ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【群馬】富岡市・龍光寺の小さな観音立像~戦時供出された銅像の胎内仏~

 群馬県富岡市・龍光寺さま。2018年夏、事前に電話でお願いし、お参りさせていただきました。とても暑い日でした。

 門前の大きな観音さまの銅像が戦時中に供出された際、胎内から小さな観音像が見つかったそうです。富岡市文化財に指定されているこの観音像を拝観させていただきました。高麗時代の作。胎内に収めるということは、何らかの由来や祈りが込められていたはず。小さなお姿に大きな想いを感じました。


 戦時供出された銅製の観音像は、同じく銅像地蔵菩薩坐像とともに、山門の前に安置されていたそうです。供出前の写真が額に入れて、大切に保管されていました。この貴重な写真を撮影させていただきました。享保年間の作で、かなりの美仏だったことがわかります。

(↑戦時供出された観音像。この観音像の胎内仏だった)

(↑地蔵菩薩銅像。観音像と一対だった)

(↑地蔵菩薩銅像の写真額の裏面)

 ご本尊さまは黒本尊と呼ばれる秘仏聖徳太子御作にして、宇多天皇の念持仏だったと伝わるそうです。黒本尊というと、東京・増上寺の家康ゆかりの阿弥陀如来像が思い出されますが、そちらとは関わりがないそうです。こちらの秘仏はその姿を目にすると失明するとの言い伝えがあり、残念ながらお見せできないと言われました。このような畏怖の念、尊重したいと思います。本堂内陣の奥、閉じた厨子越しにお参りさせていただきました。

 上の写真のように、本堂内陣におまつりされるのが、お前立の阿弥陀三尊です。浄土宗のお寺らしい阿弥陀空間。阿弥陀三尊と法然善導さまがおられる空間が好きです。南無阿弥陀仏。真夏の堂内に副住職のお十念が響きました。

 本堂裏の墓地に、富岡製糸場女工さんのお墓が残されており、副住職さまにていねいに説明していただきました。世界遺産富岡製糸場の見学の際には、ぜひ合わせてお参りを。お寺の前に掲げられていた「尊いのは遺産ではなくて、そのために流された先人の汗である」という言葉の意味をかみしめています。