コロナ感染拡大対策による外出自粛のため、緊急事態宣言が出てからは、あくまで「健康維持のための外出」の範囲で仏像拝観をしていている。具体的に言うと、移動手段は徒歩か自転車のみ。誰とも会わないというマイルールなので、予約拝観はなしで、御朱印も拝受しない。そして、このマイルールで拝観できるところといえば、こちらの八王子の五智如来像である。久しぶりにお会いすると新たな発見があった。
1. 直入院の五智如来像
八王子市緑町に大きな市営の霊園がある。霊園内に萬福寺(真言宗智山派)と直入院(単立)があり、こちらの五智如来像は直入院の境内に安置されている。だいぶ昔に一度お参りしたのだが、お墓が怖くてそそくさと帰ってきたことしか覚えていない。
その後、仏像拝観を重ねる中で墓地への恐怖心も薄れてしまい(畏怖はあります)、今回はのんびりとお参りできた。
五智如来立像
直入院(東京都八王子市)
釈迦如来、阿弥陀如来、大日如来は延宝8年(1680)
阿閦如来、宝生如来は元禄4年(1691)
八王子市有形民俗文化財
市の文化財サイトには、以下のように記載される。
五智如来はもともと小門町にあった蓮生院の住職によって建立されましたが、昭和20年(1945年)の戦災により蓮生院が焼失し、廃寺となったため、元横山町にあった帰西寺に移されました。しかし、その帰西寺も昭和29年(1949年)の区画整理にともない直入院と合併したため、現在地に移されました。
まだ蓮生院にあったころ、ここで開催される縁日で、トウモロコシの露店が並び賑わったため「とうもろこし地蔵」とも呼ばれていました。
釈迦如来、阿弥陀如来、大日如来は延宝8年(1680年)に、阿閦(あしゅく)如来、宝生如来は元禄4年(1691年)に建てられました。釈迦、阿弥陀如来の台座には法号が刻まれていることから、供養塔であることがわかります。また、大日、阿閦、宝生如来の台座には、寄進者92名の姓名が刻まれ、江戸在住者もかなりいることがわかります。
1-1) 大久保長安の陣屋のあった町で信仰された五智如来。あだ名は「とうもろこし地蔵」
一見して愛らしいお姿の五智如来立像である。江戸時代でも17世紀後半の造立だ。近所の石仏の制作年代を時々見るのだが、比較的新しいのではないだろうか。
五智如来像は小門町(おかどまち)の蓮生院の住職によって建立され、1945年の戦災で廃寺となるまで、蓮生院で信仰を集めたことが伺える。小門町は江戸初期に大久保長安(1545-1613)が屋敷を構えていた場所で、今もJR八王子駅と西八王子駅の間の中央線沿いに地名が残る。八王子城の落城後、八王子の中心となった地域のひとつで、小門宿という宿も置かれていた。今の八王子駅の北側、甲州街道沿いに整備された八王子十五宿の一つである。
蓮生院で信仰を集めていた証が「とうもろこし地蔵」というニックネームだ。尊格は如来様なのに、地蔵とは。しかも、露店で人気のトウモロコシからあだ名がつくとは。なんとも愛らしいエピソードではないか!
蓮生院から帰西寺(元横山町)へ、そして、さらに直入院へと移り、今は市営霊園の北側の高台に静かに安置されている。往時の賑わいを感じながら、愛らしいお姿を見上げたい。そして、今の私たちに必要なソーシャルディスタンスを確認したい!
1-2) 愛らしいお姿
2. 直入院 拝観案内
東京都八王子市緑町223 (緑町霊園内)
緑町霊園は南から北へと高くなる傾斜地にある。直入院は北側の高い場所にある。
※参考資料
〇八王子市文化財サイト
直入院石造五智如来立像|八王子市公式ホームページ
〇大久保長安と八王子の町(八王子こどもレファレンスシート)※PDF資料です
https://www.library.city.hachioji.tokyo.jp/pdf/kids/010.pdf
〇大久保長安の陣屋跡地とされる産千代稲荷神社について
goshuin.net