ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【展覧会】横浜の仏像@横浜市歴史博物館〜地域限定の仏像展は素敵です!〜

横浜の仏像
横浜市歴史博物館
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 横浜はサイクリング拝観の圏外なのだが、会場である横浜市歴史博物館のすぐ近くで所用があり、出かけてきた。こんなに気持ちのいい博物館が都筑区にあるとは知らなかった。
 「横浜の仏像」展の会場では、ほどよい照明のもと、とてもよい距離を保って、魅力あふれる仏像が並んでおられた。一瞬にしてめまいがした。仏像に当てられてしまったのだ。展覧会場やお寺で仏像の迫力を強く感じてしまい、一時的に呼吸困難になったりする症状をなんと言ってよいかわからないので、私はそれを「仏像に当てられる」と呼んでいる。こういう症状は2017年の「島根の仏像」展以来だ。息絶え絶えに、まずは会場内を一周。そして、いったん会場外に出て一息ついた。やっと正気を取り戻し、また会場へ。結局3時間、ただただ興奮しながら仏像を観て過ごした。地域限定の仏像展は素敵だ!

 100年に一度のパンデミックで、目に見えないストレスを受けている。それが私の仏像の受け止めかたに何らかの形で影響を及ぼしているのかも。そんなことも思いつつ、みほとけを拝した。

 私が特に惹かれたのは、「12. 菩薩立像(伝千手観音像)真福寺青葉区)」である。
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 とにかく不思議なお姿だ。腕は8本で、後方の2臂は後補だという。腕2本を足したほうがかっこよいと思った人がいたのだろう。穏やかで素朴なように見えて、身体の奥底から不気味な力を発しているようだ。お顔は真ん丸で、安心感がある。一方で、口元は強い意志を秘めたように閉じており、両耳も固く張り出している。なにより特徴的なのは、瞳を閉じたかのような両目だと思う。薄めを開けているのか、それとも完全に目をつむっているのか。大法寺(長野)と千原観音堂大阪府泉大津市)の観音立像が目をつぶっておられたのを思い出した。いずれも静かな興奮を覚える観音像である。なぜ目をつぶる観音像が造られたのだろう。瞳を閉じた観音様は、視覚以外の五感を使って、何を感じようとしているのか。目をつむって何を観ようとしているのだろうか。そんなことを考えながら、しばらくこのお像を見上げていた。

 次に心を奪われたのは、「17.十一面観音立像 西方寺(港北区)」。とにかくかわいい。2011年の震災時に破損したのだが、その後修理の完了時に、西方寺観音堂でご開帳されたのを覚えている。その時は外陣からの拝観で、少し距離があった。近くで拝むと、想像していた以上に優しく、とにかくチャーミングであられた。近くで拝観できると、お像のよさがもっとよくわかるのだと実感する。若干腕が短めのように感じられるのだが、それがかわいらしさをさらに引き立てているのだろうか。また、気になっていた頭頂の化仏が後補らしいことも、今回目視で確認できた。化仏は目や鼻を彫り出さない、のっぺらぼうのお顔である。造立当初の化仏ものっぺらぼうだったのだろうか。気になる。子年開帳の秘仏だ。次はいつお会いできるだろうか。

 「33. 阿弥陀如来立像と装着面 永勝寺(戸塚区)」には驚いた。かわいい系の阿弥陀如来立像かと思いきや、その隣にお面が展示されており、来迎会練供養ファンの血が騒いだ。解説によると、戦国時代にお堂の前を通った人が落馬したり、失礼な態度を取った人が倒れたりしたことから、お面を被せたところ、そのような祟りがおさまったという。通称、面掛阿弥陀如来。なんと素敵なネーミングだろう。お面は僧形像の面部としてつくられた可能性があるとのこと。

 「22. 阿弥陀如来坐像および両脇侍像 真照寺(磯子区)」。1年前にお寺をお参りした際、「阿弥陀三尊はまだ一般拝観できる環境ができていない。展覧会に出すので、その時にぜひ」と言われた阿弥陀三尊についにお会いできた。近年の修理で金ピカのお姿ではある。その金色の下に、平安後期の特徴を見出せる専門家に敬意と感謝を捧げたい。2/7までの期間限定展示!

 「25. 薬師如来坐像 東光禅寺(金沢区)」。お会いしたかった薬師如来様についにお会いできた。私はコロナが始まってから、Zoom坐禅会に毎週参加しているのだが、その坐禅会に東光寺の住職が一度ご参加くださった。流暢な英語を話される方で、お寺のホームページも超絶にかっこよい。サイトに掲載された薬師如来様の写真もかっこよくて、いつか拝観できればと思っていた。像高28cmと小さいが、小さいものにこそ仏師の匠の技は引き立つもので、その最たる例だと思う。

 「30. 釈迦如来立像 真福寺青葉区)」。12番の菩薩立像と同じお寺からお出まし。本展覧会のメインビジュアルを務められる。162cmの堂々としたお姿。衣文の流れに見入ってしまう。お顔もなぜか惹きつけられる。この不思議な瞳はなんなのだろうと思っていたら、銅板が貼ってあるのだそうだ。何時間でも見上げていたくなるお姿である。(※その後、瞳は銅板ではなく、本体から彫り出したものと判明→https://twitter.com/hphiyodori/status/1359846128854790146?s=20 いずれにしても、不思議な瞳であることに変わりはない)
 個人的な話になるが、この釈迦如来立像を大きくデザインした本展覧会の広告を目にするたび、少し胸が苦しかった。このお寺のすぐ近くの病院に、父が入院していたからだ。救急車で運ばれたときのこと、手術を待つ間のことなど、つらい記憶が蘇ってしまうのだ。その当時は、そばにお寺があることも、こんなに立派な仏像がおられることも知らなかった。知っていたら、お見舞いの際にお散歩して、心が和らいだかもしれない。
 この釈迦如来様に実際にお会いでき、ここ数か月のもやもやは解消できた。そっと合掌した。

 そのほか、書きたいことは山ほどあるが、とりあえずここまで。魅了された仏像は他にもたくさんある!