ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【石仏】徳本名号塔をめぐる~八王子編3~(めじろ台)

八王子の徳本上人名号塔 No.10
所在地 八王子市めじろ台1丁目(旧福泉寺跡地)
文政7年

 閑静な住宅街の片隅に、お寺の跡地が墓地として残る。その小さな一画の隅に、時間が止まったままのように、徳本上人名号塔があった。
 傾斜地に一本、木が立つ。その両脇に石仏の地蔵菩薩立像と徳本上人名号塔。木は育ち、名号塔を圧迫し、やがて包み込んでいくように見えた。
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 八王子市の横山地区と東浅川地区を中心に、徳本名号塔10基を巡ったが、この名号塔がおそらく最も大きい。高さ110cm、幅67cm、奥行き40cm(※ 八王子石仏の会『旧横山村石仏調査報告書』1998年 より)。保存状態も良好で、名号の文字もはっきりと目視できる。
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 造立年度などの銘文は私は確認できなかったが、前掲書によると、名号塔の左側に「文政甲甲四月 中散田」と銘があるそうだ。文政甲甲とは、調べてみると、文政7年。また、散田という地名は今も残るが、中散田という住所は今は聞かない。
 冒頭に現在の位置を「めじろ台」と書いたのは、現在の墓地がめじろ台一丁目の端にあるからで、そこは散田地区と接している。そもそも、めじろ台は、昭和40年代に京王電鉄が宅地造成して分譲した際に作られた地名であり、徳本上人が入られた頃には存在しない地名である。
 徳本上人名号塔を巡り始めたばかりの私だが、この名号塔には本当に感動した。次世代に承継したい遺産である。
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(↑ 横から見ると、かなり奥行きのある石であることがわかる)
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(↑ 裏手から見る)