鼠志野(峯紅葉)に恋に落ちて…
五島美術館「美の友の会」会員向けの陶芸教室に参加した。
きっかけは数か月前。東京世田谷にある五島美術館で、鼠志野(銘 峯紅葉)の微妙な色合いと形の歪みにやられてしまった。恋に落ちたのである。実物の色合いは、この写真より何百倍も微妙で繊細だ。
(↑五島美術館のサイトより)
とはいえ、私は焼き物に詳しくないし、茶道のたしなみもない。しかも、手先はかなり無器用。そんな自分が陶芸教室に申し込む日が来るとは。
恋✖️無知=無謀。そんな方程式が脳裏に浮かぶ。
実演指導は眼から鱗
陶芸教室では、学芸員さんの解説のあと、岐阜県可児市の弘法窯の作家さんが実演指導してくださった。
なかでも感動したのは、鼠志野の実演である。峯紅葉の展示解説に、「鬼板という鉄泥をかけたあと、亀甲文と檜垣文を掻き落としてから、白い釉薬をかけた…」という趣旨が書いてあった。これを読んで、なぜか興奮した私。
今回の教室では、目の前で作家さんが掻き落としを実演。あっという間に、ささっと…。解説を読むのと、実演を見るのとは大違い。感動した。
ちなみに、掻き落としだけでなく、釉薬の調合とか、もっと高度な技があるのだろうが、今回の教室では当然そこまではできない。釉薬は秘伝なのだそう。それでも、解説読むだけよりも断然理解できる!
目指したのは「峯紅葉」✖️「卯花墻」✖️「禅」(す、すみません)
さて、自分は何を作ろう。身近に使える湯呑みかご飯茶碗を作りたかったのだが、初心者は大きくて丸い茶碗がよいとのことだった。一点の曇りもない初心者なので、大きくて丸めの茶碗を作ることにした。
目指したのは、峯紅葉をもう少し丸くしたフォルム。
色合いは鼠志野と最後まで迷ったが、白い志野釉にした。頭の中には、国宝の卯花墻(三井記念美術館)をイメージ。この白は優しい!
そして、絵付けは、大好きな亀甲文と迷ったが、最終的に、大きく丸を一つ描くことにした。鬼板という顔料がすうーっと粘土に染み込んだ。これは先日禅寺で拝受したご朱印のイメージだ。
ここまで一流どころを目指してしまうとは。素人はこわい。
(↑これが卯花墻。実は教室の前日に三井記念美術館で拝見し、当日に備えた!)
(↑このご朱印の大きな円をイメージした。甲府の能成寺にて拝受)
仏像だったら悩んでた
もしこれが仏像彫刻教室だったら、もっといろいろ考えて悩んだだろう。「一木造りなんだから、翻波式にしなきゃ」とか、「宋風のヒラヒラ入れたいなら、玉眼にしなきゃ」などと、悩んだに違いない。彫刻刀さえ持てないくせに、余計な知識があるがゆえに、いろいろ悩んで立ち往生したに違いない!
色白は七難隠す?
陶芸初心者はその点、安心だ。迷いはほとんどなく、見事に単純で分厚い茶碗になった。これから岐阜の弘法窯さんが乾燥し、釉薬をかけて、焼いてくださる。仕上げは、志野釉か透明釉、または、釉薬をかけない焼締の3パターンから選べる。上記のとおり、私は白い志野釉をお願いした。
完成品の引き渡しは5月末の予定。穏やかな白になるといいなー。色白は七難を隠す、と言いますから。
(↑これが私の峯紅葉✖️卯花墻✖️禅w しょぼいけど愛おしい。焼き上がりが楽しみだ)
(↓制作前の土と制作後。プロが練ってくれた土を壊さないように伸ばしていく。すべては先生たちのおかげ!)
— はらぺこヒヨドリ (@hphiyodori) 2020年2月1日
参考
※鼠志野峯紅葉(五島美術館)
https://www.gotoh-museum.or.jp/collection/col_05/02009_001.html
※志野焼卯花墻(三井記念美術館)
http://www.mitsui-museum.jp/collection/collection.html
※五島美術館に陶芸教室は年に3回ほど。美の友の会(年会費4000円)会員向け。五島美術館には、鎌倉の鶴岡八幡宮におられた愛染明王(重要文化財)が常設展示。