(2017年2月の拝観記録です)
埼玉県熊谷市で、修理が終わった愛染堂の縁日にお参りしてきました。温かなコミュニティに支えられた、とても素敵な空間でした。
江戸時代の150センチの大きな愛染明王さま。お堂の修復が終わり、お堂にお戻りの際には、地元の方々に引っ張られて遷座されたそうです。愛されるお仏像は素敵です!
<愛染明王坐像>
愛染堂のご本尊、愛染明王さまは像高150センチ、台座を含めると240センチ。かなり大きさがありながら、三目六臂の異形がうまくまとまっており、仏師の力量が伺えます。
赤い六本の腕は、さわると温かくて弾力を感じるのではないか…と、思えるほど…。基本的に恐ろしいお姿なのに、温かさを感じました。
また、あの細い線で描かれた髪の毛を見ると、仏師は慶派好きなのかな…と思ったりします。
江戸初期の作と推定されていますが、調査したらもっと遡る可能性もあると伺いました。
<仏像の保存とは>
お堂の隣に、畳敷きの小さな自治会館があり、仏像修理の牧野隆夫先生の講演会が開かれました。仏像を"文化財" として保存することはもちろん大切です。しかし、保存が唯一の目的になってしまって、衆生から切り離すようなやり方は本末転倒なのでは…と考えさせる内容でした。
地方の古仏を訪ね歩いていると、今後の保存が心配になることがあります。少子高齢化や地方の衰退など、個人の力ではどうにもできない問題を感じます。コミュニティが力を合わせ、地元の大学生や小学生まで巻き込んで愛染堂を復活させたこちらの事例は、他の地域の参考になるのではないでしょうか。修理を終えたお堂に愛染明王像を遷座する際、地元の人々がお練りで引っぱって移動したという話にはほろりとしました。
熊谷といえば、利根川の向こう側(群馬)の光恩寺さま(鎌倉時代の阿弥陀三尊)をお参りするために先月立ち寄ったばかりです。利根川のこちら側(つまり熊谷市)には、妻沼の国宝聖天堂もあり、昨日、初めてお参りできました。熊谷というか、利根川を挟んだ両地域の歴史的文化の高さを感じました。