ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【奈良】十輪院護摩堂の不動明王及び二童子像を拝む

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護摩堂内部(※堂外から筆者撮影)

十輪院の石仏龕(重要文化財

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 奈良市内ならまちエリアの十輪院といえば、本堂のご本尊の石仏龕(重文、平安中期から鎌倉前期)が有名だ。石仏の地蔵菩薩立像の両脇に釈迦如来弥勒菩薩が浮彫で表される。さらに、仁王、聖観音不動明王、十王、四天王、五輪塔、観音・勢至菩薩の種子などがめぐらされる。龕の上部、左右には北斗七星などの星座も。お参りするたびに、親切で詳しい説明をしていただける。元興寺の境内にあった石仏のお地蔵さんをまつるため、石のお厨子が造られ、さらにそれに合わせたお堂ができた。そのお堂、つまり今の十輪院の本堂は、石仏龕を拝むための礼堂として建立されたもので、国宝に指定されている。

十輪院護摩堂の不動三尊像(重要文化財

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 今回初めて拝観させていただいたのは、本堂手前の護摩堂にまつられる不動明王及び二童子だ。護摩堂は普段は閉まっているのだが、7月、8月および12月をのぞく28日の午後2時から法要が行われ、不動三尊を拝むことができる。やっと28日に奈良に行ける機会が得られたので、迷わずお参りした。
 事前にお電話して時間を確認し、2時前に到着したのだが、すでにお堂は開いて法要が始まっていた。入堂し、法要を拝見する。導師は十輪院住職の橋本昌大様。不動三尊像の前で、護摩木を積んでどんどん燃やしていく。十輪院真言宗醍醐派に属すそうで、とても力強い護摩法要だった。
 護摩堂ご本尊の不動明王立像は智証大師円珍の作と伝わり、一願不動尊として信仰を集めてきた。弁髪で、右眼は天を見つめ、左眼は地をにらむ。右手に利剣を、左手に羂索を握る。顔は忿怒形でありながら、穏やかな感じもするのは、平安後期の造像だからだろうか。向かって右の矜羯羅童子、左の制吒迦童子は上半身をひねり、不動明王を見上げる。不動明王像は寄木造りで、それより小さい二童子像は一木造り。
 法要のあと、お札を申し込んだ人にはお札が配られる。これは当たり前なのだが、十輪院様では、お札を申し込みそびれた私のような一介の参拝者にまで、仏様のお下がりのお菓子を分けてくださった。温かいお茶が用意され、住職を中心に少しだけ歓談の時間が設けられた。これがまた穏やかで和やかで、とても感動した。また28日にお参りできたら、今度はお札をお願いしよう。28日に行けなくても、きっとまた十輪院さんをお参りするだろう。奈良は東大寺法隆寺といった大寺院が有名だが、実は、こういう小さなお寺もとてつもなくよいのだ。
(拝観日2021.3.28)

【拝観案内】

十輪院
奈良市十輪院町27
0742-26-6635
公式サイト www.jurin-in.com
石仏龕 南都 十輪院 (真言宗醍醐派)|拝観|石仏龕
不動明王および二童子南都 十輪院 (真言宗醍醐派)|拝観|不動明王および二童子立像
護摩堂の不動三尊の拝観は、7月、8月および12月を除く、毎月28日。14時頃に始まる法要の際に、お堂が開いて不動三尊を拝観できる。ただ、イレギュラーなこともあるでしょうから、事前にお電話でご確認ください。
※写真2枚目と3枚目はお寺のパンフより