奈良の古仏が大好きなので、會津八一先生を尊敬しているのだが、早稲田大学にある會津八一記念博物館には行ったことがなかった。その八一博物館で今、千葉の下総龍角寺の白鳳仏薬師如来坐像が拝めると聞き、初めて行ってみたら、その横の菩薩立像が素晴らしくて驚いた。
平安時代11世紀の作とされるこんなにも厳かな木彫仏が、あんなにもごちゃごちゃとした早稲田におられたとは。しかも、奈良に多い板光背ではないか。えーえー? ええっーーー?? 一瞬にして奈良にワープしたような感覚になってしまった…!
露出展示され、間近で拝めるのもありがたい。厳かなご尊顔。穏やかな垂髪。わずかに右腰を上げ、左膝をかがめた姿勢がたまらない。控えめに彫り出した臂釧。左の太腿にかかるハート型の衣文も私にとってチャームポイント。そして、むき出した木目を眺めていると、驚きで興奮した心も穏やかになった。
いったいどこのお寺におられたのだろう。室生寺十一面観音や、法輪寺の十一面観音や弥勒菩薩、霊山寺薬師三尊などを思い出しながら、家に帰り、改めて写真を見直した。菩薩像の横に掲示されていた展示解説によると、谷崎潤一郎が奈良で購入した仏像だった。やはり奈良のお寺におられたのだろうか。奈良の新薬師寺の近く、高畑の志賀直哉の家に戦前まで安置されていたそうだ。私が愛してやまない流転の仏像の一つだった。
1927 谷崎潤一郎が奈良の森田一善堂で購入
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1934志賀直哉へ譲渡され、奈良・高畑の自宅に安置
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戦後の混乱期に流出
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1954 大倉亀(誰だ?)
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1960 壺中居
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1972 富岡重憲(日本重化学工業の創始者)が購入
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1979 富岡重憲の私邸を改装した大田区山王の財団法人富岡美術館へ
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2004早稲田大学會津八一記念博物館へ
そういうわけで、これから時々早稲田に行くことになりそうだ!
【拝観案内】
早稲田大学會津八一記念博物館www.waseda.jp