ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【展覧会】鳥獣戯画展で明恵上人ゆかりの仏像(和歌山県・浄教寺)を拝む~1年以上ぶりのトーハクは実に尊かった~

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「国宝鳥獣戯画のすべて」
東京国立博物館
2021.4.13-6.20(ただし4.25-5.31休館)
予約チケット必要


 トーハクの鳥獣戯画展に浄教寺(和歌山県有田川町)の大日如来像がお出ましと聞き、出かけてきた。と言うと、何事かと思われるかもしれない。この展覧会のウリは鳥獣戯画の全巻一挙公開であり、仏像の展示はこの一点のみ。それでも有田川の仏像が東京にお出ましとあらば、お会いしに行かなくはならないっ! 
 鳥獣戯画展といえば、とにかく混雑して長時間並ぶというイメージだが、今回は予約必須で入場者数を制限したため、余裕もって鑑賞できた(ただし、予約券はあっという間に売れ切れた)

浄教寺の大日如来坐像(和歌山県有田川町

 浄教寺の大日如来は2年前に和歌山県立博物館でお会いして以来。像高86cm。寄木造。玉眼。定印を結ぶ胎蔵界大日如来坐像。背面を含め間近で拝観でき、一気に興奮してしまう! 慶派の影響があるのか、特に、側面の微妙なカーブはどこかで見覚えがある。その一方、ムチムチ感は抑えめで、穏やかさも感じられ、気品が溢れまくっていた。運慶より快慶や湛慶に近いと言ってよいのかな? いずれにしても、とても素敵♡ 高く結い上げた髻♡ 切長のお目目♡  こういうお像は私の生活圏内のサイクリング拝観ではお目にかかれない。ありがたい!
 この大日如来像は、浄教寺の近くにかつてあった最勝寺から引き継がれたものであり、最勝寺の裏山の草庵で明恵上人が行った大仏頂法の本尊(大仏頂尊)だった可能性がある。明恵上人は鳥獣戯画の伝来した京都・高山寺の開山であることから、こんなに気品ある大日如来像を鳥獣戯画展で拝めることとなった。くどよいだが、本当にありがたい!! なお、最勝寺から浄教寺が引き継いだとみられる釈迦涅槃像も今回の鳥獣戯画展に出陳。

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2019年和歌山県博「仏像と神像へのまなざし」展図録より。写真よりずっと美しいです!!!

鳥獣戯画4巻と断簡の一挙公開

 鳥獣戯画もおもしろかった! 動物を擬人化した作品だと思い込んでいたが、甲乙丙丁全部を通して見ると、人間だけが描かれた場面も多い。大勢の人がゲームしたり、木遣をしたり。ほのぼのしてたり、躍動感あったりで、とても楽しい。

 一番人気はやはり、甲巻のようで、そこだけ動く歩道に乗って鑑賞する。甲巻では、ウサギ、カエル、サルなどを擬人化したシーンが続くのだが、私の一番のお気に入りはなんといっても、カエル如来とサルの僧侶だ。仏教儀式を揶揄したのだろうか。平安後期のあっけらかんとした諧謔性に笑ってしまう。今よりもっと信仰心が強い時代ではなかったのか!? こんなにおちょくってしまって、作者は大丈夫だったのだろうか!? 現代のお寺で時々見かけるカエルの置物は鳥獣戯画が由来??(たぶん違うw) そんなことを考えながら、動く歩道に3回も乗り込んでしまった。歩道に立っているだけで、目の前を鳥獣戯画が通り過ぎていく。まさに、アニメーションを観ているよう。

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朝日新聞社の動画より

 高山寺所有の甲乙丙丁の4巻とは別に、かつて鳥獣戯画の一部だったと見られる切れ端、いわゆる、断簡も展示されていた。特に、益田鈍翁旧蔵のものには息をのんだ。ウサギがキツネに、サルがシカに跨って、ものすごい勢いで疾走する一場面。実際の競馬でも、ここまで空を飛びながら疾走しない。かなり盛っている。わーっと言う声が聞こえてきそうだった。

