ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

2017年11月の仏像拝観リスト

 11月はとにかくたくさんの仏像さまにお会いしすぎてしまい、その感動のすべてを表すことができずにいます。
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(↑兵庫県赤穂市の普門寺)
 まず、たった1枚の出展リスト(「島根の仏像」展)が素晴らしすぎて、姫路のオフ会の前日にぶつけて急きょ出雲まで行きました。これが平安仏のパワーに満ちあふれていて、とにかくすごすぎました。会場に4時間滞在したあと、出雲市内の大寺薬師(万福寺)へ。出展されなかった菩薩立像4躯の素晴らしさと管理人の優しさはきっといつまでも忘れられないでしょう。たった1日の滞在にしては濃すぎる旅でした。
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(↑出雲市の大寺薬師)
 その翌日からの仏像リンクさんの播州仏ツアーは、仏像のチョイスがすごすぎました。阿弥陀さまの追っかけで兵庫は何度か訪れていますが、それでも斑鳩寺以外はすべて、初めてお参りするお寺でした。播州清水寺のご開帳と楊柳寺の秘仏は特に心に残っています。
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(↑姫路の龍門寺)
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(↑書写山の奥院、弥勒寺)
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(↑姫路の蓮華寺
 さらに、23日の祝日に、愛知の蒲郡から静岡の浜松まで、仏友さんに連れて行っていただきました。海沿いの歴史のある地域に、見事な古仏が残されていました。
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(↑御堂山観音堂)
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(↑三河国分寺)
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(↑赤岩寺)
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(↑摩訶耶寺)
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(↑摩訶耶寺)



前置きが長くなりましたが、以下が拝観リストです。

11月3日
島根県出雲市
出雲大社
○古代出雲歴史博物館「島根の仏像ー平安時代のほとけ・人・祈りー」
○大寺薬師(万福寺)
四菩薩立像ほか

11月4日
仏像リンク
兵庫県

赤穂市・普門寺(天台宗) 千手観音坐像
平安前期~中期か。像高104.5センチ。一木造り。

たつの市・見性寺 毘沙門天立像
平安後期。クスノキ一木造り。穏やか。旧国宝で現重文。左手と岩座が後補。

姫路市・龍門寺(妙心寺派)
県指定釈迦如来坐像(禅堂) 定朝様。体部厚い。面相厳しい。衣紋の数が多くしのぎ立つなど、鎌倉時代へ。向かう兆しをみせる。
県指定千手観音立像(寺宝館) 
県指定聖観音立像(観音堂本尊) 平安後期。肉厚だが、表現穏やか
法蔵菩薩(寺宝館)

太子町・斑鳩寺(天台宗
 収蔵庫 重文日光月光、重文十二神将8体、菩薩面
 本堂(大講堂)薬師、釈迦、如意輪観音、いずれも丈六の秘仏
 聖徳殿奥殿 植髪聖徳太子孝養像

たつの市・井上(いのかみ)観音堂 市指定 十一面観音像 秘仏 自治会管理。一木造り、103.9センチ。

たつの市・中井観音堂 十一面観音立像


11月5日

姫路市・随願寺
 重文 毘沙門天、県指定薬師如来
姫路市・弥勒寺/弥勒菩薩 秘仏

姫路市書写山奥の院、弥勒寺。
平安の弥勒三尊が美しい!
中尊弥勒仏に長保元年(999年)の銘があるそう。

お堂の裏手に大きな布袋さま。お胸の賽銭箱にコインを投げ入れます。私は一回で見事に命中!

姫路市蓮華寺
十一面観音坐像
一木造り。122.5㎝。内刳りなし。10世紀頃。

加東市播州清水寺
 根本中堂ご本尊十一面観音立像(139 センチ、市文化財)のご開帳。30年ぶり。仙道上人が平安末期にヒノキから彫りだしたと伝わる。同じお厨子の中、向かって右に毘沙門天立像(69 センチ)、左に吉祥天立像(62センチ)。吉祥天さまが童女のような清らかさ。ご開帳のお厨子の外に、白鳳の銅像菩薩立像。
 ご開帳は2017年11月1日~30日まで。

多可郡多可町 柳山楊柳寺
本堂
 秘仏本尊 木造楊柳観音立像(182.2 センチ、町指定文化財)。平安(井上正先生が7世紀後半の可能性も指摘されたとか)
 秘仏 木造十一面観音立像(甲)125.3センチ、平安、県指定
 秘仏 木造十一面観音立像(乙)116.0センチ、平安、県指定
 秘仏 木造十一面観音立像(丙)108.0センチ、平安、県指定
甲は平安前期に特有の衣の深いうねりと顔の厳しい表情を示しながらも、衣の表現の一部に形式的な面もあり、平安中期か。

奥の院
 中尊 千手観音立像(179センチ平安)
 向かって右に兜跋毘沙門天立像(150センチ、平安、県指定。地天の上に立つ)
 向かって左に木造多聞天立像(135センチ、平安、県指定)
本堂もすでに山の中腹なのに、そこからさらに山上の奥の院へ。316メートル、片道10分ほどをぜいぜい言いながら登る。奥の院の千手観音立像がとにかく感動。

