日陽山宗泉寺(滋賀県野洲市/浄土宗)
近江富士と呼ばれる三上山の隣、妙光寺山。その一帯に、古代から中世にかけて、大伽藍を擁する東光寺があった。比叡山との争い(1460)、そして、戦国時代の兵火(1524)を経て廃絶となったが、その仏像が今も、宗泉寺に残る。平安と鎌倉に遡る貴重な尊像で、国の重要文化財にも指定される。宗泉寺に伺ったところ、毎年8月8日に公開されると伺い、お参りした。
【薬師堂】
東光寺に伝来した以下の尊像が宗泉寺の薬師堂に安置される。
木造薬師如来坐像
像高87.0cm 一木造り 平安後期 重文
お椀をひっくり返したような大きな肉髻。細かな螺髪。ふっくらしたお顔。力を抜いてゆったりと坐す。足元の衣文は同心円の弧を描く。正統派の仏師によるのであろうか、美しく穏やかでありながら、堂々としたお姿であられる。

木造毘沙門天立像
像高66.7cm 一木造り 平安 重文
小さいお像ながら、上品で力強く、動きも感じられる。
(なお、2013年、薬師堂の裏手で台風による山崩れがあった。これら仏像は無事だったが、山の復旧工事の間、野洲市立歴史民俗博物館に預けられ、2015年に公開されている)

【本堂の阿弥陀如来さま】
さらに、本堂のご本尊阿弥陀如来坐像は、胎内に元亨元季(1321)の墨書がある古像。造立願文には、胎蔵界金剛界の諸尊の種子(梵字)が記され、末尾に薬師如来像として造立されたと書かれている。今は来迎印を結ぶお姿となっているが、野洲市の文化財サイトを見ると「木造薬師如来坐像 附造立願文」として市の文化財に指定されているようだ。本堂外陣より拝ませていただいた。薬師堂の薬師如来様よりだいぶ小さめのお像であった。
石灯籠
また、薬師堂の前の一見大変地味な石灯籠は、建久元年(1190)、源頼朝が鎌倉から上洛にあたり近江守護佐々木定綱に寄進させたと伝わり、重要美術品に指定。
最後に、一番大切なこと。宗泉寺に残る貴重な諸像を拝ませていただけたことに心から感謝を申し上げたい。至心合掌。
【拝観案内】
日陽山宗泉寺
〒520-2332 滋賀県野洲市妙光寺234番地
http://otera.jodo.or.jp/temple/28-182/
一般公開は8月8日のみ。それ以外の日は非公開とのことである。ただ、時々地元のツアーに組み込まれていたりするようなので、チェックしてみる価値はあるかと。