旧海岸寺
拝観日=2018年6月17日
○千手観音(県宝 159cm 桂 一木造り 平安中期)
※世話役さまから特別に写真撮影の許可をいただきました。(観音様から見おろされるこのアングルが最も気にいりました!)
海岸寺は、明治初年の廃仏毀釈の際に廃寺となったが、地元の方々により仏像群がお守りされている。
県宝の千手観音立像は平安時代の作と見られる。1683年、松本城主水野忠直が京仏師浄仁の子清春に依頼して修復。修復の際に塗装され、頭上面と脇手の一部を欠くものの像容は整い、平安の様式を残した美しいお姿が残されている。
何かの本で「大法寺の十一面観音さまとお顔が似ているのでは」と読んだ記憶があるのだが、実際にお会いしてみると、こちらの方がだいぶあか抜けているように感じた。面長で、二重顎だ。上の写真のように、左側を見下ろす感じがたまらない。私は仏像さんに見おろされるのが大好きなので、写真も左下から撮りたくなる。
また、脇手も非常に印象的だった。両サイドに大きく張り出し、うねうねとした動きも感じられる。どこからどこまでが後補かは不明だが、もし脇手の大部分が江戸時代の修復によるものだったとしたら、清春はかなりの力量の仏師だったということになるだろう。
千手の腕の一つに、ぶどうを掲げ持つものがあった。山梨の大善寺にぶどうを持つ薬師如来さまがおられるが、松本にもおられたとは。こういう細かい持物は後補のことが多い。この観音さまはいつからぶどうをお持ちなのだろう。
ご案内くださった世話役さまも、ぶどう栽培をされているそうだ。日焼けしたお顔で観音さまを誇らしげに見上げておられたのが忘れられない! ぶどう畑の中の観音さまが末永く伝えられますように。
(↑最後に全身写真を。スリムで均整がとれており、大変美しい。左足の横に安置されているのが奪衣婆さま)