三木市伽耶
 重文 毘沙門天立像 平安後期の造立当初の彩色が残る。平安中期に遡るとされる不動明王立像

神戸市・無動寺
 重文 大日如来坐像 2.7m ヒノキ一木
 重文 釈迦如来坐像 1.2 m ヒノキ一木
 重文 阿弥陀如来坐像 1.2 m 杉の一木
 重文 不動明王坐像 84cm ヒノキ寄木
 重文 十一面観音立像 1.5m ヒノキ一木
 県文化財 阿弥陀如来坐像 1.2m ヒノキ寄木
 すべて平安時代

11月11日
東京都品川区
○専長寺・阿弥陀三尊 平安後期
 山本勉先生とゼミ生にご案内いただく

11月18日
東京都上野
○上野大仏
○トーハク「運慶展」2回目
静岡瑞林寺の地蔵菩薩坐像
○トーハク「フランス人間国宝」展

11月23日
愛知県
○某寺・愛染明王坐像

蒲郡市
○御堂山観音堂
十一面観音立像
 172 .5cm 寄木 平安後期 県指定

豊川市
三河国分寺
薬師如来坐像

豊川市
○桜ヶ丘ミュージアム
阿弥陀如来坐像(財賀寺より寄託)

豊橋市
○赤岩寺
愛染明王坐像  
 重文 桧寄木 95.7cm 小さい愛染明王104躯が頭部に
勝軍地蔵菩薩愛宕権現社)

静岡県浜松市
○摩訶耶寺
千手観音立像 重文
不動明王坐像 重文
愛染明王坐像
阿弥陀如来坐像 県指定

静岡県浜松市
○岩水寺
 秘仏地蔵菩薩立像(重文 1217年 運覚 165.3センチ 桧寄木着物を着てらした)
 
11月25日
東京
○「The Best of 渡仁 1972 -2017」(高円寺)
○トーハク「運慶」展 3回目

法然上人二十五霊場を成満しました

2017. 10. 14の日記より

法然上人二十五霊場をやっと成満しました。
安堵しております!
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最後にお参りしたのが、比叡山黒谷の青龍寺でした。法然さまが18歳から43歳まで修行された聖地です。比叡山でもここまで来ると他に参拝者がおらず、ご住職としばらくお話させていただきました。
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(黒谷青龍寺のお堂の前に法然さまのお像)
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青龍寺経堂の阿弥陀三尊。翌週の台風で経堂が被害に受けたと聞き、心配しています)
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青龍寺の前の石仏)

さらに、比叡山東塔へ移動し、上人が得度された場所もお参りしました。今は、法然堂と呼ばれるお堂が立っています。このお堂に入ると、偶然にも、新米のお坊様がお経の練習をされておりました。遠方から個人的に来られたのだそうです。
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上人さま得度の場所で、新米のお坊様がお唱えされる一枚起請文を聴く…。もう奇跡の瞬間としか言えません!
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(このお坊様とご一緒にお茶をいただきました。法然堂のご住職さま、ありがとうございました)

比叡山の中でもこの2か寺は浄土宗が管理されているそうです。法然さまが過ごされた場所が今も生き続けていることに感動します。

発願から成満まで3年かかりました。法然さまの足跡をめぐる旅に大きく助けられたと思っています。智者のふるまいをせず、ただ一向に念仏すべし。上人さまのこの言葉を胸に抱いています。

2017年10月の仏像拝観リスト

2017年10月は二十五菩薩来迎会のため会津へ。
また、法然巡礼の締めくくりとして、滋賀・比叡山の黒谷青龍寺へ。法然上人二十五霊場比叡山で締めくくることができ、感動もひとしおでした。最後にとてもよいお参りができ、仏友さんやお寺さまに感謝しきれません。
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10月07日

仏都会津
勝常寺
○恵隆寺立木観音
西会津町の鳥追観音
○柳津虚空蔵

10月08日
喜多方市
○新宮熊野神社
○願成寺 二十五菩薩練供養

10月14日
滋賀県
比叡山延暦寺
○黒谷青龍寺法然霊場を成満!)
○西塔釈迦堂のご開帳、最澄霊廟
○東塔根本中堂、法然堂(法然上人得度の場所)、国宝館(仏像素晴らしすぎ)

10月15日
滋賀県
近江八幡市
長光寺・ご開帳(ご本尊千手観音立像)

滋賀県長浜市
「観音の里ふるさとまつり2017」
○竹蓮寺
○西野薬師堂
○正妙寺
○横山神社
○安念寺(いも観音)
○黒田観音寺
○西光寺
○尾山釈迦堂
○保延寺観音堂
○保延寺阿弥陀堂
○雨森観音寺
○柏原阿弥陀堂
○渡岸寺(本堂のみ)

10月31日
東京都八王子市
○龍見寺(大日如来ご開帳)

2017年9月の仏像拝観リスト

秋分の日に、巾着田曼珠沙華を見てから、聖天院と高麗神社へ。武蔵国高麗郡への日帰り旅。お散歩と歴史の勉強で、疲れきった心身を立て直しました。日本と朝鮮半島の古代史を勉強し直したい。

藝大美術館の「シルクロード特別企画展 素心伝心 クローン文化財 失われた刻の再生」展は、想像した以上に充実した展示でした。法隆寺金堂の釈迦三尊は3D技術を利用したうえ、藝大の文化財修復のスキルも導入。欠失部分を補い、壁画と合わせて、立体的に展示。現地とは異なる感動の空間がありました。
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9月15日
東京・九品仏浄真寺

9月17日
東京・びわ湖長浜KANNON HOUSE (川並地蔵堂の聖観音立像)

9月21日
東京・満願寺(一言地蔵菩薩立像、時代不明、江戸以降かな?)

