ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【奈良】【展覧会】不退寺聖観音菩薩立像〜観音さま、おリボンが〜

特別公開 不退寺聖観音菩薩立像
2023/3/21(火)~5/14(日)
奈良国立博物館(なら仏像館 第7室)

 奈良佐保路、不退寺。平安時代歌人在原業平が開いたと伝わる古刹のご本尊は、業平自らが刻んだとされる聖観音立像。胡粉を塗った白いお姿とお顔の両側の大きなリボンが印象的で、美男子だった業平自身か、業平の理想の女性を彫ったものではないかと言われている。

 というか、今となっては、「言われていた」と過去形にせざるをえない…。

この大きなおリボンがアイコンだった…。ああ、どなたですか、こんな素敵なおリボンを付けたのは…! (写真はいざ奈良より https://nara.jr-central.co.jp/kankou/article/0006/


 というのも、この観音像の保存修理が終わり、奈良国立博物館で特別公開されているのだが、ご覧のとおり、おリボンが取り外されているからだ。

保存修理が終わり、なら仏像館で特別公開中の不退寺本尊聖観音菩薩さま。おリボンが取り外されている(筆者撮影)

 不退寺聖観音像は、文化庁所蔵で奈良博寄託の観音立像ともともと一対だったことが近年の調査で判明したそうで、この両像が並んで展示されている。それがこの展示の最大の見どころである。

文化庁所蔵となった菩薩さま。のどかでお優しいこのお姿からは想像しがたいが、奈良→東京→軽井沢→奈良と流転の過去をもつ(写真はhttps://www.narahaku.go.jp/exhibition/usual/202302_mei_futaiji/より)

 両像は像高がほぼ同じで、腰の捻りが左右対称。さらに、三重の渦を巻いて髪の毛が耳にかかるところや、天冠台の模様、両足裾の表現などが酷似する。三尊像の両脇侍として造られたのであろう。

 もともと一対であったはずなのに、本尊としてまつられてきた不退寺像と文化庁像の運命は異なっていた。文化庁像は東京の美術館の所蔵となったあと、軽井沢へ。その後、文化庁が買い上げて、奈良国立博物館に寄託されたという経歴をもつ。最近は奈良博第7室の常連であるので、私は何度もお会いしているのだが、こののんびりとした穏やかな観音様がそんな流転の像だとは思いもよらなかった。

 離れ離れになった一対の像が今、奈良博で再会を果たしている。感動の再会である。詳しい解説もあり、知的好奇心もかき立てられる。

 しかし、しかし、である。どうしても気になってしまうのは、不退寺像のおリボンである。今の不退寺像には、あのアイコニックなおリボンがない。

 私が最初に不退寺の聖観音像にお会いしたのが20年ほど前。その時からずっと、おリボンの観音様だと刷り込まれてしまっている。なんとも不安でしかたない! 古参の仏像ファンの皆様はどんな思いでおられるのだろう…。

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