ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【東京】早稲田で谷崎潤一郎・志賀直哉・富岡重憲旧蔵の平安仏を拝む

 奈良の古仏が大好きなので、會津八一先生を尊敬しているのだが、早稲田大学にある會津八一記念博物館には行ったことがなかった。その八一博物館で今、千葉の下総龍角寺の白鳳仏薬師如来坐像が拝めると聞き、初めて行ってみたら、その横の菩薩立像が素晴らしくて驚いた。

 平安時代11世紀の作とされるこんなにも厳かな木彫仏が、あんなにもごちゃごちゃとした早稲田におられたとは。しかも、奈良に多い板光背ではないか。えーえー? ええっーーー?? 一瞬にして奈良にワープしたような感覚になってしまった…!

早稲田大学會津八一記念博物館にて

 露出展示され、間近で拝めるのもありがたい。厳かなご尊顔。穏やかな垂髪。わずかに右腰を上げ、左膝をかがめた姿勢がたまらない。控えめに彫り出した臂釧。左の太腿にかかるハート型の衣文も私にとってチャームポイント。そして、むき出した木目を眺めていると、驚きで興奮した心も穏やかになった。

板光背は当初のものなのか
威厳ある横顔
右腰を上げ、左膝を突き出す
大好きです♡

 いったいどこのお寺におられたのだろう。室生寺十一面観音や、法輪寺の十一面観音や弥勒菩薩霊山寺薬師三尊などを思い出しながら、家に帰り、改めて写真を見直した。菩薩像の横に掲示されていた展示解説によると、谷崎潤一郎が奈良で購入した仏像だった。やはり奈良のお寺におられたのだろうか。奈良の新薬師寺の近く、高畑の志賀直哉の家に戦前まで安置されていたそうだ。私が愛してやまない流転の仏像の一つだった。

1927 谷崎潤一郎が奈良の森田一善堂で購入

1934志賀直哉へ譲渡され、奈良・高畑の自宅に安置

戦後の混乱期に流出

1954 大倉亀(誰だ?)

1960 壺中居

1972 富岡重憲(日本重化学工業創始者)が購入

1979 富岡重憲の私邸を改装した大田区山王の財団法人富岡美術館へ

2004早稲田大学會津八一記念博物館へ

 そういうわけで、これから時々早稲田に行くことになりそうだ!

【拝観案内】
早稲田大学會津八一記念博物館www.waseda.jp