ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【千葉】【展覧会】行元寺の全て@いすみ歴史資料館〜阿弥陀如来様を間近で拝む〜

いすみ市歴史資料館(千葉県)
「波の伊八と密教美術 行元寺の全て」展
2023/4/22-6/25

展覧会チラシ表に秘仏善光寺如来の脇侍さま
展覧会チラシの裏面。阿弥陀様は斜め横からのショット!

1) 最終週にご本尊阿弥陀如来様がお出まし

 行元寺と言えば、葛飾北斎の神奈川沖浪裏に影響を与えたとされる”波の伊八”の彫刻が有名。激しい波に宝珠が乗る欄間彫刻はとても不思議で、私も引き込まれる。しかし、しかし、である。私は、行元寺の本尊阿弥陀如来立像が大好きなのだ。鎌倉時代初期に快慶さんが安阿弥様を確立して一世風靡(!)するのだが、この阿弥陀如来立像はその少し前の時代の雰囲気を伝える貴重な像だと思う。

『南総天台の仏像・仏画 I』より

 この阿弥陀様が、2か月に及ぶ本展会期の最終週に、満を持して、お出ましなのである。6/20から6/25までの6日間のみの限定公開なのである。

 過去に行元寺にお電話で拝観について伺った際、「阿弥陀様ですか? 伊八ではなく?」と聞かれたこの私。いすみ市はとてつもなく遠いのだが、なんとしても行かなければならない。いすみ鉄道だってがんばっているのだし。

 行元寺本堂では、阿弥陀如来様は高い位置におられ、かなり遠くからの拝観となる。双眼鏡か単眼鏡が必携なのだ。しかし、本展覧会では、なんと、なんと、ガラス越しではあるものの、私の目の高さで、私の目の前に立っておられたのであった! 両脇侍である室町の不動明王立像と毘沙門天立像もご一緒にお並びであった!

 展示解説によると、阿弥陀如来像は洗練された定朝様であるものの、厳しめの面貌などから平安末から鎌倉初か、とのこと。こういう造形も構造も洗練された平安後期の仏像は下総にはいくつか例があるが、上総には少ないそうだ。中世に入ってから他所から移された可能性があるとのこと。

 天台宗南総教区研修所の仏像仏画調査も私の知らない間に進んでいて、調査報告書はすでにvol.7まで出版されていた。我が家になかったvol.3以降を歴史資料館で買い込んだ。カバンの中の重みととともに、幸せな気持ちで帰路に着いた。

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2) 拝観できた尊像

展覧会にて、仏像と僧像は一列にお並びだった。以下、展示場の正面左から順に記載する。

善光寺阿弥陀三尊

金銅 鎌倉後期 県指定
阿弥陀51.8cm 観音33.4cm 勢至30.0cm

『南総天台の仏像・仏画 I』より

不動明王立像

ご本尊脇侍 室町

ご本尊阿弥陀如来立像

平安末から鎌倉初期 県指定 97cm 檜の一木造り 

毘沙門天立像

ご本尊脇侍 室町

不動明王立像

厚い色彩のため制作時期の判定は難しいが、平安後期の可能性も。像高71.0cm

僧形像

像高26.1cm。文禄年間(1593-1596)。虫食いの穴が残る。

慈恵大師像

厳重秘仏で、本展で初の寺外公開。本展の事前調査で銘が見つかり、慶長18年(1613)の造立と判明。濃い眉。額と眉間の細かい皺。厳しく凛とした老僧の坐像。像高59.3cm

舜海像

行元寺を再興した舜海法印の坐像。像高44.2cm。天正17年(1589)、鎌倉法眼越中弟子伊勢守の作。市指定

【拝観案内】

行元寺
かつては、土日祝日の10:00から15:30頃まで、伊八の彫刻と本堂の阿弥陀如来さまを公開。ボランティアガイド付きだった。しかし、旧書院の改修に伴い、すべての彫刻は2023年4月から2024年8月までいすみ歴史資料館に寄託。
行元寺-HOME

【参考】

・過去の行元寺参拝ログ
butsuzodiary.hateblo.jp