられる林光寺にも近く、さらに興味をかきたてる。

 西楽寺(浜松市)の月光菩薩立像には驚いた。お寺でお会いしたことをすっかり忘れていた。このお像は大きく内刳りがあるのだが、背板がないそうで、本展では、その内刳りの鑿のあとを間近で拝見できる。お寺では、お背中まで拝めなかったので、お背中がそんなことになっているとは知るよしもなかった…。

 普門寺(愛知県豊橋市)ご本尊聖観音菩薩立像は、秘仏で公開日が限られており、なかなかお会いできずにいた。コロナ禍が始まったばかりの頃に、普門寺様がYouTube配信でこの観音様を映し出してくださったことを思い出す。展示会場で初めて実際に見上げた観音様は、写真や動画配信で拝見していた以上に落ち着いていて、穏やかで、美しかった。同時に、不思議で少し違和感もあったのだが、ご尊顔を彫りなおしたのではないかとの解説を読んで納得した。このような修復をしてもなお守り伝えようとした歴史があることに感動を覚える。

 と、こんな感じで書き続けたいのだが、何分時間がない。最後に、静かに興奮した点をひとつだけ。玖延寺(静岡県浜松市)の薬師如来像は出陳されていないものの、会場内の解説と図録において一日造立仏の可能性が指摘されていた。それを読んで、すっと腑に落ちた。6年前にお寺で拝見し、その不思議なお姿が記憶に残っていたからである。当時の私は一日造立仏を知らなかったと思う。そして、そのような指摘をする専門家もおられなかったように思う。仏像拝観を続けているとこういうことがあるので、なかなか足を洗えない。

 これまで何度も書いてるかと思うが、地方の仏像に限定した展覧会に敬意を表したい。仏像には古来の人々の祈りや各時代の空気が詰まっている。地域を知り、祖先を知り、そして、現在の自分を知るよすがなのだと信じている。まさに、みほとけの軌跡であり、奇跡に違いない!


(↑府八幡宮の女神像)


(↑西楽寺月光菩薩立像のお背中)


(↑普門寺ご本尊聖観音菩薩立像)


(↑玖延寺薬師如来立像。お寺で撮影。本展への出展はなし)

【滋賀】瓦屋禅寺ご本尊千手観音菩薩立像を拝む

瓦屋禅寺(臨済宗妙心寺派東近江市)
50年ぶりご本尊千手観音立像のご開帳

今年最も楽しみにしていた瓦屋禅寺のご開帳に伺った。

瓦屋寺は聖徳太子が創建に関わる古刹。物部氏に勝利した聖徳太子四天王寺を建立する際、この地の土で瓦を焼き、摂津まで運ばせたという伝承が残る。瓦造りの作業が神仏のご加護により順調に進むよう、聖徳太子自らが千手観音を刻んだのが、瓦屋寺の始まりと伝わる。天台宗だったが、織田の焼き討ちで衰退。江戸初期に香山和尚を中興とし、妙心寺派となる。宗派は変われど、太郎坊宮をさらに登った山の上、清らかな佇まいは歴史を超えて変わらないように感じられた。

秘仏本尊千手観音菩薩立像(重文)

秘仏本尊千手観音菩薩様。お寺で購入したクリアファイルの画像を撮影したもの

秘仏千手観音立像は50年ぶりのご開帳。彫刻史の観点からの説明は見つけられていないので、仏像大好きおばちゃんの素人の直感を書いてしまおう。
まず、ご尊顔は平安前期のような密教色の強い、力強い感じ。お厨子に入っておられるので側面は見えなかったが、正面から拝する限りでは、お身体は全体的に細身な感じ。特に、お膝辺りから下が細い。下腹部辺りの衣文は繊細といってよいのか? 素地のせいか、檀像風にも感じられる?
腕は後補も多いのかもしれないが、千本の腕をもつ真数千手である。しゃもじのような薄い腕が付いている真数千手は時々拝見するが、それが前方に向かって伸びている珍しいのではないかと思った。 仏友さんの一人はそれを「私たちに向けて手を差し伸べてくださっているかのよう」と表現したのだが、それこそ観音様の本質を表していると納得してしまった。仏友さんの心がきれいだから、そう感じられるのでしょう。