9月23日
埼玉県
巾着田
○高麗郷民俗資料館
○聖天院
○高麗神社

9月30日
東京・上野
○びわ湖長浜KANNON HOUSE (南郷町 聖観音菩薩立像)
○東京藝大美術館
シルクロード特別企画展 素心伝心 クローン文化財 失われた刻の再生」
○東京藝大美術館
「台湾文化を後世に伝える―日本との違い」
東京国立博物館「運慶」展

2017年8月の仏像拝観リスト

2017年8月のハイライトは、観音さまの千日参りのご開帳で、岐阜の慈恩寺三重県桑名の勧学寺、鈴鹿の林光寺の千手観音をお参りできたこと。鈴鹿の林光寺は毎年8月9日の深夜のみのご開帳。
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翌日、滋賀県草津市まで移動し、宝光寺の薬師如来さまのご開帳へ。厨子の中に込められた霊力を放出しているように感じられ、腰が抜けました。

法然巡礼の和歌山の札所は、バスの便などにより気分的には一番遠い札所でしたが、お寺のおばあさまにお迎えいただき、ただただ感謝。

奈良の東大寺の大仏殿夜間拝観。参拝者みんなで般若心経をお唱えしながら大仏さまの周りをまわる。とにかく美しい。とにかく泣けた。


8月6日
長野県諏訪市
○仏法紹隆寺・普賢菩薩騎象像、運慶風の不動明王立像

8月9日
観音さまの千日参り
岐阜市
慈恩寺秘仏千手観音坐像(清水寺式)(平安、重文)
○岐阜大仏
三重県桑名市
○勧学寺・秘仏千手観音立像(平安、県指定)
三重県
○林光寺・秘仏千手観音立像(平安、重文)深夜のみの御開帳

8月10日
滋賀県草津市
○蓮海寺・地蔵菩薩立像(鎌倉 162センチ)
○橘観音堂・三面六臂の観音立像
○宝光寺・秘仏薬師如来立像、観音菩薩立像

8月11日
和歌山県和歌山市
報恩講寺・法然上人像、阿弥陀如来坐像(市指定)
大阪
○ハルカス美「奈良西大寺」展 

8月12日
奈良博の極楽かき氷→穀雨→大仏プリン本店(奈良充!)

8月13日
奈良国立博物館源信」展
 高雄寺の観音立像、東大寺知足院の春日地蔵菩薩
東大寺夜間拝観(大仏殿での夜間の法要が感動的)

8月14日
奈良市円成寺(運慶大日如来、本堂の平安前期の観音立像など)
奈良市薬師寺(新しい食堂を拝観)
大和郡山市・洞泉寺(阿弥陀三尊!)
奈良市・伝香寺(善円の地蔵菩薩立像)
春日大社・中元万燈籠

8月15日
○京都・知恩院・一枚起請文の写経をして勢至堂お参り 勢至菩薩坐像(重文、鎌倉)を間近で拝観

8月19日
山梨県富士河口湖町円通寺 境内お散歩のみ

大船観音寺の木造聖観音菩薩立像

 2018年1月1日。世田谷の元旦ご開帳(宇奈根・観音寺)のあと、さらに平安仏を拝もうと、鎌倉市大船観音寺へ。

 大船駅から見える巨大な白衣観音様が有名な大船観音寺ですが、平安後期の美しい木造の観音さまもおられます。
 白衣観音様のおられる場所から寺務所へ下る道の途中に、慈光堂という小さなお堂があります。このお堂のご本尊が平安後期の麗しい聖観音さまです。普段は秘仏ですが、正月三が日にはお厨子の扉が開かれると知り、出かけてきました…。

 覚悟はしていったのですが…、

 堂外からガラス越しの拝観で、お姿は正直よく見えませんでした!

 残念無念!!


 こんなに美しい観音さまなのです。いつか近くで拝ませていただきたいです。
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※写真は2016年の展覧会「禅の心とかたち 総持寺の至宝」の図録から。
 この展覧会は見にいったはずなのですが、こちらの観音さまに見覚えがないのです。見仏人失格です。お正月から反省しきりです。

 駅から見える大きくて真っ白な大船観音さま。青空に映えますねっ! 
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 帰りに鎌倉に寄り、宝戒寺へ。
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 地蔵菩薩さまと梵天帝釈天の両脇侍の前でしばらく座ってきました。
 宝戒寺は、鎌倉幕府第9代執権北条義時の霊を慰めるため、後醍醐天皇足利尊氏に命じて建立された寺です。
 ご本尊地蔵菩薩坐像が静かで厳しいお姿なのは、そのためでしょう。

世田谷区の平安仏(宇奈根・観音寺の十一面観音立像)

新年あけましておめでとうございます。
元旦にご開帳となる都内の平安仏を拝んできました。

世田谷区宇奈根の観音寺のご本尊十一面観音立像さまです。
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(写真は世田谷区のサイトより。明古堂撮影)

