ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【石仏】徳本名号塔をめぐる〜八王子編2〜

徳本上人名号塔
場所 八王子市長房町・船田町会会館
調査日 2020.11.21

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1) 調査番号5) の長房町・船田町会会館の徳本名号塔、ついに発見!

 11/15の調査で見つからなかった船田町会会館を再訪。私のFacebookをご覧くださったお近くの龍泉寺副住職様から情報を得て、低木の中に隠れていた徳本上人名号塔を見つけることができた。発見というか、発掘というか、そういう仰々しい言葉を使いたくなるほどの感動である。

2) 植栽カットでinvisibleからvisibleへ!

 新たな進展もあった。たまたま通りかかった地元の方が、低木を少しだけカットしてくださったのである。以下の写真1枚目が植栽カット前で、2枚目がカット後。小さな祠の正面向かって右側に低木の植栽がある。写真1枚目では植栽しか見えないが、2枚目では小さな石碑が見えるのがお分かりいただけるだろうか。それが徳本名号塔である。
 高さ60cmほどの小さな名号塔で、文字もかなり薄れている。しかし、徳本上人の独特な筆跡で南無阿弥陀仏と書かれており、左下の徳本という文字も見える。
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 植栽を切っていただいた経緯はこうだ。
 私が再訪した11月21日、船田会館では、研ぎ師の方々が出張に来られて、ひたすら刃物を研いでおられた。私はそのすぐそばで、低木の茂みを必死でかき分けていた。すると、一人の男性が通りかかった。偶然にも、手には大きな植木鋏を持っている。後から冷静になって思い返すと、研ぎ師さんに預けていた刃物類を取りに来られたのだろう。
 「町会会館前の茂みに座り込むアヤシイ女性」と「大きな植木鉢を持った地元の男性」。この構図に潜む危険性をとっさに嗅ぎ取った私は、自分の「アヤシイ」部分を払拭しようと、思わず男性に話しかけた。まず飛び出した言葉が「徳本上人名号塔をご存知ですか?」だった!!
 「はっ?」と首を捻る男性に私は話し続けた。「200年前の石碑を調べているんです。徳本上人という方が200年前に八王子に来られて、その方の独特な文字を刻んだ御念仏の石碑なんです。植木に隠れて、見えなくなっているんです」。
 変なテンションで話す私に対して、その男性はいたって冷静だった。「あー、そういうことでしたか。そういう歴史的価値があるものだとは認識してませんでした」と静かにおっしゃった。そして、研がれたばかりの植木鉢で、ざくざくと名号塔の周りの低木を刈り込んでくださったのだった。
 丸腰のおばさん(=私)のほうが興奮気味で、危険な武器(=植木鋏)を持った男性のほうが冷静だった! なんともありがたい。そして、なんと未熟な自分だろう。
 船田会館は年に2回、地元の方々が整備をされているそうで、写真を見返しても、きれいに植木の管理がなされていることがわかる。
 船田町会会館は、近くの慈眼寺の隠居庵の跡地に建つと聞いた。徳本上人名号塔がこの地に残るのことの意義は大きいと思う。

参考資料

この徳本名号塔については、八王子石仏の会『旧横山村石仏調査報告書』1998年に記載がある。
前回の拙調査の報告は下記のポストのとおり。
butsuzodiary.hateblo.jp