明恵上人

 鳥獣戯画の伝来した高山寺(京都)から明恵上人坐像もお出まし。鳥獣戯画の伝わる高山寺は、鎌倉時代の僧、明恵上人が実質的な開基であることから、明恵上人に関する資料も多数展示されている。私は法然上人に尊敬しているので、法然上人を厳しく批判した明恵上人には苦手意識があった。右耳を剃り落としたり、夢日記をつけたり、とにかくこわい人という印象だった。実は、高山寺はお参りしたこともない。
 しかし、明恵上人の石二つが展示されているのを見て、急激にシンパシーを感じてしまった。上人の故郷和歌山の沖に浮かぶ島で拾ったなんでもない普通の石なのだが、お釈迦様の故郷である天竺の水は島の海辺も洗うと考え、生涯大切にしたらしい。その証拠に二つの石は妙にピカピカと光っていた。「蘇婆(そば)石」「鷹島(たかしま)石」という名前までついてる。明恵上人はお釈迦様を慕いつつも、生涯インドへ渡れなかった。その気持ちは現代の私でも十分に想像しえるが、だからといって、なんでもない普通の石にこれほど愛着を注ぐ人はそういないだろう。。。そういう拘りと偏りに親近感を覚えてしまう私なのだった。よい拘りかたではないだろうか。。。
 そして、後から調べて知ったのだが、前述の明恵上人ゆかりの大日如来像を現在所蔵する浄教寺は浄土宗西山派のお寺だった。法然さんとの対峙について、悪い拘りをもっていたのは、私のほうだったと気づかされた。反省。いつか機会をみつけて、高山寺と浄教寺をお参りさせていただきたい。

美術展のコロナ対策に協力しよう!

 鳥獣戯画展は緊急事態宣言で一旦休止となったあと、6/1に再開され、会期が6/20まで延長された。そのおかげで大きな感動を得ることができた。何度も言ってるかもしれないが、展覧会で本物を観る喜びに勝るものはない。美術はオンラインではダメだと私は思う。一年以上ぶりのトーハクはとてつもなく尊かった(号泣)。
 2020年3月にWHOのパンデミック宣言が出されてから、1年余り。その間に美術館・博物館では、予約制や入場制限、訪問者の連絡先の確認など、できうる限りの対策を講じてくださっていると思う。この鳥獣戯画展では、動く歩道まで登場した。人数を絞って、おしゃべりしない限りは、展覧会はさほど危険ではないと思う。今後大切なのは、観覧中におしゃべりをしない、行き帰りに宴会しないなど、観覧者である私たち一人一人の態度とマナーではないだろうか。
 鳥獣戯画のような絵巻物は、観覧者同士がガラスケースに近寄って観ることになる。仏像のような彫刻の展覧会よりも危険度は高いとは思った。しかも、鳥獣戯画の内容がおもしろいので、ついつい楽しくおしゃべりしてしまっている人たちを見かけた。まあ、それが人間の性(さが)ではある...。でも、だからこそ、気を付けないと...。そう自戒を込めて、感想を締めることとする。

参考資料

1) 展覧会公式サイト 特別展 国宝鳥獣戯画のすべて NATIONAL TREASURE:FROLICKING ANIMALS
2) リビング和歌山 2021.4.22
−第18回−文化財 仏像のよこがお「浄教寺大日如来坐像と明恵上人」
和歌山県立博物館主任学芸員・大河内智之
3) 和歌山県立博物館特別展「仏像と神像のまなざしー守り伝える人々のいとなみー」図録(2019年4月)
4) 浄教寺(和歌山県有田川町)ホームページ 曼荼羅寺院 浄教寺
5) 朝日新聞動画 鳥獣戯画を「動く歩道」でじっくり鑑賞
www.youtube.com