ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

【信濃仏】福王寺(佐久市)の力強い阿弥陀さまと雨ごい邪鬼の毘沙門天さま

 
福王寺(佐久市)(真言宗智山派
拝観日=2018年6月16日
収蔵庫
阿弥陀如来坐像(138.3cm、カツラの一木 1203年 国重文)
〇観音勢至菩薩(脇侍、大和座り)江戸初期
弥陀堂
月光菩薩聖観音とも伝承)平安 市文化財
日光菩薩 鎌倉 市文化財
聖徳太子立像(雨宝童子)鎌倉 市指定
本堂
〇絹本著色愛染明王像(県宝、鎌倉後期~南北朝、92.5 x 51.5 cm)
※写真撮影はお寺より特別に許可いただきました

福王寺とは

 長野県の文化財指定されている仏像をリストアップしたとき、一番先に惹かれたのが福王寺の重要文化財阿弥陀如来坐像だった。彫刻+重要文化財で検索をかけると、あいうえお順で出てくるようで、阿弥陀様が真っ先に出てきたということもあるが、なにより阿弥陀様らしからぬ力強さに目が留まった。
 初めて拝観のお願いの電話をしたとき、住職の対応があまりに素っ気なくて、とても不安だった福王寺さま。思い返せば、公式サイトからの問い合わせメールにはまったく応答がなく、1か月ほどあとに電話して、ようやく拝観予約をいただけたのだった。
 参加人数の確定後、ご朱印の対応などで、何度かお電話させていただくうちに、徐々に自然に会話ができるようになった…ような気がする。
 しかし、そんな不安もなんのその。実際に訪れると、とても気さくで優しい住職だった。お茶とお菓子で歓待いただき、寺歴等を詳しく伺うことができた。お話がとてもわかりやすかった。

 福王寺は大同2年(807年)の開山と伝えられる。新幹線佐久平駅から車で30分ほどの至便な場所でありながら、南に蓼科山、東に浅間山があり、周辺は豊かな自然に囲まれている。訪れた日は、本堂横でキビタキがさえずっていた。かつては塔堂六坊を構えたが、寛永年間の山火事より資料や重宝の多くを焼失。宝永6年までに方丈、庫裡、仁王門、本堂、阿弥陀堂、不動堂などが再建された。福王寺に残された寺宝の数々を拝観させていただいた。

重文の力強い阿弥陀如来坐像

 収蔵庫には、お会いしたかった鎌倉初期の阿弥陀如来坐像(重文)がおられる。鎌倉初期とは言っても、がちがちの慶派からは程遠い。がっしりした田舎の男っぽさがある。一方、脇侍は江戸時代の美しい大和座りの観音勢至菩薩。これがまた、非常によい組み合わせ。いつまでも拝んでいたい三尊だった。

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弥陀堂の市指定文化財の諸仏

 弥陀堂の日光菩薩、月光(聖観音)菩薩、毘沙門天は等身大に近く、かなり傷みがあったものの、存在感があった。やや小ぶりの雨宝童子(聖徳太子)像を含め、すべて佐久市の指定文化財毘沙門天の邪鬼は雨ごいの儀式に使われたこともあったそうだ。雨ごいについて伺うと、住職は、「邪鬼を近くの池に放り投げて、棒でつついたんだよ」と朗らかにお答えくださった。お像の傷みは庶民の信仰の証でもある。

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(↑これが池でつつかれた邪鬼さん。ぼろぼろ…)

 

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(↑平安の月光菩薩聖観音の可能性あり。光背の化仏は飛天なのか菩薩か。雲に乗っておられるのか。素敵である)

 

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(↑日光菩薩像。衣がひらひら)

 

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 (↑聖徳太子像。雨宝童子だった可能性あり。雨で少ない地域なのだろうか)

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(↑髪型が素敵)

県宝の仏画愛染明王像(目の前でご開帳!)

 また、特別に、県宝の仏画愛染明王像を拝観させていただいた。寺歴の説明のあと、「仏画見たいって言ってたよね。取ってくるわ」と住職。どこからかビニール製のスポーツバッグを手に戻ってこられ、その中から、掛け軸を取り出された。本堂の中に、高さ2メートル弱ほどの大きな厨子(頑丈な鍵付き)があり、その中に掛けてくださった。典型的な図様の愛染明王画像で、真っ赤に怒って迫力があった。鎌倉時代に遡る密教絵画は長野では珍しいそうだ。
 

 住職のご案内のおかげで、楽しく学びながらお参りできた。慌ただしい拝観になってしまったので、またのんびりお参りしたい。仏像群はもとより、住職にまたお会いしたい。