厄除地蔵尊福田山塩澤寺(山梨県甲斐市)
石造地蔵菩薩坐像(県指定有形文化財)
思いかけず珍しい仏像に出会ってしまった。
弘法大師が開湯したとされる甲府の湯村温泉郷に、真言宗塩沢寺(えんたくじ)はある。決して大きくはないこの寺の寺伝には、二人のビッグネームがその名を連ねる。
最初の一人はまさしく弘法大師。大同3年(808)、弘法大師がこの地で感得した6寸の地蔵菩薩坐像を自ら刻んだとされる。今は小さな厨子に収められ、秘仏となっている。
もう一人が空也上人。天歴9年(955)に当地を訪れ、6尺有余の地蔵菩薩坐像をまつったとされる。
この空也上人の地蔵菩薩像は開扉仏と呼ばれ、堂外からお姿を拝むことができる。像高約150cm、室町時代の作で県指定文化財。堂外からそっと覗き込むと、その威容に息をのんだ。
一見普通の地蔵菩薩なのだが、調べてみると、相当変わっているようだ。石造仏なのだが、衣文には乾漆を加え、肉身部は漆箔。しかも、両手先と左足先は木を差し込んでいるという。
さらに、この地蔵菩薩像は自然石の上に置かれた台座に坐すことから、現在の地蔵堂(重文)は地蔵菩薩像の覆屋として造られたのだとか。もろもろ普通ではない。
この開扉仏は、毎年2月13日正午から翌14日正午まで「厄除地蔵尊大祭」の際、堂内で拝観できるそうだ。ぜひその際にお参りしたい。