ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【展覧会】京都・南山城展の小さいお像に注目〜和束町薬師寺の薬師如来坐像〜

萬年山勝林寺さんの関連で…
南山城展(11/12まで)に行こう!

右が和束町薬師寺薬師如来坐像。左が蟹満寺の阿弥陀如来坐像。どちらも足を衣でくるむ。豊島区の勝林寺ご本尊様と似ている!
勝林寺ご本尊釈迦如来坐像。許可を得て筆者撮影

萬年山勝林寺(東京都豊島区)のご本尊釈迦如来さまが好きすぎて、最初に調査された清水眞澄先生の論文(『豊島区仏像彫刻調査報告書 豊島区の仏像』(2000年)掲載)を時々読み返す。この論文のなかで、この像と同様に足を衣ですっぽり包む例として、奈良・唐招提寺盧舎那仏坐像(8世紀後半)、大阪・獅子窟寺薬師如来坐像(9世紀後半から10世紀前半)、そして、京都・薬師寺薬師如来坐像(9世紀前半)が挙げられる。
最初の二例は言わずと知れた国宝で、何度か拝観したことがあるのだが、拝観機会が得られなかったのが、京都薬師寺薬師如来坐像だった。

この京都の薬師寺というのは、京都府南部のお茶の産地、和束町にある融通念仏宗のお寺だそうだ。このなかなか拝観できない薬師如来さまがなんと、今、東京国立博物館の「京都・南山城」展にお出ましなのである! ガラスケース越しではあるが、程よい照明のもと、間近で拝観できるのである!!

薬師寺像は平安前期の力強いお像。写真で拝見した限りでは大きなお像と思っていたのだが、実際にお会いすると、勝林寺ご本尊と同じぐらいの像高で驚いた。どちらもそんなに大きくはないが、大きく見えるのである。そして、もちろん、清水眞澄先生のおっしゃる通り、勝林寺ご本尊と同様に、足を衣でくるりと包み込んでおられた。
清水先生は「(勝林寺本尊の)小さめの鼻と口をもち、その口の両端をわずかに締めた感じ」も薬師寺像と似ていると書いておられた。ただ、薬師寺像が厳しめの印象なのに対し、勝林寺ご本尊様はにこやかに微笑んでおられるので、ご尊顔の全体的な印象は違うように私は感じた。(ちなみに、勝林寺ご本尊のご尊顔については、金沢文庫の瀬谷先生が元興寺薬師如来に似ていると書いておられ、私はその説に賛成である)
つまりは、この二つのお仏像は、双子とは言えないものの、そっくりのきょうだいのお像のように感じられるのである。 
ついては、勝林寺にご縁のある方々はもちろんのこと、そうでない方々すべてにもぜひ、南山城展でこの薬師寺像をご拝観いただきたい。仏像好きのこのおばちゃんはそう一人静かにつぶやく昨今なのである…。

【追記】
なお、この薬師寺薬師如来坐像は今夏の奈良国立博物館「聖地・南山城」展にもお出ましで、私はそこで初めて拝観した。奈良の展覧会では、蟹満寺阿弥陀如来坐像とお並びであった。その真ん中に、勝林寺のご本尊様がおられるところを想像したのは、私だけだったかも。ちなみに、蟹満寺阿弥陀如来坐像についても、清水先生は同論文で言及されている。