四天王立像(市指定文化財

手前の増長天持国天が身体を捻った動きのあるポーズを取るのに対し、後ろの広目天多聞天は直立に近いという違いはあるものの、総じて穏やかな感じのお像 である。平安後期だろうか。

秘仏本尊以外は撮影してよいとのことで、恐る恐る撮らせていただいた

地蔵菩薩

本堂と渡り廊下でつながる地蔵堂にまつられる。これはとても難しい。摩耗した優しいご尊顔は平安かもと推測するも、お身体の印象がだいぶ異なる。難しい。

小さな仏像がたくさん

驚いたのは、庫裏の一室に並べられたたくさんの小さな仏像たちである。 天狗三尊 (金毘羅大権現、 太郎坊山権現、秋葉山大権現)、 摩利支天、役行者など、 禅寺とは思えない仏さまばかり。おそらく古くても室町以降のような気がするが、その頃も山岳信仰の影響があっただろうか。それとも明治以降にどこからか譲り受けたのか。いずれにしても特筆すべき仏像群かと。

躍動感あふれる摩利支天に目が釘付けとなった

以上、仏像に関する説明はなかったので、 素人 の仏像大好きおばちゃんの感想を思うままに書き連ねてみた。きっと素人の勘違いもある。もっとちゃんと勉強したいなぁ…

【拝観案内】

瓦屋禅寺(臨済宗妙心寺派
maps.app.goo.gl

【展覧会】京都・南山城展の小さいお像に注目〜和束町薬師寺の薬師如来坐像〜

萬年山勝林寺さんの関連で…
南山城展(11/12まで)に行こう!

右が和束町薬師寺薬師如来坐像。左が蟹満寺の阿弥陀如来坐像。どちらも足を衣でくるむ。豊島区の勝林寺ご本尊様と似ている!
勝林寺ご本尊釈迦如来坐像。許可を得て筆者撮影

萬年山勝林寺(東京都豊島区)のご本尊釈迦如来さまが好きすぎて、最初に調査された清水眞澄先生の論文(『豊島区仏像彫刻調査報告書 豊島区の仏像』(2000年)掲載)を時々読み返す。この論文のなかで、この像と同様に足を衣ですっぽり包む例として、奈良・唐招提寺盧舎那仏坐像(8世紀後半)、大阪・獅子窟寺薬師如来坐像(9世紀後半から10世紀前半)、そして、京都・薬師寺薬師如来坐像(9世紀前半)が挙げられる。
最初の二例は言わずと知れた国宝で、何度か拝観したことがあるのだが、拝観機会が得られなかったのが、京都薬師寺薬師如来坐像だった。

この京都の薬師寺というのは、京都府南部のお茶の産地、和束町にある融通念仏宗のお寺だそうだ。このなかなか拝観できない薬師如来さまがなんと、今、東京国立博物館の「京都・南山城」展にお出ましなのである! ガラスケース越しではあるが、程よい照明のもと、間近で拝観できるのである!!

薬師寺像は平安前期の力強いお像。写真で拝見した限りでは大きなお像と思っていたのだが、実際にお会いすると、勝林寺ご本尊と同じぐらいの像高で驚いた。どちらもそんなに大きくはないが、大きく見えるのである。そして、もちろん、清水眞澄先生のおっしゃる通り、勝林寺ご本尊と同様に、足を衣でくるりと包み込んでおられた。
清水先生は「(勝林寺本尊の)小さめの鼻と口をもち、その口の両端をわずかに締めた感じ」も薬師寺像と似ていると書いておられた。ただ、薬師寺像が厳しめの印象なのに対し、勝林寺ご本尊様はにこやかに微笑んでおられるので、ご尊顔の全体的な印象は違うように私は感じた。(ちなみに、勝林寺ご本尊のご尊顔については、金沢文庫の瀬谷先生が元興寺薬師如来に似ていると書いておられ、私はその説に賛成である)
つまりは、この二つのお仏像は、双子とは言えないものの、そっくりのきょうだいのお像のように感じられるのである。 
ついては、勝林寺にご縁のある方々はもちろんのこと、そうでない方々すべてにもぜひ、南山城展でこの薬師寺像をご拝観いただきたい。仏像好きのこのおばちゃんはそう一人静かにつぶやく昨今なのである…。

