高尾山薬王院不動堂 不動明王および二童子像
東京の西の端、高尾山に登る人は多い。身近な観光地だ。しかし、山頂近くに、東京都文化財の木彫仏がまつられることは知られていない。高尾山薬王院の奥の院、不動堂のご本尊、不動三尊である。高尾山の日本遺産認定に奔走した八王子市も広報していない。不動堂の扉はいつも閉まっている。
拝観が可能なのか何度かお寺にお電話してみたが、すっきりした返答が得られないまま時が過ぎてしまった。お不動さんのご縁日である28日の午前中に開くと聞いて出かけたこともあるが、11時に到着するとお堂は既に閉まっていた。八王子市内に都文化財の仏像は多くない。市民の誇りとして、なんとか拝観したいと思ってきた。
今回、偶然による幸運が重なり、初めて不動三尊のお姿を拝むことができた。東京都の文化財ホームページには以下のように記述される。
構造及び形式 寄木造・彩色・玉眼 不動明王112.7cm 矜羯羅童子56.4cm 制吨迦童子 57.6cm
時代/年代 中世・室町時代以前(推定)
解説文 3像とも寄木造り、彩色、玉眼。像高は不動明王像が112.7cm、左脇侍の矜羯羅童子(こんがらどうじ)像56.4cm、制吒迦童子(せいたかどうじ)像57.6cm。作者は不詳。不動像と両脇侍像とは別手の作であり、制作年代は室町時代以前と思われます。三尊構成として、童子像の形に興趣が多分になっているあたり、鎌倉期を下降した年代様を示しながら、童子像に優る中尊像においての技巧によく三尊の価値を保持している点は称揚され、優秀な作です。(昭和37年指定説明書)
実際の不動明王立像は、この東京都のサイトの写真より、ずっと立派なお像だった。中尊不動明王立像は112.7cmとあるが、もっと大きく力強く感じた。前に飛び出すような迫力。体躯はがっしりするが、衣文は薄くひらひらと優美に動く。写真より何倍もかっこよい。
昭和37年に都宝に指定された時の説明では室町以前の作となっているが、遠目から拝した印象では、鎌倉時代を念頭に検討してもよいのではと思った(地元民の期待も込めて)。文化財指定から60年も経っているのだから、再調査し、新たな知見のもとに制作年代を考えていただければと願う。
拝観日2021.2.28
【拝観案内】
高尾山薬王院不動堂
不動明王のご縁日、28日の午前中(本堂護摩9:30か11:00のいずれかの後)に法要がある。法要前の朝早く、準備をする間だけ扉が開くということだった。法要が始まると扉は閉まってしまう。基本的に秘仏扱いとなっているようで、ご開帳とか公開という感じではない。何度かお電話しても、なかなか具体的な拝観情報が得られにくかったのは、そういう事情によるのだろう。またいつか28日の朝に高尾山に登ってみたい。
【参考資料】
〇薬王院不動堂の木造不動明王及び二童子立像(東京都指定有形文化財)
https://bunkazai.metro.tokyo.lg.jp/jp/search_detail.html?page=1&id=266
本稿の仏像写真2枚はこのサイトから
〇薬王院の木造地蔵菩薩立像(東京都指定有形文化財)
https://bunkazai.metro.tokyo.lg.jp/jp/search_detail.html?page=1&id=267
この地蔵菩薩様もいつか拝観したい。
〇日本遺産「霊気満山 高尾山」ストーリーの構成文化財
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kankobunka/003/takaosann/p026874.html
「構成文化財(11)御前立御本尊 飯縄大権現像」(文化財未指定)は本堂の奥にまつられており、護摩法要に参列すると最後に近くで拝むことができる。ただ、今はコロナ感染予防のため、護摩参列者の人数を減らしているようだったので(護摩を申し込んだ人のみ)、今回は参列をご遠慮した。