ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

2018年の新指定文化財展(東京国立博物館)

毎年この時期に東京国立博物館で開催される新指定文化財展。2018年度の彫刻の部を急ぎ拝観してきました。初めてお会いして興奮した2尊と、何度かお会いしたけどやっぱり大好きな快慶仏1尊をご紹介します。いずれも今回、重要文化財に指定されました。

東川院(岩手県一関市大東町

木造観音菩薩坐像(114 .3 cm)

文化庁の説明によると、「穏やかな作風に平安末期の彫刻様式を示す。奥州平泉で藤原三代による寺院造営に携わった仏師の手によると推定。吊り気味の目など新しい傾向もみられ、1170~80年代頃の製作と考えられる」。中尊寺金色堂の諸像と比べるとがっしりした印象をもった。上品だが、威厳と力強さも感じる。お寺で拝観できるだろうか。
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西光寺(愛知県津島市

木造地蔵菩薩立像(159.6cm)

運慶周辺の仏師による。最近行われた保存修理により納入品が発見され、1187 ~1193 年頃にかけて行われた諸国勧進により多くの結縁者を得て製作されたことが判明。たくさん押された印仏など、胎内納入文書の一部も公開されている。力を合わせてみほとけを造立するとはなんと尊いことだろう。
六波羅蜜寺の鬘掛(かつらかけ)地蔵菩薩立像と同じく、左手に頭髪を持った珍しいお姿とのこと。しかし、六波羅蜜寺の鬘掛地蔵尊平安時代なのに対し、西光寺の地蔵尊は明らかに慶派の影響がみられる。六波羅蜜寺の鬘掛地蔵と運慶地蔵坐像や康慶の地蔵坐像(富士市瑞林寺)が混ざり合ったような不思議な感覚で拝んだ。
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圓常寺(滋賀県彦根市

木造阿弥陀如来立像(快慶、98.8cm)

トーハクのあの場所で三尺阿弥陀を幾つか拝んでいるが、この快慶仏は一目で他とは違う。別格だと思った。「比類なき」とはこういう時につかう言葉だと実感した次第。快慶さんが大好き!
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なお、京都の東寺食堂の火災にあった四天王像が、修復後の状態が安定したという理由で、重要文化財の再指定を受けたのはうれしかった。この展覧会にはお出回しではないが、東寺で何度かお会いし、四天王さまの迫力と火災による被害のいたましさを実感した記憶がある。
同じく東寺からは、夜叉神堂の一対の夜叉神像が重要文化財に指定。現在、東夜叉神像がこの展覧会に出展中である。破損が著しいが、9世紀末にさかのぼるとされる一木の霊験仏である。


写真は文化庁プレスリリースのものをお借りしました。
詳細を解説したPDFが以下のサイトからダウンロードできます。勉強になります。
www.bunka.go.jp