【追記】
なお、この薬師寺薬師如来坐像は今夏の奈良国立博物館「聖地・南山城」展にもお出ましで、私はそこで初めて拝観した。奈良の展覧会では、蟹満寺阿弥陀如来坐像とお並びであった。その真ん中に、勝林寺のご本尊様がおられるところを想像したのは、私だけだったかも。ちなみに、蟹満寺阿弥陀如来坐像についても、清水先生は同論文で言及されている。

【展覧会】足柄の仏像@神奈川県立歴史博物館

足柄の仏像
神奈川県立歴史博物館
23/10/7-11/26

足柄の仏像展チラシのメインは朝日観音堂毘沙門天さま!
保福寺(南足柄市)十一面観音菩薩さま。世界中の苦しみを癒すような絶対的な優しさ

神奈川県西部、足柄地域は古い仏像の宝庫。10/7初日朝、オープンと同時に入館するも、個性的な仏像が多く、クラクラしてしまった。いわゆる、仏像酔いである。

こういう時はとりあえず、展覧会全体を流して観るのがよい。この時も40分ほどかけてさらっと一巡。その後いったん会場を出て、大きく深呼吸。ミュージアムショップで図録を購入し、再度会場へ。今度は図録を読みながら、仏像神像の一尊一尊をじっくり拝見する。大好きな万巻上人像や保福寺の十一面観音像に加えて、コロナ禍で個人的に拝観断念したあのお堂やあの公民館のお仏像もお出ましで、仏像大好きおばちゃんは大興奮であった。

箱根神社の万巻上人像は、側面と背面も拝見できるまたとない機会。襟を立てた平安前期のお像に興奮
箱根神社の神像と六所神社(大磯町)の神像が並ぶのも貴重
・箱根興福院で菩薩像の頭部と説明を受けた、美しいお顔のみ残る破損仏は、箱根権現常行三昧堂阿弥陀如来だった可能性がある旨の解説あり。宝冠阿弥陀如来坐像のありし日のお姿を想像し、興奮を抑えられず
・2020年秋にお堂の前まで行ってみたけど時節柄お会いできなかった朝日観音堂南足柄市)の諸像も
・お会いしたかった日影公民館の阿弥陀如来立像は、薄い側面観に引き込まれた
・中沼薬師堂のご本尊薬師如来坐像はお寺では下から仰ぎ見る感じで、脚部の平安前期感がたまらないと思っていたのだが、本展解説により、全体の作風に合わせて新造したと知ふ
・平安後期の優しい泰翁寺薬師如来立像
・世界中の痛みや苦しみを癒すに違いない保福寺十一面観音菩薩立像。コロナ禍のなか、このお姿を思い浮かべながら、マイケル・ジャクソンのHeal the World を聴いていた。私のzoomのプロフィール画像に、この観音様の微笑みを使わせていただいている。つまりは、大大大好きな観音様。図録の解説がまた盛りだくさんで興味深い。
三嶋神社の本地仏、大きな薬師如来坐像
・本誓寺からは歯吹の阿弥陀如来像と螺髪がコイルで巻いた阿弥陀如来
・松田町延命寺からは薬師如来立像と聖観音菩薩立像という不思議な組み合わせ
・桜観音堂の十一面観音菩薩立像は大きな頭部に大きな化仏が積み上げられる。首から上だけで総身長の三分の一ほどになるのでは
・箱根塔ノ沢の阿弥陀寺からは菩薩面と弾誓上人像
他にも素晴らしい仏像がたくさん…

そんなわけで、予定していた2時間を大幅にオーバー。仏像大好き勢は時間たっぷり取ってお出かけください。

ありがとうtさん

 訃報を聞く。悲しい。

 今年3月、仏像オフ会で、一緒にお昼をいただいたのが最後になってしまった。参加者大勢で貸切った食堂は狭く、窓の向こうは雨で煙っていた。メニューはみんな同じで、大きなアジフライ。そんなざわざわした状況の中でも、彼女の佇まいや話し方には上品さがにじみでていた。この時、彼女から、今年1月に醍醐寺理性院・三宝院の特別公開に行かれたと伺った。美しい快慶仏を見上げる彼女も美しかったに違いない。