桧一木造り、像高95.6センチ。修復の手が多く入っているようですが、平安後期の作と考えられ、彫りが薄く穏やかです。世田谷区の文化財に指定されています。

やや遠目からの拝観でしたが、横浜の西方寺の十一面観音立像を想起させるお姿だと思いました。どちらも修復が明古堂さんなので、その影響もあるかもしれません。
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(↑世田谷区教育委員会のこの看板には「平安時代末期から鎌倉時代初期」とありますが、世田谷区のホームページには「平安後期」と記載されています…)


【お寺さま住所】
東京都世田谷区宇奈根2-24-2
小田急成城学園前田園都市線二子玉川駅などからバスあり。
※康円の不動明王八大童子像のある世田谷観音寺(世田谷区下馬)とは別のお寺です。
【拝観情報】
通常は非公開。元旦と8月1日のみご開帳。
【観音寺縁起】
観音寺の創建は永正年間(1504~21)で、開山は川越喜多院の第14世実海僧正であると伝えられています。もとは小田原にあって圓正寺と称していましたが、兵火のために延焼し、再興の際「圓正」と「延焼」の同音をきらい、寺名を観音寺に改めたといいます。また、一説には本尊が十一面観音であることから観音寺としたとも言われています。
(世田谷区文化財サイトより引用)

2017年7月仏像拝観記録

仏友さんたちと2日にわたり岐阜から静岡までただひたすら仏像を拝観しました。もうただただ楽しい! 薬王寺の圧倒的な仏像空間と正養寺の秘仏観音立像に完全に心を奪われました。玖延寺の薬師如来立像は不思議でした。
お寺さま、管理者の皆様、大変お世話になりました。企画してくださったMさん、同行してくださった皆さま、ありがとうございました! 
その後、護国寺の四万六千日や都内の展覧会へ。

7月8日

岐阜県可児市

龍泉寺 臨済宗妙心寺派 
【本堂】
阿弥陀如来坐像(市文)平安 88.6㎝ 金箔後補
十一面観音立像(市文)室町 92.5㎝
十一面観音立像(市文)江戸 119.4㎝
不動明王立像(市文) 江戸 66.6㎝
天部立像(市文) 江戸 68.4㎝

薬王寺 天台宗 
4月21日と毎月8日午前中のみ開扉
【本堂】
薬師如来坐像(県文)頭部:平安 その他:江戸 266㎝
釈迦如来坐像(市文)江戸 214.5㎝
阿弥陀如来坐像(市文)面部:平安 その他:江戸 207.5㎝
持国天立像(県文)平安 175.3㎝
増長天立像(市文)平安 171.2㎝
日光菩薩立像(市文)江戸 172.5㎝
月光菩薩立像(市文)江戸 171.6㎝
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岐阜県八百津町

○東光寺 高野山真言宗 
7年に1度の秘仏
【観音堂】
十一面観音立像(町文)平安中期 87.5㎝
【薬師堂】
薬師如来坐像(県文)平安 105㎝
十二神将像 近世

岐阜県御嵩町
○願興寺(蟹薬師) 天台宗 

本尊薬師如来坐像(重文)鎌倉初期 163㎝ (秘仏のため不可)
日光菩薩立像(重文)平安末期 197㎝
月光菩薩立像(重文)平安末期 197㎝
四天王像(重文)平安 約242㎝
十二神将像(重文)平安 約114㎝
釈迦如来・普賢・文殊菩薩坐像 (重文)釈迦如来坐像76㎝
阿弥陀如来坐像(重文)鎌倉初期 82㎝
阿弥陀如来立像(重文)平安末期 164㎝ 運慶作伝承
恵比寿立像(町文)
長岡十一面観音立像(町文)

愛知県岡崎市
○瀧山寺 天台宗

【本堂】
本尊薬師如来坐像 秘仏・・・次回は平成50年予定
日光月光菩薩(市文)
十二神将立像(市文)鎌倉
毘沙門天立像 平安後期
不動明王坐像(市文) 平安後期

東照宮

【宝物殿】
聖観音菩薩立像(重文)鎌倉初期 運慶 174.4㎝
梵天立像(重文)鎌倉初期 運慶 106.5㎝
帝釈天立像(重文)鎌倉初期 運慶 104.9㎝
菩薩面(県文)
木造狛犬(県文)
十一面観音立像(市文)48.8㎝
天台大師坐像(市文)平安後期
慈恵大師坐像(市文) 鎌倉後期
弁財天坐像(市文)
不動明王坐像(市文)
刀八毘沙門天

7月9日

愛知県豊川市

○財賀寺 高野山真言宗
【仁王門】
金剛力士立像(重文)平安 阿形381㎝ 吽形375.1㎝・・・ライトアップ拝観
【本堂】
本尊厨子(重文)本尊千手観音は秘仏 お前立像あり
宝冠阿弥陀如来坐像(県文)平安 87.5㎝
二十八部衆像(市文)

文殊堂】
五大明王像(市文) 
地蔵菩薩立像(市文)81㎝

愛知県新城市

○正養寺 曹洞宗
【本堂】
十一面観音立像(県文)平安後期 106㎝
50年に1度の秘仏:前回2008年3月(今回特別開帳)
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○林光寺 曹洞宗 愛知県新城市
アスナロ材の平安の薬師様
【収蔵庫】
阿弥陀如来坐像(重文)平安後期1171年 頼与作 130㎝:旧大脇寺本尊 目の薬師
十二神将
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愛知県新城市

