鳥追観音如法寺(福島県西会津町)
秘仏ご本尊聖観音菩薩立像
900年ぶりご開帳(2021年6月と10月)
広い広い会津の西の果てへ、秘仏を拝むために出かけてきた。郡山駅から鈍行で2時間半。秋晴れの磐梯山、稲刈り作業の続く黄金色の会津盆地、そして、不思議な緑色の阿賀川。車窓の景色をのんびり堪能し、鳥追観音様にたどり着いた。
鳥追観音如法寺の秘仏本尊は900年前に火災に遭い、それ以来秘仏だったという。秘仏ゆえか、事前に写真を拝見できなかった。どのような尊容なのかわからないのにご開帳に出かけるのは、先日の横浜阿弥陀寺のご開帳以来だ…
秘仏本尊聖観音菩薩立像(平安初期、一木造、県指定重要文化財 )
たどり着いた本堂で見上げたご本尊様は平安時代の力強く素朴なお姿だった。はぁーと肩の力が抜け、感動が込み上げてきた。像高160m。前立像は坐像であるが、ご本尊様は立像だった。前立像とはかなり作風が異なる。
静かで優しいご尊顔。体部には衣紋はほとんど見られない。両肩にかろうじて衣がかかるのが見える程度。
不思議です! 斜めです!
そして、ご本尊様は上半身がとても斜めだった! 小学生の時に使っていた三角定規を思い出すほど、それはもう見事な斜め。実は、最初の一瞬「うん? なんで内陣中央に仁王像が?」と思ってしまったのだが、それはこの体の捻り具合に騙されたからかもしれない。
副住職様によると、秘仏本尊様と本堂の一部修復が完了したことから、今回のご開帳に踏み切ったのだという。文化財の修復に資金が必要なところ、コロナ禍で参拝者が激減しているのだという。長年にわたり非公開だった秘仏を公開すること、また、ご開帳中に拝観料300円をお願いすることについて、申し訳なさそうにご説明された。しかし、私としてはありがたいの一言に尽きる。
実は、数年前に鳥追観音様をお参りした際、ご本尊様が平安初期の観音像(県指定文化財)であることを事前に調べていたのだが、そこには私の素人目でも鎌倉以降にしか見えない美しい観音像がまつられていた。うーむと唸っていると、お堂に祀られているのはお前立像であり、ご本尊様は秘仏のため拝観はできないのだと教えていただいた。それ以来、秘仏ご本尊様にお会いしたいと願ってきた。念願が叶い、感激である。
900年ぶりのご開帳はもともと今年6月に行われた。しかし、コロナ禍でお参りできなかった人もいることから、10月中にも特別公開となった。6月はワクチン未摂取で外出する気になれなかったので、ありがたいとしか言いようがない。
不思議です! 右手の指を捻り、左手に蓮花?

ご開帳期間中は須弥壇の前まで行って拝観させていただける。秘仏ご本尊様だけでなく、お前立の観音様も間近で拝むことができる。間近で拝む前立観音様は、以前お会いしたときより美しさが増したように感じた。微細に揺れる玉眼の輝きがたまらなく美しい。右手は指を捻り(阿弥陀様の来迎印のよう)、左手に蓮花を持つというお姿だ。
秘仏本尊は両腕の先がないが、修復前までは後補の腕がついてのだそう。後補ゆえ、修復時に取り外したのだという。副住職が後補の腕はこんな感じでしたーと、身振りを交えて説明してくださっのだが、それがお前立ち像と同じく、右手は阿弥陀様のように指を捻り、左手に蓮花を持つ形だった。ぞくぞくした! ご本尊とお前立像は制作時期も作風も異なるのに、腕の形は同じだったということなのか!? ご本尊様はあの斜めの姿勢なので、その腕の形は難しいのでは? ぞくぞくしつつ、疑問が次々湧いてきた。不思議なお姿だーー。