ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【東京】勝國寺(世田谷区)秘仏薬師如来立像と日光菩薩立像~室町時代、吉良氏ゆかりの尊像~

青龍山勝國寺(東京都世田谷区/真言宗豊山派
薬師如来及び両脇侍立像


勝國寺薬師三尊

勝國寺薬師堂にまつられる秘仏薬師三尊を拝観。

勝國寺は室町から桃山時代に世田谷を治めた吉良氏による創建とみられ、中尊薬師如来立像と脇侍日光菩薩立像の制作時期は、1530年に世田谷城が落城した後、吉良頼康による勝國寺中興時(天文末から弘治)を想定する説がある。区の文化財サイトには、頼康に小田原北条氏から嫁いだ室の念持仏だったとある。

薬師如来像(像高53.2cm)頭部が大きく、なで肩で、ずんぐりした体躯が印象的。写真で拝見する以上に優れた造形だと感じた。まるっぽいフォルムでありながら、ご尊顔の表情は複雑。瞳が輝いていて、薬師様の意思のようなものが感じられた。構造的には、体部前面や頭部を正中矧ぎ。体部前面材の下部に、階段状の内刳りがあるが、独特の手法なのだとか。

薬師如来立像は2000年に世田谷区文化財に指定。2005年の解体修理時に、日光菩薩立像(像高28.4cm)も薬師と同時期・同一仏師の作と判断され、2006年に区指定文化財に追加。天正20 年(1592)に修理されたことを示す納入文書あり。現存する月光菩薩は現代の補作で、文化財指定から外れている。

ご開帳は1月の初薬師!

毎年1月12日の初薬師の法要の後、短時間だけご開帳となる。12日が日曜でない場合には、それ以降の最も早い日曜日に行う。法要は13時に始まり、法要の途中で厨子の扉が開かれる。扉がゆっくりと開いて、三尊のシルエットが見えた。開扉の瞬間は感動する。1時間ほどの法要の後、各自順番に堂内にあげていただき、間近で拝観できる。開扉は終日ではない。今後お参りされるなら、時間を確認することをお勧めする。

【参考文献】

・鈴木泉「世田谷・勝國寺木造薬師三尊像再考」(東京家政大学博物館紀要第20集、p137-147、2015)
https://tokyo-kasei.repo.nii.ac.jp/record/10373/files/2015_h_0010.pdf(←PDFです)
・世田谷区の文化財サイト「勝國寺の木造薬師如来及び脇侍日光菩薩立像」
勝國寺の木造薬師如来及び脇侍日光菩薩立像(しょうこくじのもくぞうやくしにょらいおよびわきじにっこうぼさつりゅうぞう) | 世田谷区ホームページ

【写真】

薬師三尊の写真は上記鈴木泉氏の論文より転載。

【拝観案内】

青龍山勝國寺 https://seiryuzan.jp/
住所 世田谷区世田谷4丁目27-4
最寄り駅は東急世田谷線世田谷駅または松陰神社前駅など
本堂本尊は不動明王立像。近くの廃寺におられたという不動明王像を合わせ、合計3躯の不動明王像が並ぶ。