熊野神社
【収蔵庫】
阿弥陀如来坐像(重文)鎌倉1244年 行慶作 88.8㎝
聖観音菩薩坐像(重文)鎌倉1250年 鏡慶作 79㎝
不動明王立像(県文)鎌倉 99㎝
懸仏 阿弥陀如来・千手観音・薬師如来3体(県文)鎌倉 円径36㎝
四天王像(市文)天平~江戸 後補あり 109㎝~134㎝
北条時頼坐像(市文)鎌倉 104㎝
白衣観音像(市文)江戸 円空仏 10.5㎝


静岡県浜松市

○玖延寺 曹洞宗
【本堂】
本尊 釈迦三尊像
阿弥陀如来坐像(市文)藤末鎌初 44.2㎝
【薬師堂】
薬師如来立像(市文)平安 130㎝(丸山仏)
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静岡県袋井市

○西楽寺 高野山真言宗
【本堂】
阿弥陀如来坐像(県文)平安末期 53.9㎝
観音・勢至菩薩坐像(県文) 脇侍 平安末期 43.4㎝ 48.1㎝
四天王像
お前立 阿弥陀如来立像
愛染明王坐像
【薬師堂】
薬師如来坐像(県文)平安後期 84㎝
日光・月光菩薩立像 平安後期
【本坊】
不動明王立像(市文)江戸1710年 129㎝
菩薩坐像・不動明王坐像など

7月10日
東京
護国寺 四万六千日

7月15日
ヴァージニア・リー・バートンのちいさいおうち展(竹中工務店

長浜観音ハウス(西浅井町聖観音立像)
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三井記念美術館「地獄絵ワンダーランド」展
(奈良の當麻寺からお出ましの閻魔・司命司録像が印象に残りました。1559年、源三郎作。水木しげるの地獄絵は迫力ありすぎ。最後の中将姫さまのお軸。来迎して極楽に帰って行く阿弥陀さまご一行のお姿が、中将姫さまの背後に、金色の線で描かれていた)

トーハク「タイの仏像」展(横浜の三会寺のタイ仏がニ尊お出まし。しばらく前に、本堂で拝ませていただいたことがあり、びっくりしたし、懐かしかった)
 
7月某日
上智大学カンボジアの仏像のレプリカ
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2017年6月の仏像拝観リスト

奈良の大和郡山で矢田寺と東明寺を拝観でき、感涙。矢田寺の地蔵縁起がたまらなく好き。東明寺の平安前期の薬師さまは力強い。

調布の仏像巡りも楽しかった。西光寺の三十三身像は鎌倉の慶派を意識しているのが胸を打つ。常楽院の来迎阿弥陀三尊は美しく、半身如来で半身が鬼のお像は泣けた。

6月7日
奈良西大寺展(三井記念美術館
 2回目。浄瑠璃寺の吉祥天さま

6月11日
奈良県大和郡山市
○矢田寺ご開帳
  平安の地蔵菩薩立像
  奈良時代の十一面観音
  宿院派の吉祥天立像
  試みの地蔵菩薩立像
  阿弥陀如来坐像
  矢田寺地蔵縁起の絵解き
  閻魔堂の諸像
○矢田寺の門前でよもぎ
○山道を歩いて東明寺へ
○東明寺のご開帳
 平安初期の薬師如来坐像
 吉祥天立像
 毘沙門天立像
○田植えしたばかりの田んぼ!
○矢田坐久志玉比古神社
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6月18日

東京都調布市

西光寺
 観音三十三身像(市指定)
 元三慈恵大師像など
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常楽院
 江戸六阿弥陀第5番 (来迎阿弥陀三尊)
 半身如来で半身鬼さんの像
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深大寺
 本堂の宝冠阿弥陀如来坐像(市指定)
 国宝釈迦如来椅像
 レプリカのあいたた観音と香薬師さま

※水野敬三郎先生の講演会を受講
 深大寺の白鳳仏は渡来人(武蔵国高麗郡の高倉福信)が関わっていたのではとの仮説を伺いました。

1983年の図録「浄土曼荼羅」に興奮!!

「浄土曼荼羅~極楽浄土と来迎のロマン~」
1983年、奈良国立博物館の図録を古本屋さんで発見しました! あまりに大好きなテーマで、涙なしにページをめくれません!
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今年の奈良の快慶展と源信展でお会いした仏像もいくつか出展されていました。
今も昔もみんな阿弥陀さまが大好きなのですね!!

83年のこの展覧会では、数年前に浄土宗の所蔵となった阿弥陀如来立像が、まだ滋賀の玉桂寺の名前で出展されていました(涙)。「一番好きな仏像は?」と聞かれたとき、最初に頭に浮かぶ阿弥陀さまです。

しかも、遣迎院から釈迦阿弥陀の二尊がお出ましでした。快慶展では阿弥陀さまだけでしたね…(泣)。
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さらに、當麻寺の菩薩面や即成院の菩薩像も。

四天王寺阿弥陀三尊も古い例として紹介されています。こちらも今年の「木×仏像」展でお会いしたように記憶しています。

そして、図録の後半には、浄土曼荼羅の図版が果てしなく続くのです…!

