ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

安来市・清水寺の十一面観音立像(「島根の仏像」展より)

安来市清水寺の十一面観音立像
9~10世紀。像高168.6センチ。重要文化財

古代出雲歴史博物館「島根の仏像」展の会場を入るとすぐに、この不思議な観音像が立っておられました。なんとも不思議な力がみなぎっています! 初っ端から腰を抜かしました。
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まずは、ご尊顔があまりに不思議で、正面から目を合わせることができません。なんなのでしょうか、この幅広の鼻は。そのすぐ下に、厚い唇があります。この唇からどのような声で、どのような言葉を発せられるか。それが気になってしかたありません。目は厳しいわけではないのですが、あやしい力がみなぎっています。
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腰を抜かした私。おそるおそる下からお姿をのぞきこみます。

衣文は深く、細かく、複雑に刻まれ、腰から下には渦巻き文が”くるりん、くるりん”と散らばっています。平安前期に特徴的な力強い表現です。渦巻きの中に不思議な呪文が潜んでいるに違いありません…! 
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展覧会の図録には、平安初期の「檀像風彫刻(一材の白檀から彫成され、小像で彫りが細かいのが特徴の「檀像」に類する木彫像のこと)との近似が指摘されている」とありました。つまりは、檀像を等身大でやってしまったということで、その心意気に激しく興奮いたします。



元々は秘仏

この観音像は今はお寺の宝物館に安置されていますが、もともとは同寺根本堂の秘仏本尊だったそうです。享保2年(1717年)の地誌『雲陽誌』には、次のような縁起が書かれています。

(以下、展覧会図録より引用)

昔この地は山深く、人跡稀だったが、山名で夜な夜な光が発していた。里の人々は恐れて近寄らなかった。ある時、山城国衆楽寺の僧・尊隆が安来に行脚した際、その光の元へ行ってみた。すると一人の老翁が現れ、洞の中を指して、「ここに観音菩薩像がある。毘首羯磨の作、赤栴檀の仏像である。あなたに与えよう。菩薩の利益があるであろう。」と言った。老翁が去ると、すでに観音菩薩像は石の上にあり、傍らからは清水が湧き出ていた。このようなわけで、尊隆はここに草庵を結んだ。


不思議な縁起も納得のお姿です。いえいえ、きっともっと不思議な霊験話があるのではないでしょうか? 

美しく、強い。軽い気持ちで拝んではいけない…。そんな迫力があります!


清水寺の宝物館には阿弥陀三尊もおられるそうです。お寺のサイトに写真がありました。大好きな来迎像でした。いつかお寺をお参りしなければなりません!

※写真はすべて「島根の仏像」展の図録より。


【案内】
清水寺のサイト
www.kiyomizudera.jp
住所:〒692-0033 島根県安来市清水町528番地
いつかお寺をお参りできますように…♪