特集展示「西七条のえんま堂 -十王と地獄の美術-」
龍谷ミュージアム(2020.9.12-11.3)
えんま堂の諸仏は実際に間近で拝むべし
龍谷ミュージアムの近く、西七条えんま堂から諸仏がお出ましである。メイン展示は、このお堂の閻魔坐像(鎌倉時代)、十王坐像(南北朝~室町時代)および不動明王立像(鎌倉時代)。閻魔像も不動明王像もそれほど大きくはないが、写真より実物のほうが断然いい。写真よりもっと凹凸があるし、動きもあり、怒りの表情に力もある。えんま堂の木造檀荼幢と木造浄玻璃鏡はいずれも昭和10年の作。近年にも新たな仕掛けを加えた人々がいたのだ。その熱意に脱帽である。
さらに、展覧会場では、これらえんま堂の諸仏と同じスペースに、京都・鍛冶町町内会の木造地蔵菩薩立像(平安後期)を配置する。これがよくマッチし、好印象。地蔵菩薩様は閻魔様の化身なのだ。このお像も写真より実物のほうが素敵だった。写真ではわかりにくいが、側面からみると、前傾した姿勢を取っていた。来迎の地蔵菩薩なのだろう。
十王像や地獄絵を観るとき、私は少し気構える。その時の自分の体調によっては、観るだけで体力と気力を消耗してしまうことがあるからだ。その点を心配しつつ鑑賞したのだが、この展覧会では、地蔵来迎図(後期展示は岡山・安養寺のもの)と阿弥陀三尊来迎十仏図(岡山・木山寺、後期展示)も一緒に展示してくれていたので、助かった。やはり地獄と極楽はセットでないと。
また、地蔵盆の設えを再現展示(京京都・壬生寺)しているのも興味深い。私は京都の地蔵盆に憧れる田舎者である。
なお、この特集展示は、シリーズ展8「仏教の思の想と文化 -インドから日本へ-」の一部という位置づけのようだ。このシリーズ展は、大きなテーマの中で、ガンダーラから法然上人や親鸞上人まで網羅。美しい阿弥陀如来像や来迎図も登場する、癒し空間だった。
ぼっちに優しい
最後に、もう1点追記したい。会場内に、閻魔様のポスターをバックに写真が撮れるコーナーがある。私は基本的にいつも一人で行動するので、こういうのは使えない。展覧会スタッフが近くにいてくれれば、シャッターを押してもらえる。しかし、会場が混み合っていたりすると、スタッフさんにお手間をかけられない。そもそも人見知りなので、スタッフさんに声をかけるのも気が引ける。
それがなんと、ここ龍谷ミュージアムでは、一人でも写真が撮れるように、スマホを置く台を設置してくれていた。なんと素敵なギミックだろう。このおかげで、今回初めて高度な自撮りに成功した。おひとり様(通称”ぼっち”)へのお心遣いに心より感謝を申し上げる。(自撮り写真の掲載は自重w)