(三十年前に「ロマン」という言葉がこういう文脈で、しかもカタカナで使われていたことも驚きです)

らかん仏教文化講座「近代彫刻としての仏像」

目黒の五百羅漢寺で、「らかん仏教講座・近代彫刻としての仏像」を聴講。

講師の藤井明先生は、2008年に東京小平市平櫛田中美術館で開催された「仏像インスピレーション」(注※)を企画された学芸員。この展覧会、私は駅のポスターで知って心惹かれ、観に行った記憶があります。日本の近代彫刻の中に仏像のDNAがあることを教えてくれる内容でした。大変稀少で興味深い展覧会でした。

それから9年。藤井先生のお話を伺おうと目黒まで出かけてきました。
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レクチャーは明治以降の彫刻家を五つのグループに分けて、仏像との関わりを分析する内容でした。

第1グループの筆頭は、元々仏師だった高村光雲1893年、シカゴ万博に高村光雲が老猿を竹内久一が伎芸天を出展。光雲が絶賛されたのに対し、久一の仏像はまったく評価されなかった。そのトラウマのせいで、光雲などは仏像とそれ以外の彫刻を分かて考え、仏像は制作するのだが、美術として展覧会には出展しなくなったという説明でした。

第2グループの平櫛田中は日本と西洋の美術で相容れないと考えていたのに対し、第3グループの高村光太郎や佐藤朝山などは、西洋美術を学んだあと、日本の古来の仏像を見直すように。和辻哲郎の『古寺巡礼』が大ヒットとなり、仏像を美術として見るようになったことも影響したという説明でした。

…と、書いていますが、明治以降の彫刻を理解するのは難しいです。聴講したことでなおさら疑問は増えました。古い仏像についても疑問だらけを抱えて追いかけているというのに…!

この「らかん仏教文化講座」はこの後、仏教と映画というテーマも予定しているそうです。次回の「写真に残された仏像」というテーマも気になります!


※2008年の展覧会「仏像インスピレーション」につきましては、ぶつぞうな日々part IIに記事がありますので、よろしければご覧ください(まだ若い頃のブログです♡ しかも写真がガラケーだわw)。またこういう展覧会があるとうれしいです。講義だけだと分かりにくいので、実際の作品も観たいです!
hiyodori-art2.cocolog-nifty.com

2017年5月の仏像拝観リスト

2017年5月はGWに関西に行き、加古川の西方寺の来迎会練供養のほか、兵庫、奈良、京都の仏像をめぐりました。知らない仏像がまだまだたくさんおられます。
練供養シーズン終了後に三浦半島のご開帳へ。三浦半島のまぶしい太陽と秘仏に心身ともに癒されました。三浦半島のご開帳が1か月しかなかったのが残念です。秋も開けて欲しかったです。
練供養が終わる頃から、平安前期の仏像に魅了される自分に気づいたのでした。

5月3日(水)
兵庫県
〇教信寺(加古川市) 2015年の練供養以来の再訪。教信上人像も阿弥陀立像もお姿を拝めず。
〇西方寺(加古川市
 曼荼羅会(二十五菩薩来迎会) ご本尊三尺の阿弥陀如来立像(観音勢至)
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兵庫県立歴史博物館(姫路市)特別展「ひょうごの美ほとけ-五国を照らす仏像-」
 県指定 多可町金蔵寺 阿弥陀如来坐像(頭部が脱乾漆)
 重文 毘沙門天立像(平安時代中期)/姫路市随願寺蔵
 地蔵菩薩立像(鎌倉時代)/淡路市観音寺蔵
 重文 不動明王坐像/瑠璃寺


斑鳩寺(太子町) 
 収蔵庫 慶派の日光月光菩薩立像(鎌倉時代)、十二神将、菩薩面25面と地蔵面(江戸時代)、
 聖徳殿 植髪の聖徳太子

5月4日(木)
〇快慶展(奈良国立博物館) 2回目
〇大念仏寺(大阪市) 万部おねり

5月5日(金)
奈良県
長谷寺桜井市) 心の支えの長谷寺、特別拝観
〇報恩寺(桜井市外山区) 阿弥陀如来坐像(重文、平安)
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不動院桜井市外山区) 不動明王坐像(重文、平安)
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〇橘寺(明日香村) 伝日羅上人像、地蔵菩薩立像
〇岡寺(明日香村)

5月6日(土)
京都市
〇小地谷阿弥陀寺(大原) 
 本堂=ご本尊は植髪の弾誓上人立像、右横に重文の阿弥陀如来坐像(鎌倉)
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京都 春の特別公開= 
寂光院(大原) 火災にあった黒こげの地蔵菩薩立像(収蔵庫)
〇遍照寺(嵯峨) 平安の十一面観音立像、平安の不動明王坐像(溶けちゃいます)
〇清涼寺(嵯峨) 初の収納庫へ。9世紀の阿弥陀三尊像(源融が 895年に没後、息子が造立)。本堂の釈迦如来立像
二尊院(嵯峨) 前回お参り時に本堂修理中でお会いできなかった二尊についにお会いできた

