ぶつぞうな日々 part III

大好きな仏像への思いを綴ります。知れば知るほど分からないことが増え、ますます仏像に魅了されていきます。

伊豆の平安仏と"牧野仏"(龍音寺、国清寺、かんなみほとけの里)

2018年3月31日。午後から半日かけて、伊豆の平安仏と"牧野仏"をめぐってきました。

沼津市大平の龍音寺

 平安中期とされる一木の聖観音立像。専任の住職がいなかった龍音寺に40年前、現在の住職が入られた。お寺におられたのは、虫食いなどの破損部分を石膏で補い、ペンキを塗られた観音立像。住職は平安仏に違いないと見抜き、紆余曲折を経て修復を実現。修復前の写真を見せていただいた直後に、修復後の現在のお姿を拝ませていただいたが、その差に呆然とした。今は大変美しく優しいお姿である。市指定文化財
 修復先はなかなか決まらず、最終的には辻本干也先生の工房預かりで格安で修復していただいたとのこと。修復内容に関する詳しい資料は残っていない。衣の表現等に様々な時代の様式が混ざっているため、時代鑑定は難しい。しかし、複数の専門家の意見は、平安中期ということでほぼ一致するとのこと。
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(写真は龍音寺ホームページより)
 堂内にこの観音さまを描いた切画がある。龍音寺の観音さまが大好きだった女性が病気のご主人の平癒を願って四国をめぐる途中、切画家の風祭竜二さんと知り合う。ご主人は回復したが、今度は女性が重い病気になったため、ご自身の生命保険を使って、観音さまの切画を依頼。このため、切画の観音さまのお顔はこの女性に少し似ているのそうだ。
 以上、副住職にていねいにご解説いただいた。観音さまと多くの人がご縁を結ばれることを願う。

伊豆の国 国清寺仏殿

 牧野隆夫さんが修復された"牧野仏" 。古い他の仏像の断片を用いて修復されていたいびつな像をいかに発見し、修復したのかは、牧野さんの新刊『伊豆の仏像修復記』に詳しい。クラウドファンディング自費出版されたこの本がちょうど昨日自宅に届いた。読後まもないこともあり感動もひとしお。
 修復前
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 修復中
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(造立当初の部材はこれだけ)
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(不足部材を補う)
(修復前と修復中の写真は牧野隆夫『仏像再興』より)
 修復後(現在のお姿)
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(筆者撮影)
なお、国清寺の仏殿の拝観については、隣の高岩院に事前に連絡を。本などに載っている国清寺の電話番号は通じません。

伊豆の国市 国清寺毘沙門堂の仁王像
 牧野さんが仏像修復の道に入るきっかけとなった仁王像。国清寺の仏殿から1.5キロ登山のうえやっと参拝。運慶の関わりが指摘され、県指定文化財
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(筆者撮影)

函南町 かんなみほとけの里美術館

 桑原薬師堂に安置されていた仏像群を展示する施設。

阿弥陀如来坐像と観音勢至菩薩立像(実慶)

 牧野さんらが桑原薬師堂を調査された際、両脇侍から実慶の銘が発見された。脇侍の観音像は、左腕の肘から先が失われていたが、それが近年見つかり、奈良の文化財保存修理所で手術を受けて戻られた。今年の3月に戻られたばかりのタイミングで拝観できた。
 左腕をめぐる経緯は以下のとおり。
 桑原薬師堂の仏像群を美術館に移したあと、薬師堂内を掃除したところ、昭和11年の新聞にくるまれた仏像の腕(「腕A」)が出てきた。調べてみると、それは薬師堂におられた江戸時代の勢至菩薩立像に本来付いていたであろう左腕だった。胸の前で合掌する来迎の勢至菩薩である。
 一方、「腕A」が発見された時点で、この江戸期の勢至菩薩には、別の腕(「腕B」)が付いていた。この「腕B」をよく見ると、実慶の阿弥陀三尊の観音立像の左腕だと判明した。小指、人差し指が失われていたが、実慶の勢至菩薩と左右対称の形だったのである。
 つまり、
1) 江戸期の勢至菩薩に付いていた左腕(「腕B 」)は、実は本来は、実慶の観音菩薩の左腕だった
b) 昭和11年の新聞にくるまれていた左腕(腕A)は、本来、江戸期の勢至菩薩の腕だった
ということになる。
 今回、実慶の観音の修復が完了し、やっと本来の形に戻った。つまり、「腕A 」は江戸期の勢至菩薩に、「腕B」は実慶の観音菩薩に、それぞれ付け直されたのである。
 なお、観音さまにこの左腕を付ける際に、人差し指と小指を新調したそう。
 仏像拝観をしていると、こういう面白い話に出会え、感動し興奮する。だから、仏像めぐりを止められないのだろう。

薬師如来坐像(平安)

 桑原薬師堂で秘仏だった薬師如来坐像は大きな木材を使った一木造りで、この上ない安定感があった。県指定文化財
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(写真は美術館のホームページより)

・その他の仏像(牧野仏)

 十二神将地蔵菩薩毘沙門天および観音菩薩の15像は牧野さんが修復。
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(↑写真は牧野隆夫『仏像再興』より)