ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【埼玉】保寧寺(加須市)宗慶の阿弥陀三尊像

 埼玉県加須市・保寧寺(臨済宗妙心寺派)。仏師宗慶による阿弥陀三尊を間近で拝観しました。阿弥陀三尊は、美しい境内の奥、阿弥陀堂にまつられていました。金沢文庫の運慶展(2018年)でお会いしたのですが、お堂でお会いするのは格別です。堂内の壁のタイルと静かな照明が三尊をさらに引き立てていました。

阿弥陀三尊(1196年、重要文化財

 阿弥陀如来坐像 87.4cm
 観音菩薩立像 105.5cm
 勢至菩薩立像 93.6cm
f:id:butsuzodiary:20190212073606j:plain

宗慶とは

 阿弥陀三尊を手がけたのは仏師宗慶。宗慶は、康慶の地蔵菩薩坐像(1177年、静岡県富士市・瑞林寺)の小仏師として参加したことがわかっています。康慶の弟子であり、運慶とは兄弟弟子の関係だったと考えられます。

阿弥陀如来坐像

 お顔や体に張りがあり、むちっとしています。阿弥陀の上印を結んでいます。
 この阿弥陀さまの特徴は、まるでリクライニングシートに座っているかのように、上半身が後ろに傾いていること。こういう態勢でいたら、きっと腰が痛くなるだろうなと心配になります。
f:id:butsuzodiary:20190212073304j:plain
(↑金沢文庫2018年運慶展の図録より)

観音勢至菩薩立像

f:id:butsuzodiary:20190212073652j:plain
 こちらもむちむちしてるように思いますが、衣文は穏やかかつ上品にまとまっています。肥後定慶のような極端にヒラヒラしたのも好きですが、この日の私には、このくらいの保守的な感じがしっくりきました。

不動三尊が脇仏だった?

 保寧寺のこの阿弥陀三尊は、2018年の金沢文庫の運慶展に出展されていたのですが、この展覧会では、保寧寺に元々あったとされる不動明王と両脇侍像も出展されていました。この不動三尊は現在は個人蔵となっています。
f:id:butsuzodiary:20190212080441j:plain
(↑金沢文庫2018年運慶展の図録より)
 図録の説明によると、宗慶の阿弥陀三尊の脇仏として制作されたのではないか、とのこと。しかも、毘沙門天もおられたのではないかと。
 阿弥陀三尊を見上げながら、神奈川県横須賀市の浄楽寺の阿弥陀三尊(運慶)を思い出していたのですが、こちらも阿弥陀三尊と不動明王立像と毘沙門天立像が伝わっています。お姿が似ているだけでなく、尊像の組み合わせも似ていた可能性があるようです。浄楽寺の不動明王は単体の立像ですし、中尊の阿弥陀さまも来迎印なので、まったく同じとは言えませんが、大変興味深く思いました。こういう話に興奮してしまいます!

拝観情報

 保寧寺は東武伊勢崎線加須駅から2キロほど。時々ですがバスも出ています。
 阿弥陀三尊は境内の奥の阿弥陀堂にまつられています。この阿弥陀堂の正面の扉の上部がガラス張りになっており、扉の外にあるスイッチを付けると、堂内に温かな照明がともり、阿弥陀三尊のお姿がほんのりと浮かび上がります。今回は仏像リンクさんのオフ会で出かけたので、阿弥陀堂内に入らせていただくことができました。また機会があれば、お参りしたいです。