5月15日
東京都目黒区
祐天寺「祐天上人300年御遠忌特別開帳」
祐天上人の本地身仏である延命地蔵菩薩坐像が1797年に、長野県松本の光明院で見つかり、それまで祐天寺におまつりされていた地蔵菩薩坐像(仏師竹崎石見)と交換されるかたちで、祐天寺に遷座された。
長野に渡った地蔵菩薩坐像が廃仏毀釈で行方不明になっていたが、昨年2016年10月に松本の生安寺で発見され、今回、祐天寺で里帰りご開帳された。
なんともドラマチックな二つの地蔵菩薩坐像が2017年5月13日~15日の3か間、祐天寺で公開された。
生安寺で発見された地蔵菩薩坐像の岩座の側面には、「祐天大僧正 本地身 地蔵大菩薩」と墨書されている。
300年近い時を経た二つの地蔵菩薩坐像の再会。生安寺の地蔵さまはまた松本に戻られるという。
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5月20日
今年は三浦半島の不動霊場が酉年のご開帳で、かつ、33年に一度の薬師霊場のご開帳。開帳期間は4月28日から5月28日。
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○三浦薬師14番
天養院 
薬師如来坐像と両者脇侍像 県指定 平安中期
十二神将
ご本尊は阿弥陀三尊と法然善導上人
平安の薬師三尊さまが素晴らしすぎた。

○三浦薬師11番
三浦不動11番
最宝寺
薬師如来坐像 県指定(鎌倉) 玉眼寄せ木86.5センチ 宋風、鎌倉後期
不動明王

○三浦不動3番
満願寺
菩薩立像 重文
地蔵菩薩立像 重文
不動明王立像 市指定
毘沙門天立像 市指定

○三浦薬師4番
満昌寺
薬師三尊は秘仏。33年に一度開けるのみ。
ご本尊宝冠釈迦如来坐像 横須賀市文化財
木造天岸慧広像 横須賀市文化財

○三浦不動20番
浄楽寺
阿弥陀三尊 重文 運慶
不動明王 重文 運慶
毘沙門天 重文 運慶

○三浦不動21番
立石不動尊 境内に6mの滝

○三浦不動25番
長運寺
不動明王 葉山町指定

5月28日
○三浦薬師13番
見桃寺 薬師如来立像(平安、三浦市指定文化財
海南神社三浦市)(相州三浦総鎮守)
○三浦薬師2番
良長院 薬師如来立像(南蛮鉄)
鉄仏はなぜか温かみがある。
現在米海軍基地のある泊ヶ浦から移ったそう。

○鎌倉国宝館「鎌倉の至宝 優美なる慶派のほとけ」 
秦野市金剛寺阿弥陀三尊
 中尊は室町と思われるが、両脇侍が肥後定慶の作風を示す。
鎌倉市教恩寺の阿弥陀三尊
 中尊は快慶の初期の作風。腰をかがめた両脇侍を従える三尊像の形式は快慶によって完成されたと考えてられており、本作はその最初期の作品とみられる点でも貴重。
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以上

瑞林寺の康慶の地蔵菩薩坐像~運慶展にて親子対決!~

二度目の運慶展。
待ち時間なしと聞き、仕事終わりで駆けつけましたが、激混みでした。

後期の展示替えの目玉は、静岡県富士市・瑞林寺の康慶作、地蔵菩薩坐像。数年前から予約拝観を受け付けておらず、年に1日ご開帳があるのみです。拝観が難しい仏像です。
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康慶の子である運慶は、これとよく似た地蔵菩薩坐像(京都の六波羅密寺)を残しており、運慶展に出展中です。

つまり、親子の違いを見比べられる貴重な機会なのですっ!

康慶の地蔵菩薩さまは鎌倉国宝館にお出まし以来、二度目の拝観でした。今回、大勢の人の波をかき分けて拝しましたが、やはり傑作と呼べるのでないでしょうか。

運慶の地蔵菩薩は、康慶のとは異なり、足が衣
から出ていません。その分、動きが穏やかかと思いきや、衣紋の動きは複雑に深く刻まれています。それなのに、背面は拍子抜けするほどあっさりとしていました。
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どちらも一族の供養のために造立したと聞いたことがあり、他の運慶の作品とは異なる背景があるのかもしれません。

運慶展はあと一週間。もし空いてる時間があれば、康慶の地蔵菩薩だけでももう一度行きたいです。

※写真は「運慶」展(東京国立博物館)のサイトより

2017年4月仏像拝観リスト

遅くなりましたが、今年4月の拝観記録です。
5月の連休で関西に行ったあと、携帯電話がお亡くなりになり、写真の多くを失ってしまいました。
その他の事情も重なり、大変遅くなりましたが、better than never かと思い掲載いたします。

快慶展と負分如来さまの快慶づくし。
本年度の展覧会の上位に入ること間違いなしの大阪の「木×仏像」展。さらに美作誕生寺のお会式こと二十五菩薩来迎会と、充実した二日間でした。

2017年
4月15日
京都市
○東寺・講堂と金堂
蓮光寺(負分如来像、石の地蔵菩薩坐像、長宗我部盛親の墓)
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※写真はお寺のサイトから。
※昨秋に仙台の笈分如来さまを拝観して以来、こちらの阿弥陀如来さまにもお会いしたいと思っていました。蓮光寺さまに特別にお許しいただくことができました。快慶の作とされるのも納得の美しさでした。
※お寺のパンフレット貼っておきます
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奈良市
○徳融寺(子安観音立像、藤原の薬師坐像)
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※中将姫伝説のあるお寺に残る、赤ちゃんを抱っこした優しい観音さま。薬師如来は定朝様。
興福寺(仮講堂の阿修羅さま、東金堂に白鳳仏頭さま)
○快慶展 言葉にならず
○なら仏像館(香薬師の右手)

