ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【千葉】いすみ市・行元寺の本尊阿弥陀如来立像と海雄寺の釈迦涅槃像

 千葉県いすみ市郷土資料館で「清水寺の仏像」展を鑑賞したあと、レンタサイクルをひたすらこいで、行元寺、海雄寺、清水寺(坂東32番)、宝勝院夷隅不動尊とめぐった。
 行元寺の本尊阿弥陀如来立像と海雄寺の寝釈迦さまについて、拝観できた感動を書き留めたい。
拝観日=2019年3月9日

1) いすみ市・行元寺

1-1) ご本尊阿弥陀如来立像

阿弥陀如来立像(平安末~鎌倉初 97cm 檜の一木造り 県指定文化財
肉髻が高く、気品と威厳にあふれたお姿。
平重盛の守り本尊だったと伝わる。
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 この阿弥陀さまは前から気になっていて、一度拝観予約をしたものの、悪天候で諦めたことがあった。念願叶ってやっとお会いできた。想像していた以上に、気品と威厳にあふれた阿弥陀さまだった。
 行元寺は波の伊八の欄間彫刻が有名だ。お寺に何度か電話したのだが、そのたびに「阿弥陀さま? 伊八の彫刻は見なくてよいのですか」と言われてしまったほどだ。行元寺にある初代伊八の「波に宝珠」は、葛飾北斎の「神奈川沖波浦」にそっくりである。伊八と北斎は交流があり、行元寺にお参りしたこともあるそうだ。北斎に影響を与えた彫刻ということらしい。お寺のリーフレットには、伊八を称えるエバレット・ブラウンの文章が誇らしげに掲げられている。
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(↑境内のパネル写真)
 確かに、伊八の波の彫刻は素晴らしい。ただ、この阿弥陀如来さまが、その影に霞むことがあってはならない!!

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 ポイントはまず、肉髻が大きく高いこと。お顔は穏やか。どれだけ素晴らしいかは、天台南総教区研修所の研究紀要※の次の説明をお読みいただきたい。
 引用>>典型的な定朝様阿弥陀如来の三尺立像で、それもかなりの美作と云うことが出来る。全体にやや写実味を増した立体的な肉付けから、平安時代末、あるいは鎌倉期にかかる頃の制作かどうか推測される。千葉県内にはこの頃の仏像が少なくないが、これほど洗練された作例は稀と言わねばならない <<引用終わり

 阿弥陀さまは、大きな本堂の内陣の中央、高い場所に安置されている。少し離れた両サイドに、室町時代とされる玉眼の不動明王立像(56.7cm )と毘沙門天立像(61.5cm)を従える。非常に神々しくまつられている。
 ただ、お姿を拝むには少し遠目となってしまう。双眼鏡か単眼鏡の用意をお勧めする。

1-2) 善光寺阿弥陀三尊像

金銅、鎌倉後期、県指定文化財
阿弥陀51.8cm 観音33.4cm 勢至30.0cm  
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 行元寺には、鎌倉時代善光寺阿弥陀三尊も伝えられており、こちらも県指定文化財となっている。肉髻の高い阿弥陀さまがとても気になるのだが、公開していないとのことで、拝顔は叶わなかった。残念である。いつか拝観の機会を待ちたい。

2) いすみ市・海雄寺 釈迦涅槃像

(江戸中期 516cm 銅造 県指定文化財)通称、万木の寝釈迦
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 万木城の山の下、誰もいない静かなお堂で、静かにお休みであった。大きな釈迦涅槃像。堂外からのぞくことができる。穏やかなお顔でのんびりお昼寝しているようにも見える。
 幾つかに分割したものをつないだ構造なのだそうだ。像の内部の一部と、衣の着衣部の前面と左腕の一部に、結縁者名などの刻銘が見られる。正徳6年(1716)2月28日の日付や勧進僧をはじめとした千人以上の名前が刻まれているそうだ。当日の信仰の篤さがしのばれる。
 寺の前の看板には、市指定文化財と書いてあるが、平成2年に千葉県指定文化財となっている。(訂正できるとよいのにね)
 

参考資料

○『南総天台の仏像・仏画 I』天台宗南総教区研修所編、2017年
(※上記文章の引用は本書より)
いすみ市文化財サイト

写真キャプション

 行元寺の写真は、波の伊八のパネル写真を除き、すべて上記の『南総天台の仏像・仏画 I』より転載。海雄寺の写真は筆者撮影(2枚目は国吉駅前の看板を撮影)

拝観案内

 【行元寺】土日祝日の10:00から15:30頃まで、伊八の彫刻と本堂の阿弥陀如来さまを公開している。ボランティアガイド付き。拝観料500円
 【海雄寺】普段は堂外から窓越しに拝観できる。ご開帳は5月3日の万木城祭りのとき。