ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【東京】【多摩仏】いらっしゃいませ 謎の真慈悲寺「仏ゾーン」へ=東京都日野市の重文・阿弥陀如来像と百草観音堂

※4年ぶりのご開帳を祝し、2010年当時の拙ブログ投稿記事を再投稿(ただし、写真のみ差替え)※
※2023年9月17日(日)10-15時に阿弥陀如来さま公開予定!※

阿弥陀如来坐像(百草八幡神社) ※写真は日野市の公開チラシより

訪れた日: 2010年9月19日(日)
訪れた場所: 東京都日野市の百草八幡神社(重文・阿弥陀如来坐像のご開帳)
         百草観音堂(観音さまなどの諸像)

<謎の真慈悲寺と阿弥陀如来坐像>

 2010年9月19日、日野市百草にある八幡神社阿弥陀如来座像(国の重要文化財鎌倉時代)のご開帳に行ってきた。
 八幡神社は、梅の名所、京王百草園に隣接する。その一帯は小高い山になっており、一番高い場所からは、近くを流れる多摩川とその支流の浅川が合流する地点が見える。小説家の田山花袋も感動した眺めだそうだ。
 この一帯には歴史の謎がある。鎌倉幕府の御祈祷所として大きな勢力を誇った台密系の真慈悲寺(しんじひじ)があった場所だと考えられているのだ。しかし、真慈悲寺はおそらく元弘の後、鎌倉幕府の衰退とともに、歴史からきれいに姿を消してしまった。
 江戸時代に入って同じ場所に黄檗宗の松連寺(しょうれんじ)が置かれたが、明治の廃仏毀釈で廃寺となった。地元の豪商が同地を買い取って百草園とし、さらに京王電鉄に売却されて今に至ると聞く。

 東京都日野市では、この幻の寺、真慈悲寺の発掘調査を行っている。そして、毎年、百草の阿弥陀如来坐像のご開帳に合わせて、百草園での講演会と周辺のガイドツアーを開催している。この銅製の阿弥陀如来坐像も、鎌倉時代に源氏に近い人物によって造立されたもので、真慈悲寺の阿弥陀堂にまつられていたと考えられている。

 私がお会いするのは今回で二度目。今回は日野市の企画に参加せず、じっくり阿弥陀さまと向き合うことにした。
 いつまでも阿弥陀さまのそばを離れず、遂には双眼鏡を取り出して、阿弥陀さまを凝視していると、近くにいた男性に話しかけられた。
 写真撮影禁止なのに、怪しげなもの(実際はただの双眼鏡なのだが)で阿弥陀さまをのぞいている怪しい女がいると思われたのかもしれない。
 しかし、偶然かつ幸運なことに、その方は日野市教育委員会の清野氏だった。
 私が「鎌倉大仏さまと印の形が似ていると聞いたのですが、暗くてよく分からなくて…」と言うと、ご自分で印の形をつくって説明してくださった。少しお話をしているうちに、「詳しいですね。仏像が好きなのですか」と聞かれた。はい、大好きです!
 ともかく、専門家から興味深い話をたっぷり伺うことができた。印についてだけでなく、この地域における仏教宗派の流れや、元寇に対する仏教の動きに連携するように真慈悲寺の推定跡地でも瓦が出土すること、鎌倉幕府滅亡直後の1353年の台風で鎌倉大仏高幡不動さまも大きな被害を受けたと考えておられること、多摩地域では14世紀前半で遺跡が途絶えた例が多いことなど。
 清野さんが阿弥陀さまを抱っこしたことがあると聞き、思い切り羨ましがってしまった。銅製だが、さほど重くはなく、人間の赤ちゃんぐらいにすっぽり腕で抱えられる大きさなのだそうだ。
 清野さんのお話と阿弥陀さまの可愛らしさで、すっかり満腹になった。なんともありがたいことだ。

<百草観音堂

 今日の目的はもうひとつある。近くの百草観音堂だ。八幡神社のある山を駅と反対方向に少しだけ下りた場所にある。
 小さなお堂で無人だが、お堂の外からガラス越しにそっとのぞきこむと、観音さま、大日如来さま、阿弥陀さま、僧形像などが浮かびあがり、仏像好きのテンションは必然的に高まる。
 阿弥陀さまご開帳日の八幡神社は人が多いが、ここまで来ると、仏さまと野鳥と私しかいない。私が訪れた日はヒヨドリが群れてピーピー騒いでいた。

<まとめ 日野市が好き!>

 私は日野が好きだ。
 日野市には、高幡不動さまなど、ハートをしびれさせる仏像がいらっしゃる。今回紹介した百草地区は石仏も多く、知られざる「仏ゾーン」だ。
 その一方、多摩川や浅川などの水資源が豊富で、里山も残っており、大好きな野鳥も多い。
 それでいて、東京多摩の大都市、立川と八王子に挟まれた便利な場所にある。
 ミシェラン効果で盛り上がる高尾山の次は、日野ブームが起こるのでは!?
 日野市ブームか…。いやいや。今のまま知られざる「仏ゾーン」であり続けてほしいというのが私の本音かもしれない。

【関連資料】

・百草八幡神社阿弥陀如来さま(過去の公開時のパネル展示を撮影)


・百草観音堂

秘仏観音立像のご開帳は卯年4月のみだが、その他の仏像群はガラス越しに拝観可能)