4月16日
大阪市
○金台寺(法然・善導上人、市指定の平安の千手観音立像)
○ 「木×仏像」展
岡山県久米南町
○誕生寺(二十五菩薩来迎会)(本堂の法然上人坐像、収蔵庫の阿弥陀如来立像=結縁合力)
※美作誕生寺の練供養が素晴らしすぎて、2年連続で訪れてしまいました。

4月20日
金沢文庫

4月23 日(たぶん)
○東京・奈良西大寺展(西大寺愛染明王文化庁普賢菩薩福島県いわき市地蔵菩薩坐像)
東京国立博物館・新指定文化財
トーハク新指定文化財展。
京都の廬山寺の阿弥陀三尊は、観音勢至様の背中の衣が爽やかに風を受けている。スピード来迎の一瞬をとらえたもので、浄土系好きは感涙します。東京までお出ましくださったことに感謝。
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以上

雲南市・禅定寺の阿弥陀如来坐像~優しい番長さんw~


古代出雲歴史博物館の「島根の仏像」展。前回の記事で書いた安来の清水寺の十一面観音立像で腰が抜けるほど仰天した私ですが、その先にさらに、素晴らしい仏像の数々が並んでおられました。

「島根の仏像」展のツートップは、出雲市万福寺(大寺薬師)の薬師&四天王像と、松江市・仏谷寺の薬師&四菩薩像でしょう。この戦隊ゴレンジャーのごとき二組が、ガラスケースに入ることなく、どどーんと構えるところが、この展覧会の目玉かと思います。この二組が隣同士に並ぶということは、業界的に(!)大事件かと思います。

でも、それだけではないのです。

大寺薬師の広目天さまに睨まれたり、仏谷寺のニットキャップ如来(後述します)やツンデレ顔の菩薩像(後述しきれませんw)にノックアウトされながら、なんとか展示会場を進むと(注※)………

第一会場の一番奥に、雲南市・禅定寺の阿弥陀三尊さまがおられました。

穏やかな観音勢至菩薩像も素晴らしいのですが、特に惹かれたのが中尊の阿弥陀さまでした。

雲南市・禅定寺の阿弥陀如来坐像

135センチ。10~11世紀。一木造り。県指定文化財
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事前知識なくお会いしたせいかどうかはわかりません。とにかく、あまりに独特な阿弥陀さまのお姿を目の前にして、私は意識が飛びそうになりました。

まず、なんなのでしょう、この両胸の渦巻き模様は。右胸に、くるりん、くるりん。そして、左胸にも、くるりん、くるりん。左右の胸に二つずつ、唐突に浮かび上がっています。

渦巻き模様は、飛鳥の橘寺の日羅立像のように、平安前期の激しく強いお像でお見かけします。しかし、この阿弥陀さまは、お顔も穏やかですし、全体的に激しさを感じません。

さらに目を引くのが、首回りにぐたっと立てた襟です。まるで制服を着崩したツッパリ番長のようです。いわゆる、不良です。こんなに穏やかなお顔の阿弥陀さまなのに、もはや、阿弥陀番長にしか見えなくなってきます。

平安の古仏に見られるあやしい渦巻き文も、制服に落書きしたように見えてきました。

たっぷりとした量感。幅の広いお鼻。愛さずにはいられません。お優しい阿弥陀さまの番長です!

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襟立ちの如来さま

ちなみに、先ほど言及した松江の仏谷寺の薬師如来坐像も襟が立っています。
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こちらも強烈な印象です。肉髻部と地髪部に明確な段差がなく、なだらかなところが特徴で、ニット帽をかぶったようになっています。天台宗で見かける表現だと指摘する専門家もおられるそうです。

同じ「襟立ち如来」ですが、こちらの方がお顔も厳しく、禅定寺の阿弥陀さまとは印象が大きく異なります。仏谷寺は厳しい仏さま。禅定寺の阿弥陀さまは、もっと庶民に近い感じがします。


禅定寺の縁起とご本尊の聖観音立像

この阿弥陀三尊がおられる禅定寺は、天平年間(729~748年)に行基が開山したと伝わります。聖武天皇の勅願所だったとされる天台宗の古刹です。

なお、こちらのご本尊は聖観音菩薩立像。平安時代の一木造り。228センチの堂々たるお姿で、国の重要文化財に指定されています。
天候不順で飢えに苦しむ住職を救おうと、自らイノシシに身を変えて与えたという伝説が残るそうです。なんと、33年に一度の秘仏ですが、こちらも展覧会にお出ましでした。なんともありがたいことです。 
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禅定寺さまの次のご開帳のときにお参りしたいです!


注※ 他にも立ち止まらざるを得ないトラップ(=つまり、魅力的な仏像さまたち)は、たくさんおられたのですが、ここは心を鬼にして、あえて省略することをお許しください。どのお像も独特で素晴らしすぎました。

※ 写真はすべて「島根の仏像」展の図録からです。