 思えば、SNSを通じて、仏像が好きな人たちと知り合うことができた。たかがSNS。しかし、長く続けると、「されどSNS」となる。仏像ブログを18年、仏像Twitterを13年、ゆるゆると続けるなかで、素晴らしい出会いに恵まれてきた。

 だからこそ、お別れはつらい。

 彼女が好きだとおっしゃっていた仏像の写真を添えて、故人を偲びたい。そして、お礼を申し上げたい。ありがとうございました、と。

【兵庫】薬仙寺の観音様ご開帳に伺ったら、薬師如来が平安! しかも、法然上人のご霊跡で、近くの元祖教会に石碑が!

1) 薬仙寺(兵庫県神戸市)

 浄土門時宗の薬仙寺で毎年8月8日と9日に十一面観音像がご開帳されると伺い、お参りした。四万六千日と呼ばれる観音様のお祭りである。
 神戸の薬仙寺は行基創建と伝わる古刹。行基が開き、平清盛が修築した大輪田泊(おおわだのとまり)に近い。ご本尊の薬師如来坐像は平安中期だろうか、古い感じで驚いた。そして、法然上人が讃岐配流の際に滞留されたご霊跡でもあった。

薬仙寺本堂の前に四万六千日の幟が立つ

薬師如来坐像

像高88.7cm 桧の一木造り 重文
薬師如来坐像がおられるとは聞いていた。しかし、内陣中央に坐すこのご本尊を仰ぎ見て、一瞬にしてぶったまげた。襟が立っているし、螺髪は一つ一つが尖ってる。薬仙寺リーフレットを読むと、「肉どりがたっぷりした重厚な作風で貞観彫刻の要素が多い」とあった。やはり、そうですよね。襟が立ってる如来像はやんちゃな番長さんという感じで、大好き。そして、肉髻と地髪の境目が曖昧な感じも気になった。

重厚感ある薬師如来さま
襟が立って、お耳が外にはねている!

十一面観音菩薩立像

像高86.3cm 桧の寄木造り 

 大和長谷寺の観音像を造るにあたり、試し彫りした像だとの伝承がある。長谷試十一面観世音と呼ばれる由縁である。伝承はさておき、弘安元年(1278)11月の銘がある、見事な鎌倉仏である。丸く若々しいご尊顔、全身のプロポーション、美しく流れるような衣文。もう全身の美しさが完璧すぎて、言葉が出ない。四万六千日のご開帳が毎年8月8日と9日に行われる。
 山本勉先生から教えていただいたのだが、寿福寺(神戸市北区)の薬師如来像(建治元年〔1275〕)・阿弥陀如来像(建治4年)と銘記の形式、像の作風・品質構造が酷似することから、同じ仏師の作と考えられているとのこと。(参考資料『日本彫刻史基礎資料集成』鎌倉時代造像銘記篇:薬師如来像は12巻、阿弥陀如来像・十一面観音菩薩像は13巻)。ご教授大変ありがたく、ここで共有する。自分もっと勉強しなければ。

 なお、薬仙寺は沿革は以下のとおり。謂れの多い古刹である。
天平18年(746)行基創建と伝わる古刹。法相宗から9世紀に天台宗へ転じる。
・建永2年(1207)、法然上人が讃岐に配流の際、滞留され、源平合戦の戦死者や近くの和田岬沖水難死者の供養をされた。その時の名号を刻んだ大きな石碑が今も近くの元祖教会に残る。
・元弘3年(1333)、後醍醐天皇隠岐より還幸の途中体調を崩し、薬師如来が出現した当寺の霊水を献納したところ、たちまち快復された。その井戸が本堂前に残る。
・延文元年(1356)、住僧の真如は、時衆国阿が当寺で念仏修行したとき弟子となり、名を直阿と改め、当寺を時宗に改宗して中興開基となる。
文久元年(1861)、イギリス初代公使オールコック一行が兵庫港視察時に薬仙寺に宿泊
・昭和20年3月17日未明の神戸大空襲で経蔵一棟のみ残して、焼失。戦後檀信徒の浄財により復興。
・平成7年1月17日の阪神・淡路大震災により、本堂半壊するほか、客殿庫裏、地蔵堂、経蔵が全壊。檀信徒7割も被災。平成12年に復興。
・1998年、戦災・震災のモニュメントが本堂横に設置される。

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【東京】【多摩仏】いらっしゃいませ 謎の真慈悲寺「仏ゾーン」へ=東京都日野市の重文・阿弥陀如来像と百草観音堂

※4年ぶりのご開帳を祝し、2010年当時の拙ブログ投稿記事を再投稿(ただし、写真のみ差替え)※
※2023年9月17日(日)10-15時に阿弥陀如来さま公開予定!※

阿弥陀如来坐像(百草八幡神社) ※写真は日野市の公開チラシより

訪れた日: 2010年9月19日(日)
訪れた場所: 東京都日野市の百草八幡神社(重文・阿弥陀如来坐像のご開帳)
         百草観音堂(観音さまなどの諸像)

<謎の真慈悲寺と阿弥陀如来坐像>

 2010年9月19日、日野市百草にある八幡神社阿弥陀如来座像(国の重要文化財鎌倉時代)のご開帳に行ってきた。
 八幡神社は、梅の名所、京王百草園に隣接する。その一帯は小高い山になっており、一番高い場所からは、近くを流れる多摩川とその支流の浅川が合流する地点が見える。小説家の田山花袋も感動した眺めだそうだ。
 この一帯には歴史の謎がある。鎌倉幕府の御祈祷所として大きな勢力を誇った台密系の真慈悲寺(しんじひじ)があった場所だと考えられているのだ。しかし、真慈悲寺はおそらく元弘の後、鎌倉幕府の衰退とともに、歴史からきれいに姿を消してしまった。
 江戸時代に入って同じ場所に黄檗宗の松連寺(しょうれんじ)が置かれたが、明治の廃仏毀釈で廃寺となった。地元の豪商が同地を買い取って百草園とし、さらに京王電鉄に売却されて今に至ると聞く。

 東京都日野市では、この幻の寺、真慈悲寺の発掘調査を行っている。そして、毎年、百草の阿弥陀如来坐像のご開帳に合わせて、百草園での講演会と周辺のガイドツアーを開催している。この銅製の阿弥陀如来坐像も、鎌倉時代に源氏に近い人物によって造立されたもので、真慈悲寺の阿弥陀堂にまつられていたと考えられている。

 私がお会いするのは今回で二度目。今回は日野市の企画に参加せず、じっくり阿弥陀さまと向き合うことにした。
 いつまでも阿弥陀さまのそばを離れず、遂には双眼鏡を取り出して、阿弥陀さまを凝視していると、近くにいた男性に話しかけられた。
 写真撮影禁止なのに、怪しげなもの(実際はただの双眼鏡なのだが)で阿弥陀さまをのぞいている怪しい女がいると思われたのかもしれない。
 しかし、偶然かつ幸運なことに、その方は日野市教育委員会の清野氏だった。
 私が「鎌倉大仏さまと印の形が似ていると聞いたのですが、暗くてよく分からなくて…」と言うと、ご自分で印の形をつくって説明してくださった。少しお話をしているうちに、「詳しいですね。仏像が好きなのですか」と聞かれた。はい、大好きです!
 ともかく、専門家から興味深い話をたっぷり伺うことができた。印についてだけでなく、この地域における仏教宗派の流れや、元寇に対する仏教の動きに連携するように真慈悲寺の推定跡地でも瓦が出土すること、鎌倉幕府滅亡直後の1353年の台風で鎌倉大仏高幡不動さまも大きな被害を受けたと考えておられること、多摩地域では14世紀前半で遺跡が途絶えた例が多いことなど。
 清野さんが阿弥陀さまを抱っこしたことがあると聞き、思い切り羨ましがってしまった。銅製だが、さほど重くはなく、人間の赤ちゃんぐらいにすっぽり腕で抱えられる大きさなのだそうだ。
 清野さんのお話と阿弥陀さまの可愛らしさで、すっかり満腹になった。なんともありがたいことだ。

<百草観音堂

 今日の目的はもうひとつある。近くの百草観音堂だ。八幡神社のある山を駅と反対方向に少しだけ下りた場所にある。
 小さなお堂で無人だが、お堂の外からガラス越しにそっとのぞきこむと、観音さま、大日如来さま、阿弥陀さま、僧形像などが浮かびあがり、仏像好きのテンションは必然的に高まる。
 阿弥陀さまご開帳日の八幡神社は人が多いが、ここまで来ると、仏さまと野鳥と私しかいない。私が訪れた日はヒヨドリが群れてピーピー騒いでいた。

<まとめ 日野市が好き!>

 私は日野が好きだ。
 日野市には、高幡不動さまなど、ハートをしびれさせる仏像がいらっしゃる。今回紹介した百草地区は石仏も多く、知られざる「仏ゾーン」だ。
 その一方、多摩川や浅川などの水資源が豊富で、里山も残っており、大好きな野鳥も多い。
 それでいて、東京多摩の大都市、立川と八王子に挟まれた便利な場所にある。
 ミシェラン効果で盛り上がる高尾山の次は、日野ブームが起こるのでは!?
 日野市ブームか…。いやいや。今のまま知られざる「仏ゾーン」であり続けてほしいというのが私の本音かもしれない。

【関連資料】

・百草八幡神社阿弥陀如来さま(過去の公開時のパネル展示を撮影)


・百草観音堂

秘仏観音立像のご開帳は卯年4月のみだが、その他の仏像群はガラス越しに拝観可能)

【滋賀】宗泉寺(野洲市)薬師如来坐像など8月8日に公開

日陽山宗泉寺(滋賀県野洲市/浄土宗)

近江富士と呼ばれる三上山の隣、妙光寺山。その一帯に、古代から中世にかけて、大伽藍を擁する東光寺があった。比叡山との争い(1460)、そして、戦国時代の兵火(1524)を経て廃絶となったが、その仏像が今も、宗泉寺に残る。平安と鎌倉に遡る貴重な尊像で、国の重要文化財にも指定される。宗泉寺に伺ったところ、毎年8月8日に公開されると伺い、お参りした。

【薬師堂】

東光寺に伝来した以下の尊像が宗泉寺の薬師堂に安置される。

木造薬師如来坐像

像高87.0cm 一木造り 平安後期 重文
お椀をひっくり返したような大きな肉髻。細かな螺髪。ふっくらしたお顔。力を抜いてゆったりと坐す。足元の衣文は同心円の弧を描く。正統派の仏師によるのであろうか、美しく穏やかでありながら、堂々としたお姿であられる。

お優しくて堂々とした薬師如来さま

木造不動明王及び両童子立像

不動95.1cm 両童子42.1cm 鎌倉 重文
三井寺の黄不動を写した貴重な彫像。大きな螺髪。下唇を噛んで牙を出す。両目を見開き、睨みつける。

木造毘沙門天立像

像高66.7cm 一木造り 平安 重文
小さいお像ながら、上品で力強く、動きも感じられる。

(なお、2013年、薬師堂の裏手で台風による山崩れがあった。これら仏像は無事だったが、山の復旧工事の間、野洲市立歴史民俗博物館に預けられ、2015年に公開されている)

ネットより拾ってきた画像です

【本堂の阿弥陀如来さま】

さらに、本堂のご本尊阿弥陀如来坐像は、胎内に元亨元季(1321)の墨書がある古像。造立願文には、胎蔵界金剛界の諸尊の種子(梵字)が記され、末尾に薬師如来像として造立されたと書かれている。今は来迎印を結ぶお姿となっているが、野洲市文化財サイトを見ると「木造薬師如来坐像 附造立願文」として市の文化財に指定されているようだ。本堂外陣より拝ませていただいた。薬師堂の薬師如来様よりだいぶ小さめのお像であった。

石灯籠

また、薬師堂の前の一見大変地味な石灯籠は、建久元年(1190)、源頼朝が鎌倉から上洛にあたり近江守護佐々木定綱に寄進させたと伝わり、重要美術品に指定。


最後に、一番大切なこと。宗泉寺に残る貴重な諸像を拝ませていただけたことに心から感謝を申し上げたい。至心合掌。

【拝観案内】

日陽山宗泉寺
〒520-2332 滋賀県野洲市妙光寺234番地
http://otera.jodo.or.jp/temple/28-182/
一般公開は8月8日のみ。それ以外の日は非公開とのことである。ただ、時々地元のツアーに組み込まれていたりするようなので、チェックしてみる価値はあるかと。

【千葉】【展覧会】行元寺の全て@いすみ歴史資料館〜阿弥陀如来様を間近で拝む〜

いすみ市歴史資料館(千葉県)
「波の伊八と密教美術 行元寺の全て」展
2023/4/22-6/25

展覧会チラシ表に秘仏善光寺如来の脇侍さま
展覧会チラシの裏面。阿弥陀様は斜め横からのショット!

1) 最終週にご本尊阿弥陀如来様がお出まし

 行元寺と言えば、葛飾北斎の神奈川沖浪裏に影響を与えたとされる”波の伊八”の彫刻が有名。激しい波に宝珠が乗る欄間彫刻はとても不思議で、私も引き込まれる。しかし、しかし、である。私は、行元寺の本尊阿弥陀如来立像が大好きなのだ。鎌倉時代初期に快慶さんが安阿弥様を確立して一世風靡(!)するのだが、この阿弥陀如来立像はその少し前の時代の雰囲気を伝える貴重な像だと思う。

『南総天台の仏像・仏画 I』より

 この阿弥陀様が、2か月に及ぶ本展会期の最終週に、満を持して、お出ましなのである。6/20から6/25までの6日間のみの限定公開なのである。

 過去に行元寺にお電話で拝観について伺った際、「阿弥陀様ですか? 伊八ではなく?」と聞かれたこの私。いすみ市はとてつもなく遠いのだが、なんとしても行かなければならない。いすみ鉄道だってがんばっているのだし。

 行元寺本堂では、阿弥陀如来様は高い位置におられ、かなり遠くからの拝観となる。双眼鏡か単眼鏡が必携なのだ。しかし、本展覧会では、なんと、なんと、ガラス越しではあるものの、私の目の高さで、私の目の前に立っておられたのであった! 両脇侍である室町の不動明王立像と毘沙門天立像もご一緒にお並びであった!

 展示解説によると、阿弥陀如来像は洗練された定朝様であるものの、厳しめの面貌などから平安末から鎌倉初か、とのこと。こういう造形も構造も洗練された平安後期の仏像は下総にはいくつか例があるが、上総には少ないそうだ。中世に入ってから他所から移された可能性があるとのこと。

 天台宗南総教区研修所の仏像仏画調査も私の知らない間に進んでいて、調査報告書はすでにvol.7まで出版されていた。我が家になかったvol.3以降を歴史資料館で買い込んだ。カバンの中の重みととともに、幸せな気持ちで帰路に着いた。

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2) 拝観できた尊像

展覧会にて、仏像と僧像は一列にお並びだった。以下、展示場の正面左から順に記載する。

善光寺阿弥陀三尊

金銅 鎌倉後期 県指定
阿弥陀51.8cm 観音33.4cm 勢至30.0cm

『南総天台の仏像・仏画 I』より

不動明王立像

ご本尊脇侍 室町

ご本尊阿弥陀如来立像

平安末から鎌倉初期 県指定 97cm 檜の一木造り 

毘沙門天立像

ご本尊脇侍 室町

不動明王立像

厚い色彩のため制作時期の判定は難しいが、平安後期の可能性も。像高71.0cm

僧形像

像高26.1cm。文禄年間(1593-1596)。虫食いの穴が残る。

慈恵大師像

厳重秘仏で、本展で初の寺外公開。本展の事前調査で銘が見つかり、慶長18年(1613)の造立と判明。濃い眉。額と眉間の細かい皺。厳しく凛とした老僧の坐像。像高59.3cm

舜海像

行元寺を再興した舜海法印の坐像。像高44.2cm。天正17年(1589)、鎌倉法眼越中弟子伊勢守の作。市指定

【拝観案内】

行元寺
かつては、土日祝日の10:00から15:30頃まで、伊八の彫刻と本堂の阿弥陀如来さまを公開。ボランティアガイド付きだった。しかし、旧書院の改修に伴い、すべての彫刻は2023年4月から2024年8月までいすみ歴史資料館に寄託。
行元寺-HOME

【参考】

・過去の行元寺参拝ログ
butsuzodiary.hateblo.jp