ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【信濃仏】光久寺(安曇野市)若き妙海の日光月光菩薩像はかわいらしい双子のようだった!

光久寺(安曇野市
拝観日=2018年6月16日
○日光・月光菩薩立像(県宝、桧材、寄木造、妙海1317年)
※写真撮影については管理者より許可を得ています
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光久寺とは


 寺伝によると、光久寺は大同2 年(802年)に高野山遍照光院の末寺として創建され、行基菩薩作の薬師如来を祀ったとされる。専門家は空海の入唐が804年なので、ありえない話だと述べているが、少なくともそのように伝わっているそうだ。高野山遍照光院については、覚音寺でも縁がある旨を聞いたので、まんざら無関係とは言い切れないのではないかと思った。
 光久寺は今では無住になっており、地区の方々が管理されている。安曇野市のサイトによると、毎月第三土曜日が公開日となっているが、それでも事前に安曇野市役所への連絡が必要である。
 安曇野市を通じて予約をお願いしていたところ、当日は地元の方が待っていてくださった。市の方から伺ったところでは、地区の集会の際に私たちの受け入れについて話し合ってくださったそうだ。大変ありがたく、頭の下がる思いだ。

妙海の日光月光菩薩


 日光月光菩薩像は、光久寺薬師堂のすぐそばの建物に安置されている。現在の建物はお寺というより、地域の古民家を集会所に改修したような場所だった。畳敷きの部屋の奥に、両菩薩像はおられた。
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(↑光久寺薬師堂。かつてはこのお堂にお祀りされていた。今は↓の建物に他の諸像とともに安置されている)
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 善光寺仏師妙海の仏像は長野県内5か所に9体残っており、制作時期もすべて明らかになっている。安曇野の光久寺の日光月光菩薩は1317年で、最も古い。記録上分かっている限りで、妙海が最も若い時に作った仏像である。
 妙海仏の特徴は両方の眉毛がつながっているところだ。宋風のひらひらした衣も両菩薩に共通するが、月光菩薩の方が細かくうねっており、意図的に日光菩薩と差別化を図ったのかが気になるところである。日光菩薩はお顔の左側の傷が痛々しい。いずれにしても、両像ともかわいらしい。みほとけの像なのに、こんなにかわいらしくてだいじょうぶなのかと思えてくる。
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(↑月光菩薩さまがこんなにかわいくてよいのか! 最もかわいらしく見えるアングルで撮らせていただきました(泣))
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(↑この口元かわいすぎる!)
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(↑髻が高くて上品)
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(↑おへそもかわいらしい!)
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(↑なぜか背中の衣が厚め。翌日にお参りした辰野町の妙海の十一面観音立像も背中の衣が厚かった)
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(↑月光菩薩の方が下半身の衣がうねうねしている。日光菩薩が普通の宋風なのと対照的だ。日光菩薩と比べ、月光菩薩は妙海さんがより自由に、いろいろ試しながら彫ったような気がする。きっと独自に工夫するのが好きだったのだろう←妙海ファンの勝手な妄想!)
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(↑日光菩薩さまはお顔に傷がある。長い年月の間に転倒したのだろうか。かわいそうでならない。それでも、日光月光菩薩どちらもかわいらしいことに変わりない。かわいらしい双子の菩薩像である!)

実は再会でした


 自分の過去の記録を遡ったところ、2009年に信濃美術館でお会いしていたようだ。善光寺ご開帳に合わせた特別展で、松本市波田の仁王像(ただし一躯のみ)とともに出展されていた。妙海という仏師を知ったのはその時である。妙海仏を訪ねたいと思いながら、再会するまでに9年もかかってしまった。

 最後に、繰り返しになるが、安曇野市役所を通じた拝観依頼を受けて、地区の皆様は集会の際に私たちの受け入れについて相談してくださった。大変ありがたく、改めて感謝の気持ちを申し上げたい。この地に伝えられた菩薩像。この地で末永くお守りされることを願っている。

参考資料


 光久寺で閲覧できた資料